Text/Eiko Oizumi
ISPS(国際スポーツ振興協会)の半田晴久会長は、7月末に行われる「ISPS HANDAコロナに喝!! シニアトーナメント」を皮切りに4大会、“観客を入れて開催する”と発表した。
現在、米PGAツアーやヨーロピアンツアーは無観客で大会を実施。他のツアーは、国内男子ツアーを含め、いまだに再開の目処が立っていないツアーもあるが、ISPSは世界で最も早く「観客を入れての開催を実施」する。
観客にはマスクとフェイスシールド、ビニール手袋を1万セット用意して配布し、クラブハウス内には除菌スプレーや接触感染対策テープの用意、次亜塩素酸水の噴霧など、今の段階で考えられる「コロナ対策」を万全に行うという。
とはいえ、急すぎる判断ではないか?と考える人もいるだろう。しかし、半田会長には以下のような考えと決意がある。
まず、現在は「Withコロナ」の時代であり、コロナとともに生きていかなければならない世の中となった。
だから、新型コロナウイルスに感染するリスクを理解した上で、万全の対応をする必要があるということだ。
これは「飛行機に乗ったり、車の運転をするのと同じ」と半田氏は語っている。飛行機事故に遭遇するリスク、車に乗っていて交通事故に遭うリスクは当然あるが、かといってこれらを生活から排除することはない。それぞれのリスクと向き合いながら、事故が起こらないようにするためにはどうしたらいいか、最善の対応を考えながら行動するしかない、という考え方だ。
これは他の病原菌に関しても同じで、新型コロナウイルスだけに限った話ではないが、目に見えない敵をやっつけるにはどうすればいいのか? ウイルスに感染しないようにするにはどうすればいいのか?ということを科学的に考え、対応策を取っていくしかない。コロナを怖がるばかりでは、前進はないからだ。
また半田氏は、もし万全の対策を打っても感染者が出てしまった場合、「ISPSが責任を取る」とはっきり公言している。一人でも感染者が出てしまった場合、
●感染者がゼロになるまで、試合をやり続ける(試合数を増やす)
●感染者が仕事ができず、自宅で療養しなければならなくなった日数分の見舞金を支払う
という覚悟を決めて実施を決定しているのだ。
シニアの試合名にもなっている「コロナに喝!!」は、「コロナに勝つ!!」という意味合いも持っているが、コロナ感染者がゼロになるまで、何度も挑戦し、感染者ゼロの大会を実施するということが「コロナに勝つこと」だと半田氏は語っている。
また、②の見舞金に関しては、観客が感染した場合のことを説明しているが、観客の通常の月収を日割りで計算し、療養にかかった日数分の見舞金を出す、と明言。
観客を入れて試合を開催する、という覚悟を決めたら、「感染者が出てしまい申し訳ない」という謝罪の言葉だけを述べてお茶を濁すのではなく、きちんと一人一人に対して最後まで面倒を見ると決断している点にISPSの本気度が見て取れる。
もちろんこれらは事が起こってしまった場合の対処法であり、それよりもコロナ感染者をゼロにするための対処の方が重要であることはいうまでもない。しかし、試合を成功させ、「コロナに勝つ」ためには大会側、選手、キャディ、関係者、そして観客ひとりひとりのコロナに対する警戒心と協力体制にかかっている。