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【ゴルフ上達のメンタル法】Vol.1~ ゴルフにおけるメンタルゲームとは?~

ゴルフ上達のメンタル法
VOL.1 ゴルフにおける「メンタルゲーム」とは?

ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!

ゴルフプレー中の約9割は、ショットにかかる時間ではなく、歩きながら思考している時間だと言われている。
プレー前やプレー中の心の持ちよう、考え方によっては大きくスコアを改善できると世界的なゴルフメンタルの権威ジョー・ペアレントは言う。

Joe Parent
(ジョー・ペアレント)
過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com

自分の「心」を味方につければミスは激減する!

Illustration/Masaya Yasuhagira

世界のメジャーチャンピオンを指導してきたペアレント

私は40年以上にわたって、ゴルフにおけるメンタルゲームについて教えてきた。
その中には、ツアープロから初心者、8歳から80歳まで、あらゆるレベルのゴルファーがいる。
また、ビジェイ・シン、クリスティ・カー、デビッド・トムズ、ジュリ・インクスターなど、数多くのメジャーチャンピオンや世界ゴルフ殿堂入りを果たしたゴルファーをコーチした経験もある。
ビジェイとクリスティはそれぞれ世界ランク1位にのぼりつめることができたが、その手助けをできたのは私にとって特に誇らしい出来事だ。

私は生徒たちに教える一方、彼らからもさまざまなことを教わっている。
普段、彼らのゴルフの上達を手助けするためにプレー中の洞察力や考え方について教えているが、その結果、生徒たちが進歩を遂げ、満足感を得る姿を見るのは嬉しいものだ。

今後、この連載コラムを通じて、これまで私が学んだ「メンタル面におけるゴルフ上達の秘訣」を『ゴルフ・グローバル』の読者の皆さんにお伝えしていきたいと思う。

「メンタルゲーム」とは何か?

「メンタルゲーム」とは、自分の心をいかにしてゴルフに活かしていくかということである。
これは、ラウンド前の練習やウォームアップ、一つひとつのショットやプレーの仕方に関わってくるものだ。
「メンタルゲーム」は、ティーショットに始まり、アイアンショットやグリーン周りのアプローチ、パッティングへと至る組み立てに、自分の思考プロセスをどのように使うかということも含まれる。
また、ショット前やショットの合間に抱く〝ナイスショットしたい〟などの希望や興奮、あるいは悪い結果に対する恐れや不安といった感情をコントロールするという面もある。
そして、前向きでポジティブ、あるいは後ろ向きでネガティブなセルフトーク(自分自身に対して疑問を投げかけること)にも反映される、自分の態度への働きかけにも関係してくるのだ。

どんなに今どきのクラブやスイングの知識を持っていても、コースに出たときの心の働きを知らなければ、心理面での障害にぶつかって、自分の可能性を発揮することはできない。
プレーすることへの不安、感情的な反応、判断力の低下によって、ベストプレーは妨げられてしまう。
このような障害を克服することが、スコアアップのカギとなるのである。

「メンタルゲーム」に勝つためには、自分の心を「敵」ではなく「味方」につけることが重要だ。
自分の心を「味方」にするためには、ポジティブなイメージと、自信に満ちた感情を抱きながら体を動かすことが必要で、自分にできる範囲で一つひとつのショットを組み立てていけば、心は「味方」になってくれる。うまくいかないときでも落ち込まずにポジティブな考え方をキープしていれば、心は「味方」になってくれるのだ。

逆に心が疑念や不安で満たされているとき、心は「敵」となり、自分が恐れているものを避けるように体を操ろうとする。
自分が思い描いているようなプレーができなくてイライラしているとき、心は「敵」になる。ボールがあらぬ方向に飛んだり、もっとうまく打つことができたのに……と後悔して腹を立てているとき、心は「敵」になることを覚えておこう。

ジャック・ニクラスの言葉にヒントがある。
「メンタルゲーム」の意味、そして自分の心を「敵」ではなく「味方」として扱うというアプローチを、ニクラスなりに言い表したものだ。

「自分に問いかけてみてほしい。ショット前に必ず戦略を立て、常に自分のできる範囲でプレーをし、決して腹を立てたり、自分を責めたりしなければ、どれだけショットのミスを減らせたことか……」

コース上での具体的な「メンタルゲーム」

ゴルフにおいて、心が占める割合はどのくらいだろうか?
生徒にこの質問をすると、50%とか99%とか、さまざまな答えが返ってくる。
だが、正解は100%だ。なぜなら、いつでもスイングを左右するのは自分の心だからである。
心が、脳を通じて筋肉にメッセージを伝えなければ、動くことはできない。

つまり、心がなければゴルフはできないのだ。
しかし当然のことながら、体がなければやはりゴルフはできない。
だから「メンタルゲーム」とは、自分自身の体やクラブ、ボール、ゴルフ場の環境といった〝形あるもの〟から切り離しては考えられず、独立したものでもない。
ビデオゲームのゴルフでさえ、手先を使う必要がある。
そのうち、考えるだけでプレーできるバーチャルリアリティのゴルフゲームが出てくるかもしれないが、今のところは物理的に実体が必要だ。

「メンタルゲーム」で重要なのは、その一瞬の行動の中で、どうやって心と体を連動させるかということだ。
最大限のパフォーマンスを発揮するためには、心と体を同調させなければならない。
つまり、心と体が、同じタイミングと場所で、同じ目的のために連動しなければならないという意味である。

タイムマシンでも持っていない限り、空間中の体のある場所は常に「ここ」であり、時間の中の体の場所は常に「今」にある。
ところが心はと言うと、まるでタイムマシンのように、過去の記憶と未来への期待との間を行ったり来たりしている。
実際、自分の思考を調べてみると、非常に高い割合でそのような行き来をしていることがわかる。

心と体が同調するのは、心が現在にあるときだけだ。
心と体は、感覚による認識を通してつながっている。
したがって、心が感覚を通して経験していることだけで満たされた状態であれば、現在において、心と体は常に同調していると言える。
例えば、視覚的な話でいえば、芝やティーの上でのボールの状態、これから打とうとするショットの方向や、高さ、球筋、フェアウェイやグリーン上のターゲットなど、明確なイメージを思い描いていれば、心と体が同調していると言える。

しかし、自分の心が過去にあり、最後に打ったショットや、今直面している状況と似たショットを最後に打った時のことを考えているのであれば、心と体を同調させることはできない。
また、心が未来にあって、自分がプレーしているホールやラウンドを終えた後のスコアのことだけを考えていたり、これから打とうとするショットをミスする不安にかられていては、やはり心と体を同調させることは不可能だ。

過去や未来のことを考えず、「今」を考え目の前の1打に集中しよう

Illustration/Masaya Yasuhagira

悪い結果を恐れずにスイングするには?

したがって、ポジティブな結果を出したいと思うなら、ポジティブな意図を心に持っていなければならない。
私がPGAツアーでビジェイ・シンと組むことになった時、最初に聞かれたのは、「ポジティブな意図とネガティブな意図」のことだった。
ビジェイは、ツアーのほとんどのコースで何度もプレーしたことがあるから、どこが難しいかは知っている。
だから、ボールが絶対に飛んでほしくない場所のことを考えたり、そういう場所を避けるスイングをしたりしないようにする方法を教えて欲しいと言ったのである。

そこで私は次のように答えた。
これは、どんなレベルのゴルファーにも当てはまることなのだが、起こって欲しくない結果になりそうだと恐れることがスイングに影響を及ぼす。そうすると、次の2つのことが起こり得る。

  1. トラブルを避けてボールを打つようにスイングをしてしまう。
  2. 悪い結果になるのを恐れて、自由にスイングできなくなる。

どちらの場合も、ミスショットにつながってしまうのだ。
したがって、どんなショットを打つか、考える場合、球をそこへ運びたいが、打ちづらいという場所を意識することも必要だが、それはあくまでも、ポジティブな目標を選択するためのものだ。
その上で、ショットの最中に結果の心配をしなくてもいいように、トラブルを十分に避けられるターゲットを選ばなければならない。
この方法を私は、「余裕を持ったプレー」と呼んでいる。これにより、悪い結果を恐れずにスイングができるようになるのである。

これは、心と体が連動していなければできない。
体は、心が思い描くイメージに反応して動き、心が何かをイメージすれば、体は必ず、それを実現するために最善を尽くす。
ボールを深いラフや林など、トラブルライに打ち込んでしまうというネガティブなイメージを心が思い描いたときには、体は混乱した状態に置かれることになる。
体には、「池を避けなければ!」という風に、起こってほしくないことしか伝わっていない。
このような混乱状態で、体はどんな結果を生み出すだろうか。
できるだけトラブルライから離れた場所にボールを打とうとするか、体に伝わった唯一のイメージどおりに、ボールを池に打ち込んでしまうか。
いずれにしても、フェアウェイ上とかグリーン上とか、本当に飛んで欲しい目標方向に向かってボールが飛んでいくことにはならないだろう。

そこで、ポジティブな目標、つまり余裕を持ってプレーできる目標を立てたら、今度は、ボールを打つときのスイング軌道や、飛んでいくボールの方向、高さ、軌跡(パッティングならグリーン上のライン)をできる限りはっきりと鮮明に思い描くことだ。
ボールがフェアウェイやグリーン上に落ちた後、どんな風にコロがるかまで思い描いてほしい。
自分のショットのイメージが、はっきりしていて鮮明で、完璧なものであればあるほど、体が生み出す結果はより良いものになるのである。

心をポジティブなイメージで満たすと、悪い結果をイメージする余地がなくなるという利点もある。
練習をするときには、打ち方について考えるより、自分が良いと思う感覚をつかむようにする。これは、心から体へと送られる別のタイプのメッセージだ。
クラブをどうやって振るかを心で指示するのではなく、どんな感じでスイングをしたいかをイメージした方が、体がうまく反応してくれる。

良いショットを思い描き、自信を持って打とう

これからショットを打とうとするときには、自分で選んだポジティブな目標を立て、打ちたいショットをできる限り完璧な形で思い描き、良い感じだと思うスイングをイメージする。
そして、準備万端だと自信を持ってスイングすることが大切だ。
心と体が最も良く同調し、恐れやネガティブなイメージに妨げられることがなくなるこの方法を理解して採り入れれば、最高のゴルフができるようになるだろう。
そしてさらなる自信を身に付け、プレーに際してとるべき姿勢を知ることができる。するともっと安定感が増し、イライラすることが減って、スコアアップできることに満足するはずだ。

ジョー・ペアレントのメントレで成功した選手たち

ジョー・ペアレントが過去教えたPGAツアープレーヤー、LPGAツアープレーヤーは何人もいるが、中でもジュリ・インクスター、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーは皆、メジャーで優勝を遂げている。技術だけでなく、メンタル面のサポートがいかに重要であるかがわかる。

©Eiko Oizumi

ビジェイ・シン(フィジー)
メジャー3勝、米ツアー34勝。タイガー・ウッズを押し除け世界ランク1位にも輝いた世界ゴルフ殿堂入りプレーヤー。現在はシニアツアーを主戦場に活躍。

©USGA

クリスティ・カー(アメリカ)
メジャー2勝、LPGAツアー20勝のベテランプレーヤー。現在43歳だが今も若手に交じって現役で活躍を続けている。かつてダイエットに取り組み、約26キロの減量に成功したこともある。

 

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Photo/Eiko Oizumi

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