ゴルフの経済を知ればビジネスのヒントも見つかる!
今回のテーマは「トーナメント中止や延期でアテが狂った開催地域の経済」です。
マスターズ延期とはいえ11月開催で帳尻が合うわけではない事情
日本国内の男女トーナメントが政府のイベント自粛要請に協力するため、次々と試合の中止が決定している。
ゴルフトーナメントは、通常トーナメントが終了した時から、翌年に向けての準備が始まるが、日本の場合、JLPGA又はJGTO、主催者、後援の地元自治体や企業、企画運営会社、TV中継関係者、ボランティアなど多くの企業や人が関わり、準備を進めることになっている。
1万人以上来場するギャラリーのために、輸送用バス、休憩や食事を取るためのギャラリープラザ、観客席、トイレなど、快適にトーナメンを見てもらうための準備も必要だが、多くの地元の企業や関係者が協力して大会を盛り上げていく。一大会の関係者は延べ1000名以上にも上るという。
これだけ多くの人が関わる大会は費用も膨大である。
明確なのはプロの賞金。2020年のJLPGAツアーは37試合で、その賞金総額は39億3500万円。
JGTOツアーは、25試合、賞金総額は32億6000万円だった。
大会によっても違うが、1試合当たりの賞金は1億円以上になる。
その他トーナメントにかかる経費は、コース使用料、印刷物、仮設物費、TV関係、プロアマ費、輸送費など、賞金総額の3〜4倍程度と言われている。
ところが大会が中止になると、その開催地域へ波及する経済効果も失われることになる。
選手、関係者や1万人以上のギャラリー達が、会場に移動するための交通費、宿泊費、飲食費などの経済的な損失は更に数億円以上と推定される。
米国のマスターズもコロナウイルスの影響で11月への延期が発表されたが、マスターズの地域社会への経済効果は莫大で1億ドル(約110億円)以上と言われている。
約30万人以上が来訪するといわれているこの1週間のために、ホテルは1年前から予約でいっぱいになり、自分たちの住宅を週1万ドル(約109万円)で貸し出し、近隣のレストラン、ショップも潤う。
オーガスタの有名なステーキ店は6000ポンド(約2700Kg)という通常の1週間の4倍以上の牛肉をマスターズ週用に用意していたそうだが、延期が決定してやり場に困っているそうだ。
なお、オーガスタナショナルGCは約2億円をオーガスタ市と周辺地域に寄付することを発表している。
Text/Hirato Shimasaki
Illustration/Koji Kitamura