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【世界のゴルフ通信2020.5月】From Europe 新リーグに揺れる欧州ゴルフ界「恩を仇で返された欧州ツアー」

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2020年1月、英国に拠点を置く「ワールドゴルフ・グループ」が全く新しいゴルフツアー『プレミアゴルフリーグ』を2022年にスタートする計画があると発表し波紋を呼んでいる。

世界のトッププロたちはツアーを捨ててサウジマネーに飛びつくのか?

サウジインターナショナルのプロアマで、プレミアリーグのキーマンたちから勧誘を受けたフィル・ミケルソン。

サウジアラビアが世界のゴルフ界を支配する?

今年1月、英国に拠点を置く「ワールドゴルフ・グループ」が、全く新しいゴルフツアーとして『プレミアゴルフリーグ』を2022年にスタートする計画があると発表した。

ライバルの出現について、1月末のサウジインターナショナルの週に話が広まったことは、ことさらユーロピアンツアー(以下欧州ツアー)CEOのキース・ペリーにとって衝撃だったに違いない。

というのも、忌むべき人権問題の歴史をもつ国にワールドクラスのゴルフを持ち込もうという危ない橋を渡ったのはペリー本人だったからである。

1年前、彼はサウジにゴルフへの足掛かりを与えるだけだと非難されたが、案の定、サウジが彼の運営する欧州ツアーを脅かす新しい存在となってしまった。

まさに恩を仇で返されたわけだ。

普段はメディアのインタビューなどを避けたりするような人物ではないが、サウジインターナショナル開催中は拒否。

だが、欧米両ツアーの存在を脅かす、この新リーグ設立の裏側にはサウジマネーがかなり動いているという。

©Eiko Oizumi

プレミアリーグ発足に危機感を感じる欧州ツアーCEOのキース・ペリー氏。

プレミアリーグのキーマンがミケルソンと接触

さらにサウジゴルフ連盟CEOはプロアマ戦でフィル・ミケルソンとプレミアゴルフリーグの影のキーマン達が同組でプレーするようにセットアップ。

これらの人物の中にはバークレイズ・キャピタル(英)の取締役であり、リーマン・ブラザーズの元重役のロンドンの投資家アンドリュー・ガーディナーもいた。

彼らは48人の選りすぐりの選手たちがF1型式のようなチーム戦と個人戦の両方で世界中18試合で争うというビジョンを説明し、ミケルソンに対して勧誘を行なったのだ。

「彼らとの話は魅惑的だった。中には非常に興味の持てるアイデアがあり、非常にしっかりしているようだ」とラウンド後にミケルソンは語った。

ツアーに残るか、プレミアリーグに行くか?

72ホールではなく54ホールのグランプリ形式で行なわれ、毎試合1千万ドルの賞金で開催されるが、これには最高レベルの選手たちが参加しなければビジネスは成り立たない。

だが、選手たちはいったんこの新プレミアリーグを選べば、欧州ツアーやPGAツアーに戻ることはできないという内容が、ツアーからメールで配信された。

ツアーにとどまるもよし、出るもよし。

だがいずれにせよ永久に、である。

だから22年の立ち上げまでに片付けねばならない仕事は山積みだ。

スーパースター選手を集めなければいけないのは明らかだが、保身のためにはまず4大メジャーを開催しているR&A、USGA、 PGA・オブ・アメリカ、オーガスタナショナルという門番たちと取引を打たねばならない。

ローリー・マキロイ、ブルックス・ケプカ、タイガー・ウッズたちは、メジャーで何勝したか、ということによって自分たちのキャリアが認められていることをわかっている。

そのため、4大メジャーへの道なくしてはこのプロジェクトはスタートラインに立っていないのだ。

また、世界の48人のベストプレーヤー達を億万長者にしてくれた各ツアーを見放し、欧米両ツアーに居残る多くの友人や仲間と別れて、将来どうなるかわからないような競技に移行させるのも至難の技だ。

だが、個人スポーツではその性質上、その人の富と栄光で価値が測られるものなので、移行するのはそれほど難しい問題でもないのかもしれない。

「最近ロッカールームでは、みんなが話題にしてるよ。興味のある連中にはいい刺激になっている」とジャスティン・ローズは語っている。

©Getty Images

“ツアーの金づる”タイガー・ウッズもプレミアリーグについては調査しているという。

気になるタイガー・ウッズの曖昧な反応

PGAツアーコミッショナー、ジェイ・モナハンにとっておそらく最大の心配の種は、ゴルフ界最大の金づるであるタイガー・ウッズの曖昧な反応だ。

「私のチームは、詳細に調査もしている。世界のトッププロだけを獲得しようとしているね。トッププレーヤーをショーケース化するのは当然の進化。このようなアイデアはいずれにせよ発生、前進していくものだ」

この考えに対して、即否定しない選手たちの数が増えていることはツアーにとって不気味だ。ツアーメンバー達の忠誠心はあてにならない。だが選手たちがツアーに残ったとしても、4大メジャーの各運営組織の足並みが揃うかは分からない。

メジャー大会が参画しなくてもプレミアゴルフリーグは成立するが、メジャーの運営組織であるR&Aなどのビッグ4が支援することにでもなれば、ゴルフ界に革命が起こるに違いない。

©Eiko Oizumi

「プレミアリーグには興味がない」と断言するローリー・マキロイ。

Text/Euan McLean

ユアン・マクリーン(スコットランド)

スコットランドを拠点に欧州ツアー、海外メジャーを過去20年以上に渡り取材。

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