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【世界のゴルフ通信SP】From Latin 感染大国・スペインから の悲鳴!ラテン圏のゴルフ産業は 史上最悪の不況

世界の各国ゴルフ情報の中から南米の話題をお届け!

コロナウィルスの影響が大きかったスペインのゴルフ産業は 史上最悪の不況に陥っている。

完全防備でコースメンテナンスに勤しむグリーンキーパーたち。(アユダGC·スペイン)

ゴルフ観光の割合が高いラテン国の危機

3月12日からゴルフ場が完全に閉鎖されたことに伴い、スペインのゴルフ界は、2008年の経済危機を大きく上回る最大の危機に直面している。

2008年の「レンガ危機(不動産のバブル崩壊)」の後、スペインのゴルフ界は大きく低迷。

リゾート不動産投資に関係する多くのゴルフ場が閉鎖し、これにより、スペインで開催する試合が17から2へ激減。

誰もが手に届く大衆的なスポーツとしてのイメージが低下した。

またこの10年間、ラ中南米諸国では、ラテンアメリカPGAの強化や、新たなゴルフの目的地としてカリブ海諸国、チリ、コロンビアおよびアルゼンチンが成長したことにより黄金期が始まったところだったが、また1から再スタートを切らなければならなくなった。

この世界的危機がどのように、またどれほど、スペインや中南米のゴルフ界に影響を与えるかについて語ることは陳腐に思われるかもしれないが、スペインや、中南米諸国の一定地域のGDPは観光に依存しており、ゴルフ観光から多大なる影響を受けていることは確かである。

王立スペインゴルフ連盟の最新レポート(2016年)によれば、スペインは年間約600万人の観光客を受け入れており、これを経済的に見れば、GDPの10.2%(スペインが観光から受け取る収益)および雇用の12%(7人に1人のスペイン人が観光分野で働いている)を意味している。

この600万人の観光客のうち10万8800人が 360か所のゴルフコースでプレーしているが、これらは主にカナリア諸島やアンダルシア州コスタ·デル·ソル、バレアレス諸島に集中している。

この多数の観光客は約2500万円をゴルフ(プレー料金、クラブやバギーのレンタル料など)に消費しており、また、この2倍以上の約6673万円を様々な経費(ホテル代、レストラン、ショッピングなど)に消費している。

スペインではゴルフにより年間総計約917億円が生み出されているのだ。日本はスペインにとってゴルフ観光の新興国のひとつであるが、2017年には475人(全体の0.7%)がプレーしている。

今回のウイルス感染拡大による経済的損害や雇用数については、世界のゴルフ界に対して大きな打撃となっている。

しかし、それは国家レベルの数字にすぎず、その背後には個人的に打撃を受けたドラマも存在している。

政府が「非常事態」を宣言し国境が封鎖されるよりかなり前に、ゴルフ場は自発的に閉鎖させられた最初の施設だった。

メンバーコースについては、その多くがメンバーフィにより存続できるためそれほど影響を受けないが、コスタ·デル·ソル(アンダルシア州)やカナリア諸島、バレアレス諸島、バレンシア州など観光に頼っている大部分のコースでは、大きな問題が生じている。

最盛期(3月〜5月)に収益が上がらないにも関わらず、コースのメンテナンスに取り組む必要があり、その費用が生じるからだ。

王立スペインゴルフ連盟はグリーンキーパーをゴルフ場に提供しているが、すべての需要を満たすには不十分。

多くのゴルフ場は、資金や人員不足のために放置され、芝が枯れてしまうかもしれない。

また、欧州ツアーのアンダルシア·マスターズが4月末にバルデラマで予定されていたが延期となり、その他男女問わず13試合すべてが中止された。

また、ゴルフ教室についても同様であり、担当するコーチ1700名は復職する時期が未定である。

ゴルフ場はクローズしても、コースメンテナンスは必要不可欠の作業として認められている。しかし一部の作業員は不当に罰金が課されていることもあるという。

マドリード郊外のパロマレホGCは、コースメンテナンス作業員とメンテナンス機械を街の消毒作業用に提供している。

隔離された生活
新たな経験

個人的な話では、自分の50年の人生において未だ経験したことのない生活を、現在送っている。

マドリードのラ·ヘレリアGCで開催された試合でプレーした3月12日以降、私は外部の世界、すなわち友人や家族、報道関係の同僚とほとんど接触していない。

隔離が徐々に、しかし止めようもなく始まり、マドリード、それからスペイン全土に広がっていった。

3月12日以降、私は感染を恐れて、自宅から500メートルのところに住んでいる母親とハグもしていない。

最初は目新しいことばかりだったが、一人でいる日数が経過するにつれて(私は単身者である)、毎日が似たようなものになりだした。

朝、起きてきちんとした日々を過ごすのに、毎日、大変な努力を要している。

例えば、ベッドからソファーへのジャンプするほどでもないちょっとした距離を移動したり、少しゴルフの練習をしたり、あるいは、再びテレワークをしたりするなどである。

私はスペインの公共ラジオ向けにスペインのコンサート会場や酒場を回る仕事もしているが、現在は全て閉鎖されているので、この仕事も今では不可能だ。

私たちはアングロサクソン民族ではなく、地中海の端で生まれたラテン系なので、友人とのハグや家族へのキスなど人との触れ合いが必要である。

平日は友人と外食しビールを飲み、あるいは、毎日、通りのテラスに座っておしゃべりやコーヒーを楽しむ。

私たちは、警察や軍隊が通りをパトロールし、不要不急の用事を除き外出がNGとなることに慣れていない。

毎日、午後8時になると、人々はバルコニーに出て、医師や消防士、軍隊に拍手を送っている。これが、街が目覚める唯一の瞬間である。

ネットや携帯電話、電子メール、テレビが外部世界との唯一の接点だ。唯一の人との触れ合いが鏡の中の自分の姿では、状況は日々、厳しくなる一方だ。

ゴルフ場をクローズしているところも多いが、1組1人か2人でのみプレーを許可して営業しているコースもある。

自宅でパットの練習を行なうアモーレス氏。

Text/Isabel Trillo Amores

イサベル・トリロ・アモーレス(スペイン)

PGA・オブ・スペインのコミュニケーションディレクター。80年代後半からゴルフ取材を始め、その数は世界250試合以上。ゴルフのラジオ番組も手がける。

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