コロナ禍のメジャー開催はどうだった?
ほとんどのメディアが会場内に入れず、現地取材者が限定されていた今年の「全米プロ」。
現地の雰囲気やコロナ対策はどうだったのかをオフィシャルライターを務めていたジェフ・バビニュー記者にレポートしてもらった。
選手のインタビューは距離を取って行なわれ、ZOOMインタビューがメインだった。写真はブルックス・ケプカ。
選手も関係者も困惑気味のコロナ時代の「ニューノーマル」
無観客で開催された今年の「全米プロ」だが、初日の早朝、タイガー・ウッズは10番ティーから自身21回目の「全米プロ」をスタートした。
彼が1999年、2000年、2006年および2007年の大会で4勝している旨がアナウンスされたが、ひとつの拍手もなく、完全な静寂に包まれていた。
タイガー、ジャスティン・トーマス、ローリー・マキロイの3人が10番グリーンを終えた時、26人の関係者がグリーンを取り囲んでいたが、その大部分は記者やラジオ・テレビのアナウンサー、カメラマンで、PGAの職員も数人混じっていた。
このような有名選手の組であれば通常、数千人のファンが周りを取り囲むものだが、今はこれが「ニューノーマル」。
タイガーは「これが現実であり、しばらくは続くだろう。エネルギーが違う。
ギャラリーが動き回ることもなく、雑音を耳にすることもないが、勝手が違う。
近い将来、おそらくはしばらくの間、私たちが慣れなければならないものだね」と語る。
このトーナメントを開催するにあたり、全米プロゴルフ協会やサンフランシスコ市、カリフォルニア州は、完璧なチームワークを必要とした。
選手やキャディ、インストラクターは、一歩コースから外に出ると「透明な球体の中」で行動しているようなものだった。
PGAツアーで数か月、選手を検査しているのと同じ検査チーム「フリー・スポート・アンド・サンフォード・ヘルス」に依頼し、大会前日の水曜日、試合に参加する選手全員の検査結果が陰性であることを判明させた上で156人の選手と156人のキャディ全員に出場許可を出した。
全米プロゴルフ協会・トーナメント最高責任者のケリー・ハイは、今回の全米プロは、自分がこれまで携わってきた29回のいずれとも全く違うことを認めている。
彼は何か月もZoomで会議を行ない、観客の有無など多くの様々な計画に合わせて調整を行なってきた。
「30年間やってきましたが、今回が最もやりがいがあり、独特ですね」
3月にカリフォルニアのコロナウイルス感染者数が増加した際、当初の5月の開催日に先立ち観覧席などの設置を開始した業者は、すべての作業を中止するよう指示された。
全米プロゴルフ協会が8月開催に向けて計画を再調整した際、現地の建物の中には別の目的のために作り変えられたものもあった。
たくさんの商品が販売される予定だったクラブハウス内の巨大なプロショップが選手のロッカールームになったのだ。
ロッカーは隣の選手と約3メートル離され、各自にロッカーと小さなテーブルが提供された。
もともと選手のロッカールームになる予定だった場所は、メディアセンターに変更。例年、1000名以上のメディアの入場を認めているが、今回のメディアセンターには、わずか50台のデスクと約20名の記者、概ね同数のカメラマンと数名の全米プロゴルフ協会職員しか来場が許されなかった。
場内には消毒薬が設置され、プレー中以外は選手もマスク着用を推奨された。
今シーズン唯一のメジャーが開催できたことに感謝!
コースに売店はなく、少量のシャツやジャケット、帽子だけがプロショップの地階で販売された。
そして選手たちは、プレー中以外はマスクを着用。
彼らはメジャーで世界のトッププレーヤーたちと戦っていることはわかっているが、観客がいない状況に違和感を感じていた。
ポール・ケイシーは「歓声や拍手がないのは寂しいですね。正直言ってメジャーという感じがしません」と語った。
「全米プロ」を何とか開催できたことにホッとした全米プロゴルフ協会。「全米オープン」と「マスターズ」は秋に延期されたので、「全米プロ」は「2019〜2020年シーズン」の唯一のメジャー大会となった。
コロナ禍の中、思い切って開催に挑戦。見事成功を収めたといっていいだろう。
「ここにないものを嘆くよりも、あるものをもう一度祝福し、こうして大会が開催できたことに感謝すべきでしょう」と全米プロゴルフ協会CEOのセス・ウォー氏は語っている。
選手たちのマスクファッション
ホアキン・ニーマン
彼の契約先のアディダスからの支給品だろうか?ブラックのマスクにロゴが映える。
ルイ・ウーストハイゼン
グレーのカモ柄のおしゃれなマスクを着用。
ローリー・マキロイ
これは完全に使い捨ての、巷によくありがちなマスク。
ジャスティン・トーマス
マスクに何やら文字が書かれているが判読できず。比較的オーソドックスなマスクだ。
イム・ソンジェ
使い捨てタイプのマスク。海外ではこのようにブルーが流行っているのだろうか。
バーント・ウィースバーガー
カラフルでおしゃれなマスクを着用するウィースバーガー。ハートや花柄がキュートだ。
ラッセル・ヘンリー
これもマキロイ同様、使い捨てマスク。
競技委員
全米プロを主催するPGAオブ・アメリカ関係者や競技委員は、ロゴ入りマスクを着用。
Text/Jeff Babineau Photo/PGA of America, Getty Images