ジョン・ラームがスペイン人初の「全米オープン」チャンピオンに！

スペイン人初の全米オー プンチャンピオン誕生!

ジョン・ラーム人生の勝利の法則

最終日、17～18番で連続バーディを奪取し、単独首位でホールアウト。情熱的で力強いガッツポーズを繰り出し、観客たちは大いに沸いた。

優勝
Jon Rahm
ジョン・ラーム（スペイン）

1994年11月10日生まれ。
188cm、101kg。米ツアー６勝、メジャー１勝。大学時代はアリゾナ州立大ゴルフ部に属し、フィル・ミケルソンの弟で、現在ミケルソンのキャディを務めているティムの指導のもと、腕を磨いた。「全米オープン」優勝で世界ランク１位に。

ジョン・ラームが、スペイン人としては初めて「全米オープン」制覇を達成した。
スペインの英雄セベ・バレステロスですら叶わなかった「全米オープン」での優勝はセベに捧げられたが、この勝利はラームにとって起こるべくして起きた最高の宿命だった。

「全英オープン」と「マスターズ」でメジャー制覇したセベ・バレステロス。2011年5月に逝去し、10年が経過した。

悲劇のあとはいいことが起こる！

毎年父の日に最終日を迎える「全米オープン」。今年の春先にケパちゃん（中央）が誕生し、父となったジョン・ラーム（左）。右は、学生時代からの交際を経て結婚したケリー夫人。

コロナ陽性で優勝目前で棄権の悲劇から一転……

プロ5年目のジョン・ラームが、「全米オープン」でメジャー初優勝を果たした。
しかも、母国の英雄セベ・バレステロスも達成できなかった快挙を、スペイン人として初めて達成したのである。

「優勝トロフィーの横に座っているなんて、信じられないほどすばらしいね。
今大会の勝利はセベに捧げたい。
彼のことを語るとき、マスターズのことがよく言われるけど、ボクは知ってるんだ。
彼が一番勝ちたかったのは全米オープンだったってことを……」

実は、大会直前に新型コロナウイルスに感染していたラーム。
2週間前の「メモリアルトーナメント」では3日目を終えて２位と６打差の単独首位につけていたが、3日目のホールアウト後にコロナ検査で陽性が確認されると、最終日のプレーを棄権。
10日間の隔離生活を余儀なくされた。

だが彼は内心、この出来事を前向きに捉えていた。

「ボクは何かすごく悪いことが起きた後、すごくいいことが起きると信じているんだ。
だから（コロナで棄権した後も）前向きな気持ちでいられたんだよ。
それが何なのかはわからなかったけど、それが今日のことなんだって感じたんだ」

ラームは隔離中、２人のメジャーチャンピオンからメッセージをもらっていた。
一人は今年の「ライダーカップ」欧州チームキャプテンのパドレイグ・ハリントン、もう一人はニック・ファルドである。
２人とも、自分たちの過去の似たような悲しい体験談を共有し、「ひどい目にあっても、そのあと、いいことがある」と伝えたのだ。

ラームは、２人のメッセージをコースでも思い出しながら「何かいいことが起こるはず」と信じて戦った結果、メジャー初優勝というとてつもなく大きな獲物をゲットすることができたのである。

ハッピーな地でラームに働く第六感

開催地のトーリーパインズGCは、彼が2017年にツアー初優勝を遂げた「ファーマーズインシュランスオープン」のコースであり、ここでケリー夫人にプロポーズをしたこともあって、本人にとっては特別な場所だという。
彼には第六感のようなものが働くようで、トーリーパインズでの「全米オープン」はハッピーエンディングに終わると感じていたというから驚きだ。

「何か特別なものが空中に漂っているような気がする。
ただ何かを感じるんだ。今日（最終日）はボクの日だと思っていた。
すべてがうまくいくと……」

彼の勘は的中し、予言通りに優勝。今後の彼の活躍と同時に言動にも注目してみたい。

全米オープン
2021年6月17日～20日
トーリーパインズGCサウスコース
（米国・カリフォルニア州）
7685ヤード・パー71

最終成績

予選落ち：石川 遼、浅地洋佑

Text/Eiko Oizumi Photo/USGA、Getty Images