●柔軟な対応が長続きの秘訣
97年、21歳3ヶ月でマスターズに初優勝したタイガー・ウッズも今や2児の父であり、43歳。いくらトレーニングをしっかりやっているタイガーでも、体力の衰えや体の変化は止めることができない。ケガをし、何度も手術していることもあって、「もはや昔の若い頃の体ではない」「練習も、昔のように長時間、一つ一つに渡ってやることはできない」とよく自覚している。だが、今もなおツアーで戦える飛距離とショットの精度を持ち合わせているのは、年々進化を遂げているクラブに頼る、という考え方に変わっているからだ。
以前のタイガーなら、決して「カチャカチャドライバー」は使わなかったし、そもそもあまりクラブを変えるタイプではなかった。
「クラブを最後に変えたのはマッチプレーの時。ドライバーと3Wのシャフトをちょっと軽めのものに変えたのは、首に違和感があるからだ。軽めの方が体に負担をかけずに振り抜けるし、弾きがよくなるので、飛距離も多少伸びるからね。アイアンは、あちこち改良を加えているが、基本的には昔から使っているものとあまり変わらない。ウェッジに関してはソールの削りの違うものを芝の種類ごとにいろいろと使い分けているが、これが最も大きな変化の一つだろうと思う。そしてグルー(粘着剤)で装着したホーゼルではないタイプのクラブを使うことも大きなチャレンジの一つだった。今まで使ったことがなかったからね。今はテーラーメイドのスタッフの人たちにいろいろやってもらったり、ジェイソン(デイ)、ローリー(マキロイ)やDJ(ダスティン・ジョンソン)らの知恵を拝借して、今どきのクラブのテクノロジーを理解し、球の打ち分けもできるようになった。今でも取り組んでいる最中だ」
もともと小ぶりのヘッドのドライバーと、マッスルバックのシャープなアイアンが好きなタイガーで、新製品が出てもすぐに飛びつくタイプではなかった。人一倍、クラブにはこだわりがあり、頑固なのである。現在では体の変調、年齢とともに軽めのシャフトを試したり、シャフトを簡単に入れ替えることのできる「カチャカチャドライバー」を試すという柔軟性も持つようになった。若い頃の体力や動きができないことを十分認識しているからこそ、「フィーリング」よりも「やさしさ」や「結果」を求める方に重点を置いているのかもしれない。このような時代の変化を受け入れられたタイガーだからこそ、これからも長く活躍できるのだ。