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パティ・タバタナキットがANAインスピレーション初のルーキーイヤーチャンピオンに!

海外女子メジャー第1戦「ANAインスピレーション」レポート!

©LPGA

カリフォルニア州パームスプリングスで毎年開催される海外女子メジャー第1戦「ANAインスピレーション」。
『ゴルフ・グローバル』は、コロナ禍以降初めて米国本土に上陸し、現地取材を行なった。
選手や関係者同様、メディアも全員、PCR検査を会場で受け、いわゆる「コロナ陰性バブル」に入って安全に取材。
現在の米女子ツアーの状況をレポートする!

スイング改造で飛距離アップ

「ANA」初のルーキーイヤーチャンピオン誕生

【優勝】パティ・タバタナキット

©LPGA

今年のチャンピオンのパティ・タバタナキット。タイから新たなヒロインが誕生した。

©Eiko Oizumi

編集長O嬢、日本女子ツアーのスターに会う!

松山英樹の「マスターズ」優勝に続け!
私たちもアメリカで頑張ってます!

左から笹生優花、記者O嬢、「全英女子オープン」チャンピオン渋野日向子。

日本人女子は7人が出場した、今年の本大会。
米女子ツアーメンバーの畑岡奈紗、上原彩子、河本結、野村敏京のほか、渋野日向子、原英莉花、笹生優花が戦った。

©Eiko Oizumi

原英莉花

「タイガー・ウッズ  のように戦いグランドスラムを目指す!」

パティ・タバタナキット

タイ、1999年10月11日生まれ。
UCLAに進学し、2019年にプロ転向。シメトラツアーで8戦3勝を挙げ、2020年LPGAメンバーに。世界ランク12位(4月25日現在)。

©Eiko Oizumi

表彰式で、飛行機が飛んでいるような仕草を見せたタバタナキット。18番グリーン周りの池に飛び込み、今治タオルのバスローブを着用するのが本大会の優勝者の伝統。

©LPGA

最後のパットを決めて、ガッツポーズするタバタナキット。

ジュタヌガーン姉妹以外のタイのヒロイン誕生

©LPGA

ミスしてもガマン強くプレーをすることを自分に言い聞かせたという。

昨年、新型コロナウイルスの影響で9月に開催された「ANAインスピレーション」から7か月後、例年通りに男子メジャー「マスターズ」に先駆けて、4月1週目に無観客で開催された。

第50回大会を制したのは、タイ出身のルーキー、パティ・タバタナキット。
彼女はバンコクのインターナショナルスクールを卒業し、その後アメリカに渡ってUCLAに進学。
アマチュア時代から「キャロウェイ・ジュニアワールドゴルフ選手権」「アジアジュニアゴルフ協会・ロレックストーナメント」など国際大会でも優勝し、タイ女子アマゴルフ協会のプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたこともあった。

また2018年には「全米女子オープン」でアマチュアとしての最小スコア記録をマーク。
その実力で、UCLAゴルフ部在籍中からその名は知れ渡っていた。
アマチュア時代に、すでにメジャーに何度も出場し、その場の雰囲気や難しさは経験済み。
どのように自分自身をコントロールして試合に臨めばいいのか、よくわかっていたのだという。

「大学生の時に、本大会から招待してもらい、ローアマを獲得した時のことをよく覚えているわ。でも、こうしてメジャーで勝てて、夢がかなった!」

そして2019年に数試合出場していたシメトラツアー(LPGAの下部ツアー)では、いかに勝つかを学んだことが大きかったようだ。
「プロ入りを考えている人がいるなら、まずはシメトラツアーに行くことをオススメしたい」と語っている。

彼女は子供の頃に、タイ人の母を持つタイガー・ウッズのプレーを見て、「自分もタイガーのようになりたい」と父親に語ったことがあった。
タイガーはすばらしい競技者であり、彼がどれだけリードしていても、初日にプレーしているかのように、全力を尽くしてプレーするというスタイルが好きなのだそうだ。
自分自身もタイガーのこのスタイルを取り入れており、今回の試合中の会見でも「私はただ自分のやるべきことに集中し、ペダルを漕ぎ続けるだけ」と語っている。

©Eiko Oizumi

キャディのライアンと共に、18番グリーン周りのポピーズポンドに飛び込んだタバタナキット。優勝者の伝統行事だ。なお、池の水はきれいに濾過されている。

©Eiko Oizumi

優勝が決まり、ツアー仲間がシャンパンファイトで祝福。

精神面のコントロールが課題!?

技術も高く、メンタル面も強い印象のある彼女だが、「私はガマン強くない」のだという。
そんな彼女の精神面を支えているのは、アニカ・ソレンスタムや宮里藍が師事していた「ビジョン54」の提唱者、ピア・ニールソンとリン・マリオットというメンタルコーチだ。
最終日の朝、2人からメッセージが届き、タバタナキットはそのアドバイスを念頭に置きながら戦った結果、優勝できたと語った。
その内容とは—?

「今日勝てるかどうかはわからない。また、いいプレーをしても勝てないかもしれないし、まあまあのプレーでも優勝できるかもしれない。
大事なことは、自分自身とゲームプランに対して、ベストを尽くしたという誇りを持てるようにしてほしい。
自分がコントロールできることについては100%集中すること。
賞金のように、自分ではコントロールできないことに注力する必要はない」

それに対し、彼女は次のように返事をしたという。

「そうね。今日、どんなことが起こったとしても、私自身の価値が変わることはないし、両親が私を誇りに思ってくれ、愛してくれることには変わりない。
過去3日間、いいプレーができたことや、去年と比べてもいい選手になっていると誇りに思っているけど、人から愛情を受けたり、面倒を見てもらったことに対して感謝することは変わらないし、いつももっとよくなるために練習しなければいけないことも変わらない」

彼女はデビューしたばかりだが、人として、ゴルファーとして大切なものを、すでに身につけているようだ。
タイの女子ゴルファーといえば、ジュタヌガーン姉妹が有名だが、また新たなヒロインがタイに誕生した。

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3日目を終えて、首位と8打差の7位タイにつけていたリディア・コーが最終日に大爆発! 1イーグル、8バーディ、ノーボギーの62をマークし、タバタナキットと2打差の単独2位に浮上した。

最終成績

優勝パティ・タバタナキット−18
2リディア・コー−16
3キム・セヨン、ネリー・コルダ、フォン・シャンシャン、ナンナ・コエルツ・マドセン−11
7コ・ジンヨン、インビー・パーク、アリー・エウィング−10
10イ・ミリム、モリヤ・ジュタヌガーン、メーガン・カン−9
28河本 結−4
50笹生優花E
67畑岡奈紗+4
予選落ち渋野日向子、原英莉花
上原彩子、野村敏京

O嬢の女子メジャー通信
編集長O嬢も「バブル」に入ってみっちり取材!
テレビではわからないおもしろ情報をお伝えします。

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約1年ぶりにツアーに復帰したヤニ・ツェン(左)と笹生優花。笹生はヤニ・ツェンのスイングに憧れ、真似していた時期もあったという。

帰ってきたメジャーチャンピオン3人娘

ヤニ・ツェン

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フォン・シャンシャン

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ミッシェル・ウィ・ウェスト

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新型コロナウイルスは、アジアの選手の転戦スケジュールも大いに変えてしまったが、コロナウイルス感染流行から約1年。ようやく台湾からヤニ・ツェンが、中国からフォン・シャンシャンが帰ってきた。

「台湾でおいしいものを毎日食べていると、アメリカに帰ってきたくなくなるね(笑)」(Y・ツェン)

「今週からいよいよ復帰。練習はしていたけど、試合は久しぶりだから、ちょっと心配」(F・シャンシャン)

ヤニ・ツェンは予選落ちを喫したが、フォン・シャンシャンは堂々の3位タイ。今年は東京オリンピックもあるだけに、銅メダリストのシャンシャンは自信を取り戻し、ツアー優勝や金メダルを目指して頑張っていくことだろう。

また、2019年にNBAゴールデンステート・ウォリアーズ幹部のジョニー・ウェストさんと挙式したミッシェル・ウィは、昨年6月に第一子を出産して母に。
コロナ禍でも子育てで忙しかったという。
今大会の結果は予選落ち。
もはやゴルフは彼女にとって1番のプライオリティではなくなったが、まだまだ引退するつもりはない。

元女王再びオリンピックを目指す!

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「キアクラシック」でLPGAツアー通算21勝目を記録。2020年「ISPSハンダ・全豪女子オープン」以来の勝利を飾った。

2016年「リオ五輪」では金メダルを獲得した、元世界ランク1位の朴仁妃。
安定感はあるものの、得意のパッティングが決まらず2019年は勝利に見放されていた。
しかし、昨年の「ISPSハンダ全豪女子オープン」で2年ぶりに優勝し、今年「ANA」前週の「キアクラシック」で優勝。
一気に世界ランク2位まで浮上した。

「世界ランク1位になりたいとはあまり思ってなかったけど、オリンピックに出るために1位になることができれば有利よね」

「ANA」では7位タイに入り、翌々週の「ロッテ選手権」では2位タイに。
パッティングが好調だと語る彼女なら、今季メジャー優勝も夢ではないだろう。

これで最後……

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まもなくLPGAコミッショナーを退任するマイク・ワン氏。

今年中にLPGAツアーのコミッショナーを辞任し、全米ゴルフ協会(USGA)のCEOとなることが発表されたマイク・ワン氏。
2010年以降、女子ゴルフの発展に貢献し、その手腕が高く評価され、USGAの現CEOであるマイク・デービス氏の退任後にその座に就任することになる。

「オリンピックでは30ヶ国の選手が出場していたが、LPGAツアーはもっとたくさんの国の選手たちが戦っている。そのことに誇りを感じたものだ。今後はUSGAとLPGAとでコラボして、ゴルフというゲームを発展させていくことも考えたい」としている。

O嬢日記@パームスプリングス 

©Eiko Oizumi
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今はコロナウイルスの影響で、なかなか米ツアー現場での取材許可が下りない時代となっているが、今大会ではコロナ対策をしっかり取った上で、私のような海外からのメディアを受け入れてくれた。
普段、男子ツアーをメインに取材している私だが、メジャーチャンピオンの渋野さんを始め(実は今回初対面!)、日本のトップクラスの選手にお会いし、取材できたのはラッキーである。

今回はメディアも選手同様、PCR検査を現地で受検し、陰性が判明すると「バブル」の中に入れてくれた。
これにより、リモートインタビューではなく、マスク着用の上、選手に直接話を聞くことができたのは大きい。
1対1で話が聞けるというのは、コロナ時代に入って久しくなかったこと。海外選手たちとも久しぶりに会い、直接話を聞けたのは嬉しかった。

まだまだ海外ツアー取材に思うように行けない時代だが、早く元に戻る日を心待ちにしている。

日本女子たちのメジャー

日本人選手たちの話から印象的な言葉をお届け!

渋野日向子

©Eiko Oizumi
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練習日の1日をコースチェックに充てた渋野。「ショットを打たずにコースを見ると、プレー中では気づかないものが見えてきたりする」

石川遼をマネしてコース攻略

練習日の1日を、ウェッジ4本だけ持ってコースチェックをした渋野。今年、国内ツアーでも始めたことだという。

「石川遼プロから、ショットを打たずにコースチェックしていると聞いて、私もマネしてやってみようと……。
ティーショットでどこを向くとか、アドレスの決め方とか、先に頭の中に入れておけば、風向きによって少し変えるだけなんで、パッと決めやすいですね。
グリーン周りも、どこに外したらOKで、どこならダメかをメモに書き込んでチェックしています」

今年は残念ながら予選落ちに終わったが、納得のいくショットも多かったと渋野。
今後もしばらく米国で転戦し、芝の違いや海外選手とのスピン量の違いなどの日々の発見を、自分の糧にすることを誓った。

笹生優花

©Eiko Oizumi

ドライバーが使える方がイメージしやすい

ロングヒッターとして名高い笹生は、日本の試合ではドライバーを使えるホールが少ないというが、距離の長い海外試合では、自分のアドバンテージを感じるという。

「ドライバーの調子の良し悪しは別として、ドライバーを使えた方が嬉しいですね。
ドライバーを使えると、セカンドの距離も計算しやすいですから。
ラフに入っても、距離を飛ばしておけば、短いクラブを持てるので、ドライバーを使えた方がいいですね」

この考え方はまさにブライソン・デシャンボー。
飛距離のアドバンテージを生かしたパワフルなゴルフで優勝を目指す。

河本 結

©Eiko Oizumi

今年は優勝するイメージがうっすらできた

最終的に、日本勢最上位の28位タイでフィニッシュした河本。
メジャー5試合目で最高位を記録し、満足げな表情を見せた。

「去年は予選を通らなきゃとか、予選を通るにはどうしたらいいか、と考えていたが、今年はなんとなく優勝する姿がイメージできてきた。
うっすらでも勝つイメージが見えたのは自信につながる」

LPGAツアー2年目の今年、米国から日本のゴルフファンに優勝のニュースを届けられるよう、一生懸命頑張ると語った。

原英莉花

©Eiko Oizumi

誰になんと言われようと挑戦し続ける!

海外メジャーで思うような成績を残せず、予選落ちが続いている原英莉花。今大会では8打足りずに予選落ちをした。

「諦めない気持ちというか、常に結果にこだわって戦う気持ちが大事。
この悔しさを糧に、成長していければ……。
今後も海外の試合の出場権があれば挑戦したい。
どんなに悪い結果でも、なんと言われようと挑戦し続ける」

Text & Photo/Eiko Oizumi Photo/LPGA

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