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パトリック・キャントレーの
フェデックスカップ総合優勝と
ジョン・ラームとの関係

2020〜2021年フェデックスカップ・プレーオフ最終戦「ツアー選手権」で優勝し、フェデックスカップ総合優勝を果たしたパトリック・キャントレー。手にしているのは、「ツアー選手権」の優勝トロフィ。開催地イーストレイクGCにゆかりの深い球聖ボビー・ジョーンズ愛用のパター「カラミティジェーン」を模している。

Text/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images

 2020〜2021年のPGAツアーシーズンは、新型コロナウイルスの感染拡大により中止となった試合の延期試合が行われ、「マスターズ」や「全米オープン」が同シーズンに2回行なわれるなど異例の1年となったが、そんなコロナ禍の中での長いシーズンを戦い抜き、トップに立ったのはパトリック・キャントレーだった。

 彼は今季、「ZOZOチャンピオンシップ@シャーウッド」「メモリアルトーナメント」「BMW選手権」「ツアー選手権」の4試合で優勝し、フェデックスカップの年間王者に輝いた。試合数も多かったため、複数回優勝者数も通常より多かったが、それでも3勝以上を挙げている選手は彼1人だった。

「この優勝は本当に大きい。素晴らしいよ。(BWM選手権で優勝し、フェデックスカップランク1位になったことで)2週間に渡り、1位の座にいたが、もう試合は終わったし、そのプレッシャーからも解放される。長い1年だったし、プレッシャーのかかる試合がたくさんあったので本当に疲れたが、こうして総合優勝できて本当に嬉しい」

 最終戦の「ツアー選手権」最終日の終盤、優勝争いはジョン・ラームとキャントレーの2人に絞られた。2人の戦いは最終ホールにまでもつれ込み、キャントレーがラームに1打差のリードを持って18番を迎えた。キャントレーもラームもバーディで締めくくり、1打差でキャントレーが辛勝。同組で戦った2人は、ホールアウト後に握手を交わし、互いの健闘を称えあったシーンは印象的だった。

「ツアー選手権」の最終日に同組で回ったキャントレー(右)とジョン・ラーム。優勝争いの末、キャントレーが1打差で優勝した。

 パトリック・キャントレーとジョン・ラーム……この2人の対決はある意味、「因縁の対決」だったと言えるかもしれない。今季4勝を挙げているキャントレーだが、そのうちの1勝は、ジョン・ラームの不運によって転がり込んできたようなものだった。

「メモリアルトーナメント」の3日目を終えて、首位のジョン・ラームが2位のキャントレーとコリン・モリカワに6打差という大差をつけていた。しかし、最終日を前にラームのコロナ感染が発覚。最終日を戦うことなく、棄権を余儀なくされた。その結果、モリカワとキャントレーが急遽、優勝争いを繰り広げることに……。結局この試合はキャントレーが優勝を飾った。

 もしこの時、ジョン・ラームがコロナに感染せずに優勝していたら、キャントレーのフェデックスカップの順位も変わっていただろうし、総合優勝を果たすこともなかったかもしれない。なぜなら、プレーオフの3戦のうち、2戦目の「BMWチャンピオンシップ」に優勝して1位に立ったパトリック・キャントレーは、3試合目(最終戦)の「ツアー選手権」で初日を10アンダーからスタートし、4位だったジョン・ラームは6アンダーからスタートしたからだ。つまり、初日のスタートを切る前にもともと4打差がついていた2人だが、「ツアー選手権」の4日間を終えて、わずか1打差だったことを考えると、もしキャントレーが2位でスタートした場合は8アンダーからのスタートだったので、ラームの優勝となる可能性もあった。

 このような「たられば」を言いはじめればキリがないが、少なくとも彼ら2人には、「メモリアルトーナメント」での一件が絡んでおり、最終戦の最終ホールまで、優勝の行方を左右したといってもいいだろう。

 今月21日から始まる、米国チーム対欧州チームの対決「ライダーカップ」。情熱の国スペインの「ランボー」vs冷静沈着なアイスマン「パティアイス」の2人の対決が再び見られるかもしれない。

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