• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 新連載【ゴルフよもやま話 vol.1】ゴルフとテクノロジーの...

新連載【ゴルフよもやま話 vol.1】ゴルフとテクノロジーの進化

Seve Ballesteros&Ivan Ballesteros

バレステロス家の遺伝子を持つイヴァンがセベと現代ゴルフについて語る『ゴルフよもやま話』
セベ・バレステロスの敏腕マネージャーとして、また自身、プロゴルファーとしてゴルフ人生を送っている甥のイヴァン・バレステロスが生前のセベの言葉を辿りながら、現代ゴルフについて考察する。

新連載の第1回は「ゴルフとテクノロジーの進化」について。

「道具が進化すれば、14本のクラブは必要ない。11本でいい!」セベ・バレステロス

©Getty Images

「全英オープン」3勝のバレステロスの逝去から10年(2011年5月7日没)。R&Aは、セントアンドリュースのビーチにサンドアートを施し、彼の偉業をたたえた。

新型コロナウイルスによりゴルフ界のテクノロジーも加速

私はセベ・バレステロスの甥である。彼の生前は長年に渡ってマネージャを務め、彼の考え方、行動の仕方を見てきたが、一方私自身、プロゴルファーであり、アマチュアにレッスンなども行なっている。
そこで、過去のセベの言葉を借りながら、現代のゴルフについていろいろとお話ししてみたいと思う。

新型コロナウイルスの影響を地球全体が受け始めて早1年4か月。
我々の経済や生活にも影響を及ぼしているのだが、ゴルフ業界においても、テクノロジーの活用が進み、さまざまな分野に影響を与えている。

 コロナ時代で大きく加速したものを挙げるとすれば、それは「オンラインのゴルフレッスン」だ。
数十年前は、何を学ぶにしても、対面式のクラスに通う以外の方法など思いも寄らなかった。
あとは、レッスン書などを読んで勉強するくらいである。
しかし今では、オンラインでのゴルフレッスンが実際に行なわれており、レッスン料は安価で、時間を有効に使うことができるようになった。
私自身も現在、スペインでオンラインレッスンを提供している。

世界中のどこからでも気軽に安価に参加できるレッスン

私の提供する60分間のゴルフレッスンでは、時間の7~8割は、先生の前で生徒がボールを打って見せ、あとの2~3割で先生が、生徒のプレーを向上させるためのエクササイズや練習方法の提案や紹介をしている。
今ではテクノロジーのおかげで、世界のどこからでもリアルタイムにゴルフを教えたり、レッスンに参加させたりすることができる。
料金の低価格化も進んでおり、財布の中身を心配することなくレッスンを受けられるようになった。

2020年に私はウェブサイトwww.golflearningcentre.comを設立したが、このサイトを通じて、私は世界各地のさまざまな国籍のゴルファーと交流しながらスイングを少しずつ改善していくためのヒントを教えている。
このクラスは15分で終わり、ゴルフ場や練習場、自宅など、どこからでも参加できるという点が良い点だ。
これによって、ゴルフレッスンは大衆的なものへと変化していると言っていいだろう。

テクノロジーの進化がマイナスになることもある

さて、ゴルフの世界でテクノロジーといえば、道具の進化が挙げられるが、ここ40年ほどを振り返ってみると、パーシモンからメタル、そしてチタン製になったウッド、進化を遂げるアイアンやパター、そして、ボールの開発がこのゴルフというスポーツを大きく変化させてきた。
セベは生前、道具の進化について「私にとって最も大きな影響があったのは、ボールの進化だった」と語っていた。
そして「道具が進化したら、(クラブセッティングは)14本から11本にした方がいい」とも言っていた。
道具が進化すれば、14本のクラブを駆使しなくても十分プレーできるということである。
道具の進化により、プロもアマチュアも、ティーショットの飛距離と精度が向上した。
また、ウェッジについては特にショートゲームが得意でないゴルファーでも、以前に比べれば容易に寄せられるようになったと言っていいだろう。
かつては、グリーン周りの技術と才能がものを言ったが、今では、最大ロフト角64度のウェッジなどを使うことによって、技術がなくてもうまく寄せることができるようになっている。

しかし道具の進化が進みすぎたからなのか、過去のように、圧倒的な強さ、卓越した技術を見せつけるセベのような才能豊かな選手をツアーで見かけなくなったように思う。

©Getty Images

2007年「セベトロフィー」のプロアマに出場したセベ。この頃はキャロウェイゴルフと契約していた。ドライバーはチタン。

©Getty Images

1995年「プレーヤーズ選手権」ではメタルウッドを使用。早い選手は80年代前半からメタルを使用していたが、バレステロスは比較的遅めで、95年からメタルを使用し始めた。

©Getty Images

1990年のセントアンドリュースでの「全英オープン」でショットを放つバレステロス。まだこの当時はウッドにパーシモンを使用していた。

©Getty Images

80年代、バレステロスはヨーロッパでプレーするときはスラセンジャー、日本でプレーするときはミズノのクラブを使用する契約を交わしていた。

トラックマンなどを駆使したデータゴルフ時代

近年のテクノロジーの進化により、データ収集などが容易になった。アタックアングル、ボールのスピン量、クラブスピード、サイドスピン量、スマッシュファクター、フェースアングルなど、さまざまな指標を教えてくれる機器が広く使用されるようになったが、そのデータ量は非常に多く、ほとんどのゴルファーには役に立たないと思われるものもある。
こうした機器は、確かに上級者やプロゴルファーにとっては便利かもしれないが、たいていのアマチュアには必要ないという点は肝に銘じておきたい。
週末にゴルフを楽しむ人には、データはむしろ害になるのではないかとさえ思う。
ゴルフは難しいスポーツだから、週末ゴルファーにとってはもっとシンプルな情報だけでいい。

セベは、「2つのことを考えていると、1つのミスにつながる」という名言を残している。
彼の考え方はとてもシンプルだったが、この教訓は現代のゴルフにも当てはまるだろう。
明確な1つの考えに従って実行することが非常に重要であり、シンプルであるほど良いという意味だ。
あまりにも多くのデータを獲りすぎると、2つの考えどころか、もっと多くのデータのせいで、たいていの場合は混乱してしまう。

テクノロジーは常に大きな進歩をもたらしてきたが、それは好ましいものばかりとは限らない。必要なテクノロジー、データを見極めるのもまた現代のゴルフでは必要なことだ。

イヴァンはオンラインでゴルフレッスンを展開している。今のコロナ時代に打って付けのレッスンだ。

Text/Ivan Ballesteros

イヴァン・バレステロス(スペイン)

セベの甥。自身プロゴルファーであり、ゴルフコーチ。約30年間、ゴルフ業界に携わり、セベの右腕として14年間働いた。ゴルフイベントのプロモーターとしても活躍。

Photo/Ivan Ballesteros、Getty Images

関連する記事