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日本人ゴルファー初の
メダルを獲得した稲見萌寧

Text/Eiko Oizumi

女子ゴルフのメダリストたち。金メダリストのネリー・コルダ(米国・中央)、銀メダリストの稲見萌寧(日本・左)、銅メダリストのリディア・コー(ニュージーランド・右)。
©️Eiko Oizumi

 日本代表の1人、稲見萌寧は日本女子ツアーで今季8勝という最強の女子プロである。その彼女が、ネリー・コルダとリディア・コーという世界を代表する強豪に混じって、銀メダルを獲得するという快挙を達成。日本のゴルフ史上、初のメダルである。

「日本開催で、自分がメダルを獲れたのは今後の人生にとっても名誉なこと。子供たちにも夢を与えることができた。(金メダルはネリー・コルダに決定し、銀メダルを争い)プレーオフになった時、ガッカリしても次につながらないと思った。プレーオフはこれまで勝率100%。そこを貫き通すのが一番だと思った」

 彼女の強さは精神力の強さにある。

 彼女は常に「私は緊張しない。楽しめるタイプだ」と語っていた。初日のスタートでは1組目で1番最初にティショットをする「オナラリースターター」を勤めたが、「全然緊張しなかった。自分のティショットで開幕すると思ったら楽しくて」と受け答えをしていたのは印象的だった。彼女の場合は緊張感よりも「楽しむ」気持ちの方が優っている。

「五輪よりも普段の試合の方が緊張するかも。予選落ちがないぶん、今週は気楽にできる」とも語っていた。

こんな精神状態なら、試合中、どんな状況でも冷静に自分のゴルフに徹することができるし、自分の最大限のパフォーマンスを発揮することができるだろう。これは誰にもない強みだ。

 稲見が、前週の国内ツアー会場から五輪会場に入った時、松山英樹とすれ違った。その時松山は、コースの状況が今、どうなっているのかを稲見に伝え、男子でメダルが獲れなかった分、女子で頑張って欲しいとエールを贈ったという。

 その松山の激励を受け、彼女は自分のゴルフを全うした。メダル獲りのことは気にせず、ただひたすらいいスコアを出し、順位を気にしながらプレーした結果、あと少しで金メダル、というところまでネリー・コルダを追い詰めることができたのだ。

「私自身、あまり世界で戦った経験がないので、いまいち自分の立ち位置がわかっていないが、プレーオフをさせて頂いたリディア・コー選手や金メダリストのネリー・コルダ選手もすごい選手だということはわかっているので、その間に挟まれて本当にすごいことだな、と」

 世界の強豪と渡り合えた今回の経験があったとしても、海外挑戦は考えていないという。「時々メジャーにスポット参戦をすることはあっても、日本ツアーを主戦場にして日本のメジャーで優勝し、永久シード権を獲得することが目標だ」ときっぱり。稲見のブレない信念と技術力をもってすれば、これらの目標も近い将来、実現するに違いない。

日本女子代表の稲見萌寧(左)と畑岡奈紗。©️Eiko Oizumi
IGF(国際ゴルフ連盟)会長のアニカ・ソレンスタム。前週にアメリカで「全米シニア女子オープン」に出場してシニア初優勝。その直後に来日し、メダリストに花束を贈呈した。
互いのメダルを見せ合う3人。リディア・コーは前回の「リオ五輪」では銀メダルだった。

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