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絶好のライ、難しいライからうまく打つためのメンタル法

フェアウェイの絶好のライからのショットに限ってダフったり、トップしたり……
そんな経験はゴルファーなら誰にでもあるだろう。そして逆に、困難なライからに限って、うまく打てたりすることもある。今回は2打目以降のショットを成功させるメンタル法をジョー・ペアレントがアドバイス。

ミスした自分を受け入れる準備をしておく

 ドライバーでナイスショットし、フェアウェイキープできたら、あなたはどんなことを考えるだろうか? パー4だったら2オンを狙い、ピンそばにつけてバーディ、と考えるかもしれないし、あるいは逆にせっかくフェアウェイのいいところから打つのだから、ナイスショットを無駄にしたくない、と思うかもしれない。
 だが、残念ながら、どちらにしても、あまりいい結果は生まない。結果を深く考えすぎると、ナイスショットの妨げとなる恐れがあるからだ。結果をコントロールしようと緊張してしまい、ガチガチになってしまうし、ミスした結果を恐れるあまり、思い通りのスイングができなくなってしまう。ショットした結果、どのような結果になっても、それを受け入れる覚悟ができていれば、そして次にどんなショットが必要となるにせよ、その準備ができていれば、これから起こるどんなことにも対処できると思える。事前にどんなことも受け入れる覚悟ができていれば、ミスした結果を恐れるあまりに生まれる余計な緊張感を取り除くことができるのだ。

狙いは「一点」ではなく「エリア」で考える

フェアウェイからグリーンを狙うフィル・ミケルソン。狙いを定め、ミスしても危険な方向には打たないよう注意している。

 というわけで、結果を前もって想定しておくことは重要だ。なぜなら、ゴルフは確率の競技だからである。ナイスショットのチャンスが多くあると思うほど、思い通りにスイングしやすくなる。ここに最高のチャンスをつかむ秘訣がある。LPGAプレーヤーのクリスティ・カーが世界女子ランキング1位に上り詰めることができたのも、わずかな単語を使って教えたレッスンのおかげだ。

 ゴルフでは一点に狙いを定めて打つが、ある程度、幅をもたせてプレーしている。ボールやクラブをテストするためのロボットでさえ、分散パターンがあり、同じクラブで打ったショットがすべて同じ場所に着地するわけではない。あなたが極端な完璧主義者なら、狙った一点に正確にボールを運ばなければならないと考えるかもしれない。あるいは自分のスイングはダメだと考えている場合、体はガチガチに硬くなっているにもかかわらず、狙いの一点に向かって打とうとするかもしれない。だが、いずれの場合もほぼ確実に、悪い結果を招いてしまうのだ。

 つまり、ターゲットを定めるとき、安全にボールを運べるような、周りに十分なスペースがある場所を選ぶことが大事。池やバンカー、OBゾーンに近い場所に狙いを定めたいとは思わないだろう。点で狙うのではなく、エリアで狙えるように視野を広げることが大切だ。初心者ならなおさら「ここに行ってもOK」というエリアを大きめに取る必要がある。それで自身のショットが狙い通りの場所に行かないとしても、ターゲットとしたエリアに着地していれば、ナイスショットしたと考えることができるのだ。つまり、自分が打ちたい場所より大きなエリアをターゲットに想定するだけで、よりナイスショットを打つ確率も高まる! 自分のターゲット、そしてそのショットに対して最も信頼しているクラブを選んだら、次はショットの弾道をイメージしよう。

最高なライにもかかわらずミスする理由

フェアウェイにもアンジュレーションがあることが多い。写真はブルックス・ケプカのフェアウェイの左足下がりの傾斜地からの2打目。

 私は時々、上級者やプロからも「困難な状況から木越えで打ったり、重なり合った枝の下を抜いたりしながら、2つのバンカーの間を縫ってグリーンオンさせるなどの、驚異的なリカバリーショットを打つことができるのに、なぜフェアウェイのど真ん中から9番アイアンで普通に打って、グリーンを外してしまうというミスをしてしまうのか?」と尋ねられることがある。そういう時、私は次のように答えている。

「とてもまざまざと詳しくリカバリーショットの説明をしてくれましたね。ですが、『9番アイアンで普通に』という言葉では、何も具体的なイメージは出来ません! 打ちたいショットのイメージがあなたになければ、体はどのように動けばいいのかわからないし、頭の中にショットのイメージや、ボールにどう飛んで欲しいのかの感覚がなければ、クラブでどうスイングすればいいかという技術的な思考で頭がいっぱいになってしまうのです」

レフティであるP・ミケルソンの極端な右足下がりで、ラフからのショット。こういう状況では、普段フェアウェイから打つ以上に想像力を働かせる必要がある。

 つまり、自分の打ちたい球をイメージすることが必要なのだ。それがフェアウェイからの普通のショットだったとしても、自分が打ちたいショットのとても鮮明なイメージを思い浮かべること。軌道の高さや、ドローかフェードかの球筋、そしてボールがグリーンオンした際、どのような反応をするかも想像する。ボールがハネたり、コロがったり、カップインすることをも想像してみよう。また、自分の想像するイメージと、イメージ通りの結果を理想的に生み出すスイングを一体化させるため、いくつか「感覚的な素振り」をしたほうがいい。

自分が想像した通りのショットを打つために、潜在意識が体を自然と動かしてくれる

左足下がりのライからのショットでは、傾斜なりにヘッドを落とした方がいい。写真はイアン・ポールター。

 なぜ球筋をイメージすると、思い通りに打てるようになるのか?それは自分の潜在意識が、言葉ではないイメージに反応した時、その潜在意識によって体はうまく動くようにできているからである。ボールをどこに飛ばしたいかを、自分の心身システムにはっきりと示せば、そこに飛ばすために体のどこをどう動かせばいいのかについて心配する必要はないのだ。
 このことは、先ほど言った「着地エリアを想定すること」に反しているのではないかと言うかもしれないが、そうではない。着地エリアは、自分が事前に危険を回避するために想定しておくべきものだが、グリーン方向に飛んでいき、カップインするショットのイメージは、成功のビジョンであり、心身システムはそのビジョンをかなえるために最善のことを行なうものだ。だが一方でショット後、結果が思っていたのと異なるものとなってしまった時でも、精神的に受け入れられる練習をしておくことが大切だ。

そこで、以下の4段階のプロセスに全集中してみよう。
1.次打が困難な状態に陥るようなところに打つ危険性が高過ぎず、自分が望んだ場所に運べるようなターゲットを選ぶ。
2.そのターゲットに向かって打ちたいショットの良いイメージを持つ。
3.そのイメージ通りに打つためのスイングを感じる。
4.そのスイングに全力を注ぐ。ルーティーンからアドレスまでをスムーズに行ない、スイングの間に良いテンポを維持する。

 そのようなプロセスを踏めば、結果は自ずとついてくる。

中途半端な距離のショットは直感で、傾斜地からは本能に逆らって打とう

左足下がりのライから、グリーンを狙う松山英樹。

①中途半端な距離

 中途半端な距離を打つ時、複雑な計算に基づいたクラブ選択より、直感でいった方がうまくいく。それぞれのクラブで構えた時、自身の体の緊張度がどのように変わるのかを感じてみよう。何かしっくりこない、というクラブと、打ちやすさや安心感を感じるクラブと、どちらのクラブの方が自信を持ってスイングできるかを体が教えてくれるのだ。自分の直感を信じ、心身ともに打ちやすいと思えるクラブを選ぼう。

②左足下がり・ツマ先下がり

 私たち人間には、落ちないようにしようという本能が働くものだ。左足下がりのライやツマ先下がりのライで、足場よりもボールが下にある場合、バランスを保とうとする本能が働くが、実際これはショットにとってマイナスの結果を生むことになる。傾斜なりに打とうとせず、バランスを保とうと本能的に無意識のうちにカカト体重になり、あおり打ちになったり、手首を返してすくい打ちになってしまうのだ。このようなライでトップしやすいのはこのせいであり、球がスライスしやすいのは、足場より下にボールがあると、こすり打ちでスライス回転がかかるからだ。インストラクターの多くは、バランスを取りながら打つよう指導するだろう。だが、実際はフォローの時に「自分が落ちるように」スイングするようにアドバイスした方がうまくいく。そして姿勢を立て直し、実際に転倒しないよう後ろ足で踏み込む。ゲーリー・プレーヤーはこれを行なう名人だった。

③ディボット跡

 ゴルフは必ずしもフェアではない。すばらしいドライバーショットを打って、フェアウェイのど真ん中にボールが行っても、ディボット跡につかまることもあるからだ。インストラクターはディボット跡からはボールを打ち込むよう指導するが、ボールがディボット跡にハマっている場合、打ち込もうとするのは難しいことだ。だから、ボールをすくい打ちしてミスショットしてしまうのだが、ボールを脱出させるための精神的ないいイメージ法がある。それは、ディボットの手前から少しだけ深く長くヘッドを入れる、というものである。

1.ディボットの手前からヘッドを入れるために、インパクトからフォローにかけて、打ち込む。
2.ディボットの手前に焦中し、どのようにクラブがボールにコンタクトするかについて心配しない。

 こう考えることで技術的なことを考えすぎたり、打つのを躊躇することはなくなるだろう。
 こうした心理的なゲームのコツを利用することで、ショットに自信が持て、よりグリーンをとらえることができるようになり、スコアアップできるのだ。

Text/Joe Parent
Illustration/Masaya Yasugahira
Photo/Eiko Oizumi

ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿

Joe Parent(ジョー・ペアレント)
過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフ―メンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。

公式HP▶drjoeparent.com

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