“1棟丸ごと、エネルギー溢れる英国チームのもの!”
選手村で英国チームのアスリートの魂とエネルギーに触れた最高の1週間
ポール・ケーシー
普段のトーナメントでは感じられない特別なもの
今回、初めてオリンピックに参加したが、選手村での生活は素晴らしいものだった。今までに経験したことがないことばかりで、英国チームのメンバーは皆、素晴らしく、選手村に1棟丸ごと英国チーム用の宿泊施設があった。そこはアスリートたちの感情や魂、エネルギーに満ち溢れ、彼らが競技中にいいパフォーマンスをし、メダル獲得のためにベストを尽くすためのパフォーマンスロッジなどが完備されていた。優勝して金メダルを獲った選手もいれば、負けて悔し涙を流す選手もいて、そういう人たちを選手村ではたくさん見てきたが、そういう人たちを見るたびにいろんな感情が沸いた。何か特別な想いが頭をよぎったよ。それがオリンピックなんだな、と思った。
実は日本に来る途中の飛行機の中で、自転車競技の選手や陸上選手、マラソン選手たちと一緒になった。僕のキャディのジョニー〝ロングソックス〟は自転車競技のファンだから、すごく興奮して、早速連絡先を交換したり、トレーニング方法を聞いてたよ。たぶん選手たちもいい迷惑だっただろうね(苦笑)。
僕自身、メダルは獲れなかったのは残念だったけど、いろんなことを学んだし、良い経験を積むことができた。僕にとってはそれこそが「勝利」だ。日本で開催されたオリンピックの最終日、最終組でヒデキ(松山)と金メダリストのザンダー(シャウフェレ)とプレーできた。最高の1日だったよ。英国チームのためにも自分のためにもメダルを獲りたかったけど、選手村ではたくさんの友達もできたし、感謝してもし尽くせないほどの素晴らしい経験をすることができたんだ。
コロナ制限の中で日本食とショッピングを満喫
選手食堂ではいろいろなものが食べられるけど、僕は寿司を食べた。トミー(フリートウッド)はピザをたくさん食べたようだけどね。2019
年に「ZOZOチャンピオンシップ」で来日した時、台風でプレーできなかった日はホテルでずっと寿司を食べてたくらい好きなんだ。食堂はうまく機能していて、いくつかのメニューに人気が集中しているのを興味深く見ていたけど、僕は日本の食事がすごくいいと思ったね。シェフのクオリティも非常に高かったと思う。
子供たちに土産を買うため、ショッピングにも行った。「ミライトワ」と「ソメイティ」のキャラクターグッズも買ったよ。
選手村内には宿泊棟の他、食堂、トレーニングジム、宗教施設などがある(左写真)。選手村内は、トヨタ製の大型電気自動車「eパレット」で移動する(右写真)。
居住棟から見える晴海埠頭の景色。新型コロナウイルス蔓延で、観光は不可能だったが、宿泊施設の窓の向こうに広がる東京スカイラインを、少しは楽しめただろうか?
初めての五輪体験を満喫したポール・ケーシー。競技では、銅メダルを巡って7人のプレーオフが行なわれ、ケーシーもその1人として戦ったが、惜しくもメダルを逃した。
馬術の選手と相部屋だったメキシコのアンサー
英国チームの2人以外にも、選手村に宿泊していた選手は何人かいたが、その中の1人、メキシコのエイブラハム・アンサーは馬術の選手と相部屋だったという。
「最高だったよ。最初の夜以来、お互いのスケジュールが合わないから、ほとんどろくに会わなかったけど、おしゃべりしたりしているうちに、共通の知り合いがいたりして楽しかったね」
もともとコース近隣のホテルに宿泊する予定だったが、食事やトレーニングのことを考えると選手村の方がいいだろうと判断し、相棒のカルロス・オルティスとともに選手村に宿泊。選手村からコースまで1時間半ほどかかるのがネックだったものの、同じビルに宿泊するメキシコの選手たちと会話したり、ビルに掲げられている各国の国旗を窓から眺めるのは最高だったという。オルティスの部屋は4ベッドルームで、2つの風呂を共用。彼はボクシング選手と相部屋だった。
またアンサーは、選手村は「東京の小さい都市」のようだったと表現。理髪店やネイルサロンなど、ありとあらゆるものが揃っていたという。
バッハIOC会長が座っているのは、選手村に提供された「エアウィーヴ」のベッド。なんとフレーム部分の素材は「ダンボール100%」で、200kgの荷重にも耐えられる環境に優しいベッドなのだ。
選手食堂は2階建て。ビュッフェスタイルで、日本、欧米、アジア料理など世界中の食事が楽しめたという。24時間営業で、700種類のメニューを用意。
メインダイニングで提供されていたメニューの一例。豚のグリル、たらの香草ソテー、ヨーグルトなど栄養のバランスが取れた食事を提供。
Text/Eiko Oizumi