Text/Eiko Oizumi
Photo/PGA of America
昨年2月末に、交通事故で右足に重度の怪我を負ったタイガー・ウッズ。そのたった1年数か月後の「マスターズ」で復帰し、予選通過を果たしたことは世界中のゴルフファンに大きな衝撃と喜びを与えたが、その1か月後に開かれた「全米プロ」(オクラホマ州タルサ・サザンヒルズCC)では、「マスターズの時よりも、足が強くなってきた」とはいえ、まだまだ本調子ではなかった。
30度を超える猛暑の日もあれば、一気に10度前後に冷え込むこともあったサザンヒルズCCだが、3日目は冷たい風が吹き、気温も前日までとは打って変わって劇的に下がった。その影響もあってか、足をひきづるように歩くシーンも多く、ボギーも連発。予選通過を果たし、2日目を終えて53位からの発進となったタイガーは、3日目のラウンドを1トリプルボギー、7ボギー、1バーディの79で回り、「全米プロ」史上、自身ワーストスコアでホールアウトし、棄権した。メジャーでの棄権は、プロ転向後初の出来事だ(アマチュア時代に1回、1995年「全米オープン」で棄権している)。
「(足が)痛い。ちょっと手当てをして、どんな感じになるか様子をみるつもり」と3日目のホールアウト後に語っていたが、13ホール目までで10オーバーというスコアを考えると、足の痛みはもちろん、こんな調子でプレーを続けても思い通りのスコアにならないという精神的な打撃も大きかったのではないか。
「全然良いプレーができなかった。ボールをうまく打つこともできなかったし、良いスタートもきれなかった。2番で良いショットを打ったと思ったけど、結局これは池に入ってしまった。まったく勢いに乗ってゴルフをすることができなかった。ボギー列車から降りられなかったよ。何一ついいことがなかった」
そして気温の高かった予選ラウンド2日間も、決して足の痛みがなかったわけではなかった。グリーン上でラインを読むときにタイガーのヒザの回復度合いを見ることができるが、今もヒザを完全に曲げてラインを読むことはできない(以前、ヒザの手術をしたブルックス・ケプカも同じようなことがあった)。そんな彼が予選通過を果たす様子を同組でラウンドしていたローリー・マキロイは次のように語っている。
「毎ショット、彼は痛みを感じているんだ。タイガーは究極のプロだよ。昨日の彼の状態なら、僕だったら棄権して家に帰っていると思う。でもタイガーは違う。信じられないほどの回復力とメンタルタフネスの持ち主なんだ。途方もないくらい努力の人だよ」
なお、2002年「全英オープン」で記録した81が、タイガーのメジャーワーストスコアとなっている。