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【私の愛したゴルフコース】第16回レアルゴルフ・デ・ペドレニャ(スペイン)

世界のゴルフフォトグラファーの第一人者として今も第一線で活躍するデビッド・キャノン。

彼のファインダーを通して切り取られた世界のゴルフコースの数々は、まるで宝石箱のジュエリーのように一つ一つが個性豊かに輝いている。

私の愛したゴルフコース第16回はスペインのレアルゴルフ・デ・ペドレニャを紹介する。

Real Golf De Pedrena

©David Cannon (Getty Images)

サンタンデールの街を遠くに望む、海沿いのコース。湾内には、4本のマストが見事な、大きく美しいスペイン海軍練習船「フアン・セバスチャン・デ・エルカノ」が停泊していることもある。サンタンデール空港から、車で約20分。

レアルゴルフ・デ・ペドレニャ
●設計:ハリー・コルト、デビッド・ウィリアムズ
●全長:6340ヤード・パー70
●備考:1928年に9ホールのコースとしてオープン。
18ホールになったのは1992年。「スペインオープン」を3回開催。1975年には「アンダー25・スペインオープン」が開催され、17歳で地元のセベ・バレステロスが優勝。
https://www.realgolfdepedrena.com

セベの「精神」が宿るホームコース

レアルゴルフ・デ・ペドレニャ(以下RGDP)は、スペイン北部のカンタブリア海沿いの工業都市、ビルバオから西へ約90キロ行ったところの小さな漁村ペドレニャに位置している。
サンタンデール港から小型フェリーで10分ほど湾を渡ったところにあり、セベ・バレステロスがプレーを学んだRGDPは、そんな村のたもとにある。

伝説のゴルフコース設計者ハリー・コルトが設計したゴルフ場は、スペインに2つしかないが、RGDPは、そのうちの一つだ。
1928年に造られたこのコースは、コルトの設計の特徴をすべて備えている。
素晴らしいグリーンコンプレックス(グリーン周り全体のバランスや、グリーンが周辺全体との地形バランスにどれだけ溶け込んでいるかなどを示す用語)は、最近のコース改良を経てもなお、元々のレイアウトのクオリティを維持している。

1960年代後半、セベはキャディとしてゴルフを学んだRGDPを見渡す丘の上に住んでいたが、私は幸運にも彼を撮影する仕事で、何度もペドレニャを訪れることができた。
クラブハウスには、セベ専用の部屋があり、その快適な部屋に座って美しく飾られた彼の写真や記録を眺めるのは素晴らしいひと時だ。

1990年、彼はクラブに依頼され、ペドレニャとソモ村の間の河口沿いにもともとあった18ホールの隣にある壮大な土地に、9ホールのコースをもう一つ造った。
とても素晴らしいコースだが、このコースをまともにプレーできるゴルファーはおそらくセベ本人だけだろう。
距離は短いが難易度の高いレイアウトとなっている。

彼が丘の上に建てた素晴らしい家の庭からはRGDPや、少年時代、3番アイアン1本で小石を打ちながらゴルフを覚えたという、ソモ・ビーチの景色を360度見渡すことができる。
非常に美しく、穏やかな場所。セベが帰省するのが大好きだった理由が容易に理解できる。

さて今回は、スペインの障害者ゴルファー、ホアン・ポスティーゴ・アルセに会い、一緒にプレーする機会に恵まれた。
彼は、生まれつきの隻脚だが、現在、世界の障害者ゴルファーランキングで2位である。
RGDPはホアンのホームコースで、2022年6月、彼はクラブの終身名誉会員という栄誉を授かった。
ラモン・ソタ、セベ・バレステロスに次いで、約100年間で3人目だ。

バレステロスの自宅から至近の風光明媚なゴルフ場

サンタンデール

©David Cannon (Getty Images)

セベ・バレステロスが生まれ育ったペドレニャに位置するスペイン北部のゴルフ場。セベの自宅からは目と鼻の先。

©David Cannon (Getty Images)

クラブハウス内には、バレステロスの栄光を物語る勝利の軌跡が紹介されている。

©David Cannon (Getty Images)

世界障害者ゴルフランキング2位のホアン・ポスティーゴ・アルセのホームコースでもある。写真は8番ホール。

The spirit of Seve lives here
セベの精神が今も宿る場所

©David Cannon (Getty Images)

最近改修された名物ホールの10番パー3。深いバンカーに囲まれたグリーンに向かって正確なショットを放たないと、非常に難しいリカバリーショットが待っている。

高台からの美しい風景もRGDPの大きな魅力

RGDPは高低差があって、高台では海やスペイン北部の丘陵地帯の内陸部まで見渡せる素晴らしい景色が広がっている。
14番ホールは打ち下ろしで、グリーンの背後には、入江越しに、少年時代のセベが3番アイアンとボール代わりの小石でプレーを覚えたソモ・ビーチの砂嘴(さし)が見える素晴らしい景色が広がっている。
そしてその奥にはサンタンデール湾への入り口とフェリーポートを守る岬があり、この岬には、スペイン王室の夏の離宮であるマグダレナ宮殿が建っている。
毎日、イギリス南岸のポーツマスとの間を行き来する24便の大型フェリーの発着のほか、貨物船や、4本マストの見事なスペイン海軍練習船「フアン・セバスチャン・デ・エルカノ」も入港。
気持ちの良い晴れた日の朝、サンタンデール湾から出航するこの美しい船とそれを護衛する小型船の艦隊を見ることができたことは、私のゴルフコースの撮影における素晴らしい思い出のひとつだ。

スポーツの英雄が、フェアウェイを何度も闊歩した場所……セベの精神は、RGDPの歴史の一部として永遠に生き続けることだろう。

David Cannon デビッド・キャノン(イギリス)

海外メジャー100大会以上を取材し、現在も第一線で活躍中のゴルフフォトグラファー界の巨匠。自身もシングルハンデの腕前で、息子はプロゴルファー。アメリカ、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、アジアと世界各国を股にかけて撮影している。2022年、PGAオブ・アメリカ生涯功労賞を受賞。Getty Images所属。

Text & Photo/ David Cannon (Getty Images)

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