6月初旬に「PGAツアー、DPワールドツアー、PIF(サウジ政府系ファンド)の3社の和解・統合」が発表され、世界のゴルフ界を大いに驚かせたが、LIVゴルファーたちは一体どのように思っているのだろうか?
LIVゴルフリーグの重鎮、フィル・ミケルソンと、最強メンバーのダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカの考えを紹介する。
「LIVゴルフ・アンダルシア」の大会前記者会見でインタビューに答える、ダスティン・ジョンソン(左)、ブルックス・ケプカ(中央)、フィル・ミケルソン。
「ゴルフをしていて、これほどワクワクし、楽しいのは今までにないくらい。それも、LIVゴルフの持つチームという要素があるからだ。53歳の今でも、競技に出ることは本当に楽しいし、新しいエネルギーを与えてくれる」とミケルソン。
PGAツアーが恒常的に支配的な議決権を握りPIFは資金提供に徹する
6月末にPGAツアーとLIVゴルフに関する新たな内容が明らかになった。
両者の事業統合を巡り、PGAツアー、DPワールドツアー、PIF(サウジ系ファンド)が共同で立ち上げる新会社の経営権をPGAツアーが握り、サウジ系ファンド(PIF) は主要イベントや社会貢献活動への資金提供(数千億円)に徹することになった。
合意文書の中には「お互いの訴訟の取り下げや中傷発言を禁じる」内容も盛り込まれ、サウジ政府が抱える人権問題などへの批判も含まれると見られている。
PGAツアーとLIVの統合を巡り、米司法省も独占禁止法違反の疑いで調査に乗り出しているが、統合の枠組みでサウジ側が一歩引く形を取ることで、統合への批判を避け、イメージ改善につなげ、米当局の調査などをかわす狙いがあるようだ。
LIVゴルファーたちの思惑と今後
DPワールドツアーとLIVが統合ということになった今、「ライダーカップ」のキャプテンの座を辞して、LIVゴルフに移籍したヘンリク・ステンソンについてケプカは「残念なことが起こったと思う。開催までの3ヶ月で、LIVゴルファーの何人かがプレーできるといいが」と語った。
さて、このような事態になった今、LIVゴルファーたちは何を考えているのか?
また、PGAツアーや欧州ツアーに再び出場することができるようになるが、実際はどのように思っているのか?
スペイン・バルデラマで開催された「LIVゴルフ・アンダルシア」の大会前会見で、フィル・ミケルソン、ダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカの3名が記者の「実際、PGAツアーに戻りたいと思うか?」の問いに、次のように答えた。
「LIVに移籍した自分の決断にとても満足しているし、楽しんでいる。みんな楽しそうにやっているし、今の居場所に幸せを感じている。将来のことはわからないし、自分には何もコントロールできないが、今の居場所(LIV)に満足しているし、幸せだ」(B・ケプカ)
「今回の統合で、LIVはもっといいものになると思う。今の自分の居場所に非常に満足している」ダスティン・ジョンソン
兄弟のように仲のいいダスティン・ジョンソン(左)とブルックス・ケプカは、LIVゴルフに出ながら、メジャーにも出る、というスケジュールをとても気に入っている。
「今後が楽しみだ。今回の統合により、LIVはもっといいものになると思う。今でも十分素晴らしいけど。今の自分の居場所に満足しているし、(PGAツアーに出るために)今よりももっと試合に出たいとは思わない」(D・ジョンソン)
「ここ数年、グレッグやLIVのみんなによって語られてきたすべてのことについては、機が熟し始めているし、自分達がやっていることに自信を持っている。我々の立ち位置を公に発表する必要はないと思うがね」(P・ミケルソン)
また、「LIVゴルフはなくなるのでは?」の問いに対し、ミケルソンは「口で言うよりも、行動がものを言う。LIVがやっていることを見てくれれば、(なくなるのかどうかは)わかるはずだ」とコメントした。
そして「PGAツアーでプレーしたいか、したくないかというよりも、選手としての経験から言って、たくさんの困難なこと、挑戦に凄まじいほどのエネルギーを注入してきたが、これらはすべてLIVゴルフで解決、達成できたことだ。LIVでプレーする以上のシナリオは、他では見えない」と続けた。
つまり、今の時点では少なくとも、PGAツアー、チャンピオンズツアーでプレーしたいとは思っていないようである。
ジョンソン、ケプカの2人は将来、おそらく流れに任せてPGAツアーで何事もなかったかのようにプレーすることになるだろう。
だが、ミケルソンやガルシア、ウエストウッドらベテラン組の中には、LIVゴルフだけで満足、という選手もいる。
また人間関係の崩壊についても、ガルシアとローリー・マキロイの間で友人関係に終止符、と報道されたこともあったが、現在は仲直りして復活したそうだ。
ジャスティン・トーマス、タイガー・ウッズら反LIV派の選手達とLIVゴルファーたちとの和解も、徐々に見られることになるだろう。
今後の展開にも目が離せないが、逐次レポートしていく。
LIV Golf Andalucia
2023年6月30日〜7月2日
レアルクラブ・バルデラマ(スペイン)7010ヤード·Par71
個人戦優勝
テーラー・グーチ
ババ・ワトソン率いる「レンジゴーツGC」のメンバー、グーチが今季、個人戦3勝目を達成。
団体戦優勝
トルクGC
左からセバスチャン・ムニョス、ミト・ペレイラ、ホアキン・ニーマン(キャプテン)、デビッド・プイグ。
初のスペイン開催! 熱狂のバルデラマ
スペインゴルフの聖地・バルデラマは、セルヒオ・ガルシア(中央)にとってもゆかりの深い場所。この地で行われた欧州ツアーの試合にも優勝。バルデラマへのLIVゴルフ誘致に、一役買った。
テーラー・グーチ、今季3勝目
「最後のパットを打つ前から、入るのが視覚化できた」
テーラー・グーチの勢いが止まらない。
今年、アデレード大会、シンガポール大会で個人戦優勝を遂げていたレンジゴーツGCのテーラー・グーチが、またしても米国以外の地、スペインで優勝。
今季3勝目を飾り、優勝賞金4ミリオン(約5億8000万円)を獲得。
8試合を終えて、合計1337万6583ドル(約20億円・個人戦の賞金)を稼ぎ出し、賞金ランク2位のブルックス・ケプカを約6億7000万円ほど引き離してダントツ1位に君臨している。
「去年は全然勝てなかったから、今年は個人戦優勝に集中していたんだ。まさか3勝もできるとは思ってなかったけど、ここバルデラマで3勝目を挙げることができて最高だ」(グーチ)
なお2位にはブライソン・デシャンボー、3位にはブルックス・ケプカとメジャーチャンピオンたちが続いた。
そして今季3勝しているのはグーチだけではない。
ホアキン・ニーマン率いるラテン集団「トルクGC」が団体戦で3勝目を飾った。
2位は「レンジゴーツGC」、3位は「クラッシャーズGC」が入った。
Text/Eiko Oizumi
Photo/LIV Golf