ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!
深呼吸してリラックス!
どんなショットをしたいのかを頭の中で細かくイメージすることが大切
上級者やプロは、いつも決まった独自のプレショット・ルーティーンを持っているものだ。
このルーティーンを持っていることによって毎回同じように、ショットに臨むことができ、精神的にも安定する。
ショットの成否を決めると言ってもいい、大事な動きだ。
Joe Parent
(ジョー・ペアレント)
過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com
ナイスショットか否かはショット前に決まっている
ゴルフは、高度な精神集中が求められるスポーツである。
ゴルファーとしてコースで成功を収めるためには、ショット前のルーティン(プレショット・ルーティン)が重要であることは誰もが知るところである。
私たちはこのルーティンを活用して、今この瞬間に意識を置き、結果よりもプロセスに集中し、リラックスして流れるようなスイングを身につける必要があるのだ。
【プレショット・ルーティンの手順】
(1)第一のステップは、「深呼吸をして身体をリラックスさせる」ことから始める。
そうすることで、感じている緊張や不安を解き放ち、よりリラックスして集中できる状態に身を置くことができる。
(2)第二のステップは、「打ちたいショットをイメージする」。
これは、ボールの飛び方、弾道、そして着地点をイメージすることだ。
ショットを思い描くことで、実現したいことのイメージを膨らませることができ、コース内の避けたい場所ではなく、ボールの行き先というポジティブな目標に意識を集中させることができる。
(3)第三のステップは、「打ちたいショットを感じる」こと。
クラブがボールに当たる音やボールがクラブフェースから離れる感覚まで含めて、イメージどおりの意図したショットが打てそうなスイングを練習することである。
ショットを意識してスイングを感じることで、感覚的な体験ができ、メンタルイメージを強化し、ターゲットとの結びつきを強めることができるのである。
(4)第四のステップは、「ボールへのセットアップ」である。
これはつまり、スタンスを取り、クラブフェースをターゲットに合わせ、体をターゲットへのラインと平行に揃えること。
これで、ショットを実行に移す準備が整う。
(5)最後のステップは、「自分の準備を信じて、ショットを実行に移す」こと。
これはつまり、最後の深呼吸をし、ターゲットに集中し、滑らかで流れるようなスイングをすることである。
自分が行なった準備を信頼することによって、自信を持って全神経を集中したショットを打てる可能性を高めることができる。
こうしたプレショット・ルーティンは、心身の準備を強化することで、安定した再現性のあるスイングを身につけるのに役立つ。
ショットを打つ前に落ち着いた精神状態を作り、今、この瞬間に集中すれば、最高のパフォーマンスを発揮するのを邪魔するような、ネガティブな思考に気を取られることがない。
結果を気にするとナイスショットは生まれない
良いプレショット・ルーティンの重要な原則の一つは、「結果への執着を手放すこと」だ。
つまり、ショットの結果を気にするのではなく、ショットのプロセスに集中し、何が起こっても平静に受け止めることである。
以前、メジャーチャンピオンで世界ランキング1位の女子プロゴルファー、クリスティ・カーと仕事をしたとき、「自由で全神経を集中させたスイングができなくなってしまう主な原因は、結果を気にすることだ」と彼女は理解していた。
彼女は、結果を気にしているときは自分自身と戦っているような気がすると言っていたのだ。
それは、ショットのための準備のあるべき方向性とは正反対の感覚である。
結果に執着する気持ちを手放すことで、ポジティブな目標に集中し、自分のスイングを信じることができるようになるのだ。
呼吸と視覚を使って、今、この瞬間に意識を向け、集中を保つ。
そうすることで、緊張や不安を取り除くことができ、よりリラックスして自信を持ってパフォーマンスを発揮できるようになるというわけだ。
また、ラウンド中の逆境をハネ返し、勝負どころでプレッシャーがかかっても良いパフォーマンスを発揮できる精神力を身につけることができる。
ドライバー&アイアンショットだけでなく、
アプローチやパットも同様に、プレショット・ルーティーンを定着させる
安定した、再現性の高いスイングをするには、ショット前の準備(プレショット・ルーティン)に集中することが大切
アドレスに入る前の段階で、結果を心配したり、気にしてはダメ。どんなショットを打ちたいのかに集中することが大事。
【プレショット・ルーティンの活用】
「禅ゴルフ流・プレショット・ルーティン」をプレー時に取り入れるための、アイデアをいくつかご紹介しよう。
(1)ラウンド前のウォームアップでルーティンを練習する。
そうすることで、このステップに慣れることができ、コースに出た際に安定して再現性のあるルーティンを行なうことができる。
また、コースでショットを打つときのリズムをつかむのにも役立つ。
これは、練習場でボールを次々と打つリズムとは異なるものだ。
(2)重要だと思うショットだけでなく、すべてのショットでプレショット・ルーティンを行なうことが大切。
そうすることで、マインドフルネス(心配事や不安、他人からの評価など、つい頭に浮かんでしまうことを鎮め、「今」だけに集中できるような精神状態を意識的に作ること)と集中の習慣が身につき、ショートゲームやパッティングにも反映させることができるのだ。
(3)ポジティブな目標を選ぶようにすれば、結果を気にするよりも、一打一打のプロセスに集中しやすくなる。
(4)ルーティンをこなし、心身ともに準備を整えたら、より全神経を集中したスイングができるよう、自分の準備を信じることが大切である。
辛抱強く練習すれば、安定した再現性のあるルーティンを身につけることができ、ゴルフ場でより大きな成功を収め、ゴルフという競技をより楽しむことができるようになるのだ。
Illustration/Masaya Yasugahira
Photo/Getty Images