PGAツアー・DPワールドツアー・PIFの統合
LIVゴルフ14試合以外にPGAツアーやDPワールドツアーでプレーしたいか?
6月上旬にPGAツアー、DPワールドツアー、PIF(サウジ政府系ファンド・LIVゴルフを支援)の3者の統合が発表され、世界のゴルフ界を驚かせたが、LIVゴルファーたちも当然驚いた。
今後、LIVゴルファーが世界の2大ツアーに復帰できる道もできる予定だが、当のLIVゴルファーたちはいったいどう思っているのだろうか?
「LIVゴルフの試合+メジャーで十分」と言うベテラン勢
PGAツアー参戦は興味なし
基本的には、LIVゴルフの14試合+「マスターズ」だけでいいと考えているセルヒオ・ガルシア。
LIVゴルフ14試合+4大メジャーで十分だという、2022年「全英オープン」チャンピオンのキャメロン・スミス。
2016年「全英オープン」チャンピオンのヘンリク・ステンソンは、LIVゴルフ14試合+「全英オープン」+αに出たいという。
LIVゴルフ14試合とメジャー4試合に出場したいと2021年「全米プロ」チャンピオンのフィル・ミケルソン。
3者の統合が電撃発表されてから約3か月。
いまだに具体的な話が浮上してこないが、予測される取り決めの一つが、PGAツアー、DPワールドツアー(欧州ツアー)への復帰である。
なんらかのペナルティが課されるのでは?という憶測はあるが、これについても実際のところ定かではない。
LIVゴルフしか経験していない、トップアマ上がりのデビッド・プイグやジェイムス・ピオット、エウヘニオ・チャカラら若手の中には世界の2大ツアーに出てみたい、という選手もいるかもしれないが、すでにツアー転戦を10年以上経験してきた実力者やベテラン勢には、「LIVゴルフの試合とメジャーに出られればいい。PGAツアーには出たいとは思わない」と言う選手が多い。
フィル・ミケルソンはその代表的な選手で、その他、セルヒオ・ガルシア、リー・ウエストウッド、ヘンリク・ステンソン、グレアム・マクドウェルらもほぼ同じ意見。
ステンソンは、「私はもう47歳だ。今まで約25年間、欧米両ツアーのメンバーとして転戦してきたが、きちんと3か月のオフが取れて、自宅で休み、回復して、新鮮な気持ちで新しいシーズンを迎えられて本当に幸せだ。だからLIVの試合+1~2試合に出るくらいならいいが、PGAツアーの出場義務試合数15試合をこなさなければいけないなら、ツアーに出ることは考えない」と語っていた。
ダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカ、キャメロン・スミスらも「これ以上、試合数を増やしたくはない。LIV14試合とメジャーで十分」と言う。
ミケルソンは「LIVゴルファーでPGAツアーの試合に出たい選手は誰もいない」と方々で語っている一方、ガルシアは次のように述べている。
「クオリティの高いゴルフをし、家族や友人たちとの時間ができるだけ欲しいから、今のLIVゴルフのスケジュールで満足だ。ただ『ライダーカップ』やDPワールドツアーに出られないのは残念。これらの場所に戻れるといいが……」
「LIVゴルファーたちがツアーに戻ることが困難であってはならないと思う。ツアーに戻りたくなくても、それはその人の問題だ」
グレアム・マクドウェルが語るように「みんなはただ世界最高のフィールドで戦い、その名を残したいんだ」というのが、選手たちの本音だろう。
「ここ数年は私もメジャーには出られていないが、今年は『全米オープン』『全英オープン』の予選会に出た。プロだからもちろんお金を稼ぐことは大事だが、それだけではない。伝統やレガシーを追い求め、優勝トロフィーに名前を刻み、グリーンジャケットが欲しい」と語る。
選手たちの中にはすでに興味がない者もかなりいるようだが、ツアーとPIFとの取り組みで、ツアー復帰への道がどのように構築されるのかが、最大の焦点となるだろう。
ケビン・ナ、ダニー・リーが韓国へPR旅行
「韓国でLIVゴルフをやるために」
「グリーンブライヤー大会」で記者会見に応じた3人。左から、ホアキン・ニーマン(トルクGCキャプテン)、ケビン・ナ(アイアンヘッドGCキャプテン)、ダニー・リー。
アイルランドでLIVゴルフをやりたいと言うグレアム・マクドウェル。
今夏、ケビン・ナとダニー・リーの2人は韓国に行ったという。
その旅の目的は「韓国でのLIVゴルフ開催に向けて、LIVゴルフのPRとスポンサー集め」だったそうだ。アイアンヘッドGCのキャプテンを務めるナは、次のように語った。
「韓国のゴルフファンはまだまだLIVゴルフについての知識は浅い。それにLIVゴルフに関する記事は、海外の誰かが挙げた記事が翻訳されたものであり、直接LIVゴルフについて情報を持っている人がいないんだ。だから、一回韓国でLIVゴルフを開催すれば、韓国のゴルフファンを獲得できるだろう」
「ここ10年以上、韓国ではゴルフが盛んになってきており、男子にも女子にも、世界中で素晴らしいプレーをしている選手が大勢いる。(LIVゴルフの認知度も上がり)2025 年あたりにはたぶん、開催されるんじゃないかと思う」
今年、LIVゴルフはメキシコを皮切りにオーストラリア、シンガポール、スペインなどでも初開催し、大勢のギャラリーを集めて大成功を収めた。
グローバルに成長を遂げるLIVゴルフに今後も注目だ。
今年の「ライダーカップ」
ブルックス・ケプカだけが出場
今年、「全米プロ」でメジャー5勝目を飾ったLIVゴルファーのブルックス・ケプカ。米国チームの主将、ザック・ジョンソンのキャプテン推薦により、出場が決定した。
今号がちょうど発売される頃に「ライダーカップ」は開幕するが、LIVゴルフからは、今年の「全米プロ」チャンピオン、ブルックス・ケプカのみが出場することになった。
LIVゴルフでは、いくら活躍しても「ライダーカップ」に出場するためのポイントを稼げない。
そのためLIVゴルフイベントで3勝しているテーラー・グーチや、8月に「グリーンブライヤー大会」でLIV初優勝を遂げ、「全米プロ」4位タイ、「全米オープン」20位タイと今年のメジャーで上位に食い込んでいるブライソン・デシャンボーらも、ザック・ジョンソンからのキャプテン推薦で選ばれるしか、出場の方法はなかった。
「ライダーカップ」に12回出場したフィル・ミケルソンは、「テーラー・グーチは最高のパフォーマンスを見せているし、DJ(ダスティン・ジョンソン)やパトリック・リードも、『ライダーカップ』では非常に安定した成績を残している。DJは前回の大会で5連勝だ。私は誰を選ぶべきかの議論に加わりたくないし、ザックのことに首を突っ込みたくはないがね」と語っていた。
メジャーで優勝することで、現在の実力を証明したケプカだけが、ローマ大会に出場する。
だが、ザック・ジョンソンがLIVゴルファーを1人でも選んだことにより、今後の大会のあり方や選手選考方法などについては、大会後に議論がなされることだろう。
そして、3者の統合がなされれば、LIVゴルフにも、ポイントが加算されるようになり、2年後の大会では自力で出場できる選手が出てくるかもしれない。
Text/Eiko Oizumi
Photo/LIV Golf