世界のゴルフフォトグラファーの第一人者として今も第一線で活躍するデビッド・キャノン。
彼のファインダーを通して切り取られた世界のゴルフコースの数々は、まるで宝石箱のジュエリーのように一つ一つが個性豊かに輝いている。
私の愛したゴルフコース第22回はバンドンデューンズ・ゴルフリゾート シープ ランチを紹介する。
The Bandon Dunes Golf Resort Sheep Ranch
ペブルビーチに匹敵する高級ゴルフリゾート「バンドンデューンズ・ゴルフリゾート」。太平洋に面し、豪快なパノラマビューが広がっている。写真はシープランチコースの7番ホール・パー3(155ヤード)。
バンドンデューンズ・ゴルフリゾート シープ ランチ
●設計(改修):ビル・クーア&ベン・クレンショー
●全長:6636ヤード・パー72
●備考:シープランチコースは、バンドンデューンズの第5のコース。2000年にフィル・フリードマン、マイク・カイザーが設立し、トム・ドークとジム・アービナにより設計された。当初はフリードマンの私用のコースだったが、のちにビル・クーアとベン・クレンショーにより改修され、2020年にパブリックコースとしてオープンした。
北米パブリックリゾートコースのトップ3にランクイン
バンドンデューンズ・ゴルフリゾートは、1999年に「バンドンデューンズ」でオープンし、その後2001年には伝説的な「パシフィックデューンズ」が続いてオープン。
それ以降、リゾートはさらに3つの18ホールのコースを追加している。
「バンドントレイルズ」(2005年)、「オールド・マクドナルド」(2010年)、そして「シープランチ」(2020年)だ。
現在、このリゾートは北米の複合パブリックコース・リゾートのトップ3に堂々ランクインしており、「パシフィックデューンズ」は、アメリカで最も評価されているパブリックコースの一つとされている。
また、リゾートには全13ホールのパー3コース「バンドンプリザーブ」(2012年)もあり、2024年には19ホールのパー3コース「ショーティーズ」がオープンする予定だ。
「シープランチ」はもともと私有のコース
「シープランチ」は開業以来、急速に多くのファンを魅了し、すでに全米トップ20のパブリックコースとして、確固たる地位を築いている。
私は2005年以来初めてバンドンデューンズを訪れたが、オレゴン州南部の太平洋に面した場所にある、ベン・クレンショーとビル・クーア設計の傑作を見ることができ、とても興奮した。
オーナーのマイク・カイザー氏とビジネスパートナーのフィル・フリードマン氏のビジョンがなければ存在しなかっただろう。
「シープランチ」の敷地は、バンドンデューンズ・リゾートの一番端に位置し、2004年にフィル・フリードマン氏がゴルフ場設計家のトム・ドークとジム・アービナに依頼して13のグリーンを建設。
これらのグリーンは特定の順序でプレーされるものではなく、様々なティーグラウンドからプレーできるようになっており、フリードマン氏の家族やオーナーのマイク・カイザー氏の家族、そして特別に招待された友人たちがこのプライベートなゴルフ天国を楽しむことができるようになっていた。
2018年、フィル・フリードマン氏の友人であるコース設計家のビル・クーアが訪れたが、この時、フリードマン氏とマイク・カイザー氏に、彼らのプライベートなゴルフの聖地を手放し、より多くの人々に楽しんでもらうことを考えてみないかと尋ねた。
その後、クーアとベン・クレンショーは、新たな18ホールの設計を任された。
トム・ドークとジム・アービナによる元々の設計の一部を利用しつつ、完全に新しいゴルフコースを構築したのだ。
美しい景色を堪能したいなら「6月の憂鬱」に注意!
「シープランチ」は9ホールが太平洋に面している。その中には、息をのむほど美しい「ファイブマイル・ポイント」と呼ばれる場所の上にある、パー3の3番ホールと16番ホールのダブルグリーンもある。
今年の6月初旬に私はここを訪れたが、アメリカ北西部を訪れた過去の多くの旅行経験から、天候についてもっとよく知っておくべきだった!
「6月の憂鬱」として知られる海霧、しばしば海岸線を灰色のブランケットで覆う現象だ。
ただし、これはゴルフのプレー自体に影響することはなく、ただ晴天時に見ることができる美しい景色を覆ってしまうだけ。
また、風もプレーを難しくする要因となっているが、風が吹くと雲が晴れ、美しい景色を見るチャンスに恵まれる。
幸運なことに、私の訪問時、風が吹き、太陽が照りつける素晴らしい午後が1日あり、このコースの原始的な美しさを見ることができたのだった。
太平洋沿いの崖の上に佇むシープランチコースが2020年に誕生
10th Par4/390yard
自然のアンジュレーションを生かしたフェアウェイを見下ろす10番ホール。グリーンの右にボールを落とすと、マウンドの下に転がり落ちるようになっている。
18番ホールのグリーンに隣接する、バンドンデューンズのロッジ。人数や好みに合わせて6つのタイプの部屋から選んで宿泊することができる。
Oregon’s Golfing Utopia
オレゴンのゴルフ天国
崖の上に造られたバンドンデューンズ第5のコース、シープランチコース。太平洋の眺めが素晴らしい。
海からの風が難易度を高め、助けてもくれる
シーサイドゴルフには、様々なショットが求められる楽しさがある。
フォローの風ではドライバーが300ヤード以上飛ぶ一方、アゲンストの風では160ヤードしか飛ばないこともあるのだ。
このコースではゴルファーのあらゆる技術が求められるが、そのほとんどが風に対するものだ。
コースは、難しい打ち下ろしのパー5で始まる。
いつも西から吹いているアゲンストの風を受けながら進み、海辺にあるグリーンに到達する。
2番ホールは短いパー4で、「お椀を伏せた」ようなグリーンが特徴だ。
コースで一番短い3番ホールは、パー3の16番ホールと共有のダブルグリーン(2ホールで1つのグリーンを使用する)。これらのホールは「ファイブマイル・ポイント」の崖の上にあり、一見簡単に見えるが、実際は難しい。
コースで最も恐ろしいホールは、パー4の6番だ。
崖に沿って伸びる長いドッグレッグホールで、グリーンは砲台になっている。
ここはフェアウェイキープが重要。風はしばしば海から吹くが、この風のお陰でボールが崖から落ちるのを防いでくれることもある。
この難しいホールでパーを取れれば、ゴルファーとして満足だ。海岸沿いのホールを終えると、パー4の8番ホールで内陸に入っていく。
そこはゴースの茂みや、丘と窪地の起伏が広がり、スコットランドのリンクスゴルフを思い起こさせる。
16番ホールはシグネチャーホールだが、もう一つの素晴らしいホール、326ヤードの17番ホールに向けて心の準備をしよう。
ここは表示されている距離に惑わされないこと!このホールは左に崖を見ながら進み、2つの孤立した木々がある小さなグリーンに向かっている。
これらの木々はグリーンを美しく保護し、囲んでいる。
グリーンの後ろにあるゴースが茂る崖を越えて歩くと、クラブハウスの下にある、もう一つのボウル状のグリーンに向かう18番ティーに到着する。
この上りのパー5は、ティーショットを正確に打てれば、2オンのチャンスがあるが、グリーン手前のバンカーは危険なので、グリーンの側面や後ろの傾斜をうまく利用して、2打目をピンにできるだけ近づけるといいだろう。
ラウンド後は、クラブハウスのバルコニーでその日のラウンドを振り返りながらの一杯がごちそう。
私が訪れた日は夕方まで太陽が輝いていたが、プレー後にクラブハウス付近に座り、日没前の夕日によって浮き彫りにされた素晴らしいコースの起伏を眺めながら、ゴルフの楽園で完璧な1日の最後を飾ることができた。
Text & Photo/ David Cannon (Getty Images)
David Cannon デビッド・キャノン(イギリス)
海外メジャー100大会以上を取材し、現在も第一線で活躍中のゴルフフォトグラファー界の巨匠。自身もシングルハンデの腕前で、息子はプロゴルファー。アメリカ、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、アジアと世界各国を股にかけて撮影している。2022年、PGAオブ・アメリカ生涯功労賞を受賞。Getty Images所属。
Text & Photo/ David Cannon (Getty Images)