• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. トーナメントレポート >
  3. 【The Open】日本人の全英オープン 最高位は松山英樹の...

【The Open】日本人の全英オープン 最高位は松山英樹の13位タイ

今年の「全英オープン」には9名の日本人が出場し、松山英樹、星野陸也の2名が予選通過を果たした。
彼らのコメントから今大会を振り返る。

松山英樹

13位タイ(−3)

©Yoshitaka Watanabe

ロイヤルリバプールGCのクラブハウスをバックに3番ホールの2打目を放つ松山英樹。

1~2つスコアを伸ばせば、トップ10入りできるかと思ったが甘かった

松山英樹(右)、岩田寛(中央)、比嘉一貴(左から2番目)と練習ラウンドを行ない、最終ホールのリーダーズボード前で記念撮影。

©Yoshitaka Watanabe

大会前に一度帰国してから渡英した松山。「期待と裏腹な結果になっているので、あまり期待せずにできたら」と大会前に語っていた。

©Yoshitaka Watanabe

17番ホール・パー3の名物ホール「リトルアイ」には、グリーン手前に背丈以上に深いバンカーがある。

メジャーでは、大学の後輩の比嘉にアドバイスしたり、楽しそうに会話する姿が何度も見られた。

©Yoshitaka Watanabe

最終日、大雨の中で渾身のショットを放つ松山。

今年で9回目の出場を果たした松山。
「ロケットモーゲージ」で今季3回目の予選落ちをした後は、いったん帰国。
体のケアや調整(練習)を行ない、「かなりいい状態でここに来たが、来てみたら悪くなっている。練習日のうちにいい調整ができたらいい」と語っていた。

今年はこれまでのところ未勝利で、フェデックスカップランキング56位。
メジャーでは「マスターズ」16位タイ、「全米プロ」29位タイ、「全米オープン」32位タイと本人の思うような成績は残せてこなかったが、今大会は13位タイで終了。

「今週トップ10に入っていれば、再来週はスキップしようと思っていたが、(ポイントを稼ぐために)そういうわけにもいかなくなったので、(全英オープンから)6連戦しっかり戦い抜けるように頑張る。1つか2つ、伸ばせればトップ10に入れるかと思ったけど、そんな甘くはなかったですね」と語った。

「上位に行けそうな雰囲気が出てきた」という松山には、10年連続で最終戦「ツアー選手権」まで出場という偉業達成に期待がかかっていたが、その一つ前の「BMW選手権」出場までで終了。10年連続とはならなかった。

星野陸也

60位タイ(+7)

©Eiko Oizumi

子供の頃、憧れていたシュワーツェルにサインをもらい、ニッコリの星野。

©Yoshitaka Watanabe

LIVゴルファーのシュワーツェル(右)とラウンドする機会はメジャーだけ、という状況なだけに、貴重なラウンドとなった。

3回目の挑戦で、念願の予選通過
欧州ツアー転戦の経験が糧に

昨年はウェイティングリスト1位として初日を迎え、急遽欠場者が出たため、ドタバタで試合に臨んだ「全英オープン」だったが、今年は出場権を事前に得た上で現地入りし、しっかりコースチェックもできたという星野。
過去2回出場しているが、予選通過を果たせていなかっただけに、3度目の挑戦での通過に嬉しそうな表情を浮かべた。

「今週はより一層、気合が入っていたし、特に全英だけ予選通過できてなかったので、初日のプレーを課題にしていた。初日の後半からパッティングにいい手応えがあり、アプローチの距離感を掴んだ感覚があった。予選通過してよかった。心臓に悪い(笑)」

今年からDPワールドツアーメンバーとして、欧州を転戦しているが、そこで培った経験と技術、風の計算は今回の予選通過に活かされているという。
その上、嬉しいおまけもあった。

小学生の時に一番好きだった「マスターズ」チャンピオンのシャール・シュワーツェルと予選ラウンドを回ることになり、2日目のプレーを終えた時に、記念に写真を取り、帽子にサインをもらった。
「グータッチで励ましてくれたり、嬉しかった」と語った。

悪天候下の最終日にはトリプルボギーを2回叩き、6つスコアを落として60位タイに。
「今までで1位」というほどの風雨にさらされながら、風の計算に苦労した。「ゴルフがより楽しくなってきた」という星野は、欧州ツアーの最終戦「DPワールドツアー選手権」出場に向けて、ギアアップしていく。

安森一貴&平田憲聖

予選落ち

©Eiko Oizumi

練習ラウンドの途中で、突然乱入した(?!)トニー・フィナウ(中央)と記念撮影。「大きくて、優しかった」(平田・右)

©Eiko Oizumi

憧れのローリー・マキロイのプレーを見て興奮する安森。

「ミズノオープン」で出場権を獲得した2人の初のメジャー体験

平田と安森にとって、初の海外メジャー挑戦となった「全英オープン」。
実際に会場に来てみると、ギャラリー数に圧倒され、憧れの世界のトッププレーヤーたちを目の当たりにして嬉しそうだった。

「海外でゴルフをするのは初めて。海外ゴルフがいきなりメジャーというのもすごいけど、メジャーはギャラリーが練習ラウンドからたくさんいて、毎ホール話しかけられました。楽しいですね」(安森)

「大会の規模も、ギャラリー数もすごい! 22歳だが、こんなに早くメジャー出場が叶うとは思ってなかった。4日間戦い、自分のゴルフを全て出し切りたい」(平田)

だが、平田は2日目に81を叩き、通算14オーバー。
安森はわずか1打足りず、通算4オーバーで予選落ちに終わった。

金谷拓実

予選落ち

©Yoshitaka Watanabe

予選ラウンドは、「全英オープン」チャンピオンのアーニー・エルス(右)とラウンド。ショットの合間には会話も弾んだ。

©Eiko Oizumi

ナショナルチーム時代(アマチュア)から、指導を受けるガレス・ジョーンズコーチも同行し、ショートゲームをチェック。

オマーンでの優勝を自信に臨んだ4度目の「全英オープン」

今年の2月にアジアンツアー「インターナショナルシリーズ・オマーン」で2年ぶりの優勝。
国内でも「BMW日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ」でメジャー優勝を遂げ、自信を取り戻した金谷が、自身4度目の「全英オープン」に挑戦した。
「自信を持って、自分らしいプレーをしたい」と終始コメントしていた金谷だが、2日目は4ボギー、1ダブルボギー、1トリプルボギーの80を叩き、通算11オーバーで予選落ちを喫した。

国内男子ツアーでは、中島啓太と賞金王争いを繰り広げる金谷。
シーズン後半は、賞金王獲りに向けてラストスパートをかける。

中島啓太

予選落ち

©Yoshitaka Watanabe

かつて世界アマチュアランキングで1位の座についていた中島啓太(左)と金谷拓実(中央)がともに練習ラウンド。今でもよきライバルであり、親友だ。

本当に悔しい! またリベンジしたい

アマチュア時代、このロイヤルリバプールで行なわれた「デューク・オブ・ヨークヤング選手権」に出て2位に入賞した経験がある中島が、プロになって再びこの地に足を踏み入れた。
昨年は、アマチュアとして最後のメジャーに挑んだが、予選落ちに終わっただけに、リベンジしたいという気持ちはひとしお。
特に今年は国内ツアーの賞金ランキング1位として乗り込んできただけに、自身への期待もあっただろうが、通算6オーバーと、3打足りずに予選落ちに終わった。

「本当に悔しい。(2日目の)前半も2回、アンプレヤブルにもかかわらずセーブできて、流れを切らさずに15番のバーディまで持って行けたが、耐えきれなかった。予選ギリギリで追い込まれても、しっかりいいショットを打てるような技術と精神力を持ちたい。またリベンジしたい」と心に誓った。

蟬川泰果

予選落ち

©Eiko Oizumi

2014年の「全英オープン」で松山英樹のバッグを担いだ、東北福祉大の先輩でもある進藤大典氏(右)がキャディを務めた。

4大メジャー制覇への第一歩

アマチュア時代に「日本オープン」で95年ぶりのアマチュア優勝を果たし、「パナソニックオープン」でも優勝して日本のゴルフ史上初のアマチュア2勝を達成した蟬川。
今シーズンは「関西オープン」でプロ初優勝を飾り、「全英オープン」で初メジャー参戦となったが、結果は予選落ちに終わった。

「どんな結果でも一皮むけるんじゃないかと考えている。それがさらに結果が出れば、もう一皮むけると思うので、この試合はすごく楽しみ」

大会前にそう語っていた蟬川は練習ラウンドでアダム・スコットと回り、自身の課題であるショートゲームのアドバイスをもらった。

「自分には4大メジャーを制覇したいという夢がある。夢は大きいが、今回はそのスタートラインかな、と思ってます」

実際、試合でプレーしてみると、「ショートゲームの技術が足りない」と実感。
これまで短期間に日本ゴルフ史を書き換える活躍をしてきた蟬川が、世界の舞台で活躍するために必要な課題を新たに突きつけられたようだ。

比嘉一貴

予選落ち

©Eiko Oizumi

報道陣のインタビューに答える比嘉。

今までのゴルフ人生で間違いなく収穫のある1年

昨年、セントアンドリュースでの「全英オープン」でメジャーデビューを果たした比嘉。
今年は「マスターズ」「全米プロ」に続き、メジャー3試合目となるが、DPワールドツアー(欧州ツアー)メンバーとして欧州で戦うことも多く、対応できることも増えてきた。

「徐々に生活にも慣れて……まだ1人では心細く、生きていけるかどうかって感じですが(笑)、神田さん(キャディ)の力だったり、みなさんのサポートがあって、去年よりは不安なく過ごしているので、生活面ではすごく充実している。芝や環境に対応できるようになってきたという手応えは感じている。今週は粘り強くいけるんじゃないかな、という期待は前回よりもある」

毎日の目標を「アンダーパーで回る」としたが、それが逆にプレッシャーとなることもあったようで、通算6オーバーで予選落ちを喫した。

「今までのゴルフ人生の中で、間違いなく収穫のある1年。痛いほど叩きつけられたが、やりがいが多い」と語り、コースを後にした。

O嬢日記@ロイヤルリバプール

リバプールから電車通勤できる「全英オープン」

©Eiko Oizumi

TV解説を務めた佐藤信人(左)とO嬢。

地名の「ホイレーク」と呼ばれることも多い、ロイヤルリバプールGCのクラブハウス。1869年にオープンした、歴史ある名門コースだ。

リバプールといえば、ビートルズ誕生の地。街中には銅像や、ビートルズゆかりのパブなどがあり、大勢の観光客が訪れている。

ホイレーク駅が、ロイヤルリバプールの最寄駅。駅から徒歩5分のところにある。

電車内の雰囲気。観客や関係者たちが、毎日この交通機関を多数利用したが、それに対し鉄道会社は便数を増やし、ホイレーク駅を終点に(実際はあと1駅あるが、その部分はバスでピストン輸送した)。

今大会の開催地「ロイヤルリバプールGC」は別名「ホイレーク」と呼ばれ、今年で13回目の「全英オープン」開催となった。
1869年にオープンし、球聖ボビー・ジョーンズが1930年にグランドスラム達成したうちの1試合がこの地で開催された「全英オープン」だったのだ。

私は以前一度だけ、このコースをプレーしたことがあるが、クラブハウス内にはボビー・ジョーンズを始め、数々の歴史的な写真やトロフィー、記念品が飾られていたのを思い出す。
「全英オープン」開催コースをプレーする機会などは通常ないので、そのぶんこのコースへの愛着も強い。

さて、ビートルズ誕生の地リバプールからほど近いこのコースへは、毎回電車通勤することにしている。
リバプールの街中の方がホテルや飲食店がたくさんあり、電車に乗っても20分ほどの旅だからだ。
リバプール市街の「ジェイムスストリート駅」から乗車し、「ホイレーク駅」までの20分の電車の旅。
実は、「ホイレーク駅」は終点ではないのだが、練習場はゴルフ場の敷地外にあり、線路を渡って向こう側という立地条件のため、線路が大会用につぶされ、「ホイレーク」の先の駅への電車は大会期間中、運行していなかった(バスでピストン輸送のみ)。
そんな特別措置を取りながら、会場への公共交通機関での移動は非常にスムーズだった。
時間帯によっては非常に混雑しているが、とても快適に移動ができたのである。

そして来年の「全英オープン」は、グラスゴーから車で1時間ほどのロイヤル・トゥルーンで開催される。
大会期間中であれば渋滞で2~3時間かかる場合もある場所だ。
市街地が近いロイヤルリバプールとは異なり、コースの周囲にはほとんど何もなく、ホテルは非常に高額か、既に満室である。
電車もあるが、トゥルーンの前には駅はない。特別に駅が設置されるなら別だが、どうしたものか……来年の移動手段が、今から心配な「全英オープン」である。

関連する記事