過去30年で、欧州チームが10勝5敗と6割以上の勝率!
2年前の米国開催ウィスリングストレーツのリベンジ!
2021年、米国ウィスリングストレーツで行なわれた「ライダーカップ」で10点差をつけられ、屈辱の敗戦を経験した欧州チームが今年はホームのイタリアで、5点差で勝利。2年前のリベンジを果たした。
LIVゴルフの発足などで、特にその煽りを受けた欧州チームだったが、今年の勝因は何だったのだろうか?
2年に一度行なわれる世界最大のゴルフの祭典「ライダーカップ」。
今年はイタリア・ローマで初めて開催され、欧州チームが米国チームに5ポイント差で優勝した(欧州16・5 :米国11・5)。
欧州の地で開催された同大会で、欧州チームは1997年大会以来、26年間負けなしの記録を更新中だ。
3日間開催の「ライダーカップ」で、最初の2日間はフォーサム(同チームの2人が1つのボールを交互に打つ)・フォーボール(同チームの2人がそれぞれのボールを打ち、いい方のスコアを選択)形式のセッションが、それぞれ8セッションずつ行なわれる。
初日のフォーサムでは欧州が全勝(4勝0敗)。
午後のフォーボールでも欧州が1勝3引き分けと、負けなし。
初日にして欧州6・5:米国1・5と5ポイントの差がついた。
2日目の午前中のフォーサムでは、ようやく「全英オープン」チャンピオンのブライアン・ハーマン&マックス・ホーマの米国組が1勝を挙げ、1ポイントを獲得したが、それ以外の3マッチは全て欧州が勝利。
過去、米国で開催された「ライダーカップ」や「プレジデンツカップ」で鉄壁コンビのザンダー・シャウフェレ&パトリック・キャントレー組も、ジョン・ラーム&ティレル・ハットン組に2&1で敗北。
また、ビクトル・ホブラン&ルドビグ・オーバーグという北欧若手組は、世界ランク1位のスコッティ・シェフラー&メジャー5勝のブルックス・ケプカという最強コンビを相手に9&7という歴史的なスコアで大勝利を果たすなど、勢いは止まらなかった。
なお、9&7とは、7ホールを残して9アップの意味だが、この記録は「ライダーカップ」のどの試合形式においても、史上最高の記録である(18ホールマッチにおいて)。
全セッション28ポイント中、14・5を獲得すれば優勝が決まる中、2日目までのセッションを終えて、欧州は最終日に4ポイントを獲得すればいいだけの展開になった。
欧州のルーク・ドナルド主将と副主将でデータ分析担当のエドワルド・モリナリの采配が、非常にうまく機能し、成功していた。
E・モリナリは、ビクトル・ホブランが個人的にデータ分析を依頼しているほど信頼が厚く、モリナリの分析なくしては、今年の「フェデックスカップ」総合優勝を果たせなかったほどだ。
2日目のセッションを終え、欧州10・5:米国5・5で迎えた最終日のシングルス戦(12マッチ)は、両者互角の戦いとなった。
1組目から欧州は世界ランク3位でガッツ溢れるプレーぶりが特徴のジョン・ラームを起用し、世界ランク1位のスコッティ・シェフラーと対戦。
ここで勝って勢いをつけたかったところだろう。
ドナルドはジョン・ラームと、2組目のビクトル・ホブランという今年の「フェデックスカップ」総合優勝者を揃え、早めの段階で勝利を決めたかったはずである。
だが、米国チームも負けてはいられない。一時、スコアボードが米国チームを表す赤色で染まったこともあったが、終わってみれば欧米ともに6ポイントを獲得し、5ポイント差で欧州の優勝となった。
優勝を決めたのは、11組目のトミー・フリートウッドだった。
「本当はこんなに後ろの方の我々のところまで勝負が回ってきて欲しくなかったけど……このチームのメンバーでいられて誇りに思う」
2021年、米国ウィスコンシン州のウィスリングストレーツで行なわれた際は、コロナウイルス感染流行のため、欧州からの応援客が非常に少なく、完全アウェーの状態。応援に負けたようなところもあった。
しかし今回は、イタリア開催ということで、欧州チームにとってはホーム。
声援のボリュームから判断する限り、欧州の観客が7割、米国の観客が3割といった感じだった。
「彼ら(欧州チームを応援する観客)は最高だ。毎日応援してくれて、応援が必要な時は、いつもそこにいてくれた。彼らにとってもこの瞬間が人生の思い出となることだろう」(フリートウッド)
「家族のような絆」が、欧州チームの伝統
伝統を継承しつつ、新生・欧州チームを
創り出したルーク・ドナルド
表彰式でルーク・ドナルドは、「あともう1回キャプテンをやって!」とマキロイたちから言われていたが、それに対して彼は明言を避けた。
しかし、今回のルーク・ドナルドの活躍は、欧州チームのカップ奪還に計り知れない影響を与えた。
彼は声高に何かを強く主張するタイプではないが、選手たちを信じ、冷静に判断し、温厚で親しみやすい性格の持ち主。
彼の長所が生きた結果、まとまりのある温かい家族のような雰囲気を作り出すことができたようだ。
これは欧州チームの昔からの伝統でもある。
「言葉が必要ではないこともあると思う。このチームには新顔もいるし、もういない選手もいる。今回のメンバーは、自分達の歴史を新たに創るチャンスがあることを理解している」とドナルドは語っていた。
セルヒオ・ガルシア、イアン・ポールター、リー・ウエストウッドら「ライダーカップ」のレジェンドたちがLIVゴルフに移籍したことで、雰囲気はガラッと変わってしまったが、それでも、家族のような温かいムードの欧州チームの伝統を守りつつ、新しいフェーズに入っていると、欧州の選手としては最年長のジャスティン・ローズも語っていた。
ヘンリク・ステンソンがLIVゴルフに移籍したことで、急遽キャプテンに就任したドナルドは、LIVゴルフのガルシアたちとは今も連絡を取っており、人間関係は変わっていないようだ。
きっとこの1年はLIVの欧州メンバーや、ローリー・マキロイ、ジョン・ラームらとのやりとり、DPワールドツアーとの打ち合わせなどもあり、大変な気苦労も多かったことだろう。
2年前の惨敗を副キャプテンとして見ていたドナルドが、さまざまな困難を乗り越えて、ローマでリベンジを果たしたのである。
2023 ライダーカップ全成績
ヨーロッパ:16.5 アメリカ:11.5
●1日目 フォーサム
(1チーム2人で1つのボールを交互にプレー)
欧州4勝:米国0勝
★J・ラーム&T・ハットン 4&3 S・シェフラー&S・バーンズ
★V・ホブラン&L・オーバーグ 4&3 M・ホーマ&B・ハーマン
★S・ローリー&S・ストラーカ 2&1 R・ファウラー&C・モリカワ
R・マキロイ&T・フリートウッド 2&1 X・シャウフェレ&P・キャントレー
●1日目 フォーボール
(1チーム2人でそれぞれ自分のボールでプレー、いい方のスコアを採用)
欧州1勝:米国0勝 3引き分け
V・ホブラン&T・ハットン 引き分け J・トーマス&J・スピース
J・ラーム&N・ホイガード 引き分け S・シェフラー&B・ケプカ
R・マッキンタイヤー&J・ローズ 引き分け M・ホーマ&W・クラーク
★R・マキロイ&M・フィッツパトリック 5&3 C・モリカワ&X・シャウフェレ
●2日目 フォーサム
欧州3勝:米国1勝
★R・マキロイ&T・フリートウッド 2&1 J・トーマス&J・スピース
★V・ホブラン&L・オーバーグ 9&7 S・シェフラー&B・ケプカ
S・ローリー&S・ストラーカ 4&2 M・ホーマ&B・ハーマン★
★J・ラーム&T・ハットン 2&1 P・キャントレー&X・シャウフェレ
●2日目 フォーボール
欧州1勝:米国3勝
V・ホブラン&L・オーバーグ 4&3 S・バーンズ&C・モリカワ★
T・フリートウッド&N・ホイガード 2&1 M・ホーマ&B・ハーマン★
★ J・ローズ&R・マッキンタイヤー 3&2 J・トーマス&J・スピース
M・フィッツパトリック&R・マキロイ 1UP P・キャントレー&W・クラーク★
●最終日 シングルス
欧州5勝:米国5勝 2引き分け
J・ラーム 引き分け S・シェフラー
★V・ホブラン 4&3 C・モリカワ
J・ローズ 2&1 P・キャントレー★
★R・マキロイ 3&1 S・バーンズ
M・フィッツパトリック 1UP M・ホーマ★
★T・ハットン 3&2 B・ハーマン
L・オーバーグ 3&2 B・ケプカ★
S・ストラーカ 2UP J・トーマス★
N・ホイガード 3&2 X・シャウフェレ★
S・ローリー 引き分け J・スピース
★T・フリートウッド 3&1 R・ファウラー
★R・マッキンタイヤー 2&1 W・クラーク
※★が勝利
◉なんでもランキング
1)平均年齢 米国30歳/欧州30歳
2)世界ランキング平均(カッコ内はトップの選手)
米国12.92位(1位スコッティ・シェフラー)/欧州29.25位(2位ローリー・マキロイ)
3)ルーキー数 米国6人 : 欧州3人
4)米国トップ3(S・シェフラー、P・キャントレー、X・シャウフェレ)で3勝7敗2引き分け
欧州トップ3(R・マキロイ、J・ラーム、V・ホブラン)で9勝2敗2引き分け
5)スコッティ・シェフラーは、世界ランク1位で、初の勝ち星なしの選手に
6)欧州開催の過去7試合で欧州全勝
欧州で米国が優勝して30年経過
◉ライダーカップヒストリー
1927年 | 米国9.5 : 英国2.5 | ウースターCC(米) |
1929年 | 米国5 : 英国7 | ムーアタウンGC(英) |
1931年 | 米国9 : 英国3 | サイオトCC(米) |
1933年 | 米国5.5 : 英国6.5 | サウスポート&アインズデールGC(英) |
1935年 | 米国9 : 英国3 | リッジウッドCC(米) |
1937年 | 米国8 : 英国4 | サウスポート&アインズデールGC(英) |
1947年 | 米国11 : 英国1 | ポートランドGC(米) |
1949年 | 米国7 : 英国5 | ガントンGC(英) |
1951年 | 米国9.5 : 英国2.5 | パインハーストリゾート(米) |
1953年 | 米国6.5 : 英国5.5 | ウェントワースGC(英) |
1955年 | 米国8 : 英国4 | サンダーバードランチ&CC(米) |
1957年 | 米国4.5 : 英国7.5 | リンドリックGC(英) |
1959年 | 米国8.5 : 英国3.5 | エルドラドCC(米) |
1961年 | 米国14.5 : 英国9.5 | ロイヤルリザム&セントアンズ(英) |
1963年 | 米国23 : 英国9 | イーストレイクGC(米) |
1965年 | 米国19.5 : 英国12.5 | ロイヤルバークデールGC(英) |
1967年 | 米国23.5 : 英国8.5 | チャンピオンズGC(米) |
1969年 | 米国16 : 英国16 | ロイヤルバークデールGC(英) |
1971年 | 米国18.5 : 英国13.5 | オールドワーソンCC(米) |
1973年 | 米国19 : 英国アイルランド連合13 | ミュアフィールドGC(英) |
1975年 | 米国21 : 英国アイルランド連合11 | ローレルバレーGC(米) |
1977年 | 米国12.5 : 英国アイルランド連合7.5 | ロイヤルリザム&セントアンズ(英) |
1979年 | 米国17 : 欧州11 | グリーンブライヤー(米) |
1981年 | 米国18.5 : 欧州9.5 | ウォルトンヒースGC(英) |
1983年 | 米国14.5 : 欧州13.5 | PGAナショナル(米) |
1985年 | 米国11.5 : 欧州16.5 | ベルフライ(英) |
1987年 | 米国13 : 欧州15 | ミュアフィールドビレッジGC(米) |
1989年 | 米国14 : 欧州14 | ベルフライ(英) |
1991年 | 米国14.5 : 欧州13.5 | キアワアイランドGR(米) |
1993年 | 米国15 : 欧州13 | ベルフライ(英) |
1995年 | 米国13.5 : 欧州14.5 | オークヒルCC(米) |
1997年 | 米国13.5 : 欧州14.5 | バルデラマGC(スペイン) |
1999年 | 米国14.5 : 欧州13.5 | カントリークラブ(米) |
2002年 | 米国12.5 : 欧州15.5 | ベルフライ(英) |
2004年 | 米国9.5 : 欧州18.5 | オークランドヒルズGC(米) |
2006年 | 米国9.5 : 欧州18.5 | Kクラブ(アイルランド) |
2008年 | 米国16.5 : 欧州11.5 | バルハラGC(米) |
2010年 | 米国13.5 : 欧州14.5 | ケルティックマナーリゾート(英) |
2012年 | 米国13.5 : 欧州14.5 | メダイナCC(米) |
2014年 | 米国11.5 : 欧州16.5 | グレンイーグルスリゾート(英) |
2016年 | 米国17 : 欧州11 | ヘーゼルティンナショナルGC(米) |
2018年 | 米国10.5: 欧州17.5 | ル・ゴルフナショナル(フランス) |
2021年 | 米国19 : 欧州9 | ウィスリングストレーツ(米) |
2023年 | 米国11.5 : 欧州16.5 | マルコシモーネG&CC(イタリア) |
米国27勝 : 欧州15勝