金メダルを獲っても、軍事訓練とボランティア活動は必須の韓国男子
金メダルを獲得すると韓国男子が得られる特典
「長い1週間だった。今後はPGAツアーで長年にわたって成功したいと思う」(イム・ソンジェ)
10月1日、中国浙江省杭州にあるウエストレイク・インターナショナルゴルフコースで、韓国男子ゴルファー4人が表彰台の頂点に立った。
プロゴルファーのキム・シウーとイム・ソンジェ、アマチュアのチョ・ウヨンとチャン・ユビンの4人である。
彼らは2023年杭州で開催された「アジア大会」でゴルフ男子団体・金メダルを獲得した。
韓国の男性は兵役を義務付けられており、それに例外はないが、スポーツ選手にはチャンスがある。
夏季・冬季「オリンピック」や「アジア大会」などの大きなスポーツイベントでメダルを獲得すると、兵役に関する特典が与えられるのだ。
その特典を得るには、「オリンピック」では銅メダル以上、「アジア大会」では金メダルでなければならない。
それは、兵役免除ではない。
正確には、芸術&体育要員と呼ばれているのだが、4週間の基礎軍事訓練と、544時間の体育分野でのボランティア活動を34か月間行なわなければならないのだ。
「兵役免除」ではなく、「代替勤務制度」だと考えればわかりやすいだろう。
兵役の代わりの「代替勤務制度」とは?
イングランド・プレミアリーグ(EPL)トッテナム・ホットスパーのキャプテン、ソン・フンミンも同様だ。
ソン・フンミンは2018年「ジャカルタ・パレンバン・アジア大会」のサッカー決勝戦で金メダルを獲得し、芸術&体育要員となった。
彼は2020年、済州海兵隊第9師団に入隊し、基礎軍事訓練を受けた。
海兵隊の軍事訓練は3週間で、4週間ではない。
当時、ソン・フンミンは特殊射撃選手として賞を受賞した。 彼は銃を撃つのも上手かったのだ。
兵役の代わりに、たった3週間の訓練を受けることで、ソン・フンミンは今もEPLで得点王やキャプテンとして成功している。
もし彼が兵役で1年半を無駄にしていたら、今頃どんな結果になっていただろうか。
これはゴルフでも同じことが当てはまる。
べ・サンムン、ノ・スンヨル、イ・サンヒなど有名選手は兵役に就いたが、その後本来の実力を取り戻せていない状況が続いている。
「アジア大会」で韓国人選手4人が金メダルを目指したのも、まさにこれが大きな理由だったのだ。
イム・ソンジェ、キム・シウーに追い風の「参加資格」変更
最近、アジアオリンピック評議会(OCA)は、「アジア大会」のゴルフ部門への参加に関するガイドラインを変更した。
それによって、以前はアマチュアだけが参加することが許されていたこの大会に、プロゴルファーも参加できるようになった。
そこで、韓国ゴルフ協会(KGA)は新しいガイドラインに沿って参加基準を設定。
プロゴルファーは男子の世界ランキング(OWGR)と女子ゴルフの世界ランキング(ロレックスランキング)に基づいて決定され、アマチュアはKGAアジア大会国代表選抜戦を通じて選出されることになったのだ。
2022年「アジア大会」を前に、キム・シウー、イム・ソンジェ、チャン・ユビン、チョ・ウヨンが選ばれた。
しかし、 昨年開催が予定されていた「アジア大会」は1年延期された。
その間、トム・キム(キム・ジュヒョン)が彗星のごとく現れ、PGAツアーで2勝をマーク。
OWGRも韓国人ゴルファーの中で最高となった。
しかし昨年末、KGAは出場者リストをそのまま維持すると発表。
トム・キムにとっては残念な瞬間だった。
韓国の他の競技では代表選手を再選したが、ゴルフはその出場者リストをそのまま維持したのだ。
トム・キムはKGA代表出身ではなく、フィリピンやタイなどに居住しながら、アジアンツアーなどでその名を知られるようになった。
一方で、キム・シウー、イム・ソンジェ、チョ・ウヨン、チャン・ユビンはKGA出身代表。
出場者リストが維持されたのも、このことが理由かもしれない。
トム・キムは気を取り直し、すでに来年の「パリ・オリンピック」の金メダルに向けて準備を進めている。
韓国男子は金・銀メダルを獲得
金メダルがかかった最終ラウンドでは、 香港のタイチ・コーが通算27アンダー(261)で個人戦金メダルを獲得。
イム・ソンジェは通算26アンダー(262)で銀メダルを獲得した。
その他、韓国勢はキム・シウーが通算23アンダー(265)で4位。
チャン・ユビンは通算22アンダー(266)で5位。
チョ・ウヨンは通算17アンダー(271)で6位タイに入った。
韓国人選手4人はいずれもトップ10入りを果たし、 チーム成績は通算76アンダー(788)に。
2位のタイ(51アンダー)に25打差で大勝した。
韓国は団体金メダルと個人銀メダルを獲得。
イムは、「1週間をこんなに長く感じたのは初めて。団体戦に影響するので、全てのホールが非常に重要だと感じられた」と語った。
イムは、「2ラウンドが終わった後、首位とはほぼ10打差あった。 個人戦よりも団体戦で良い成績を出そうと思っていたが、それでも最終ラウンドの後半には欲が出た。最終ホールでわずかな差(1打差)を詰められずに残念だった」と語った。
28歳のキム・シウー、25歳のイム・ソンジェ、22歳のチョ・ウヨン、21歳のチャン・ユビンにとって金メダルは非常に貴重だ。
イムは、「これでPGAツアーにもっと集中できるようになるし、今後長年にわたってプレーできると思います。精神的にもラクになる」と語った。
Text/Donghoon Lee
イ・ドンフン
ソウル生まれのゴルフライター。アジュビジネスデイリー紙、ゴルフマガジン、ゴルフジャーナル(ともに韓国)などに寄稿。2021年韓国PGA感謝賞受賞。