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【DP WORLD TOUR CHAMPIONSHIP】
DPワールドツアー レー ス・トゥ・ドバイ
2023年も1位で終了したロ ーリー・マキロイ
「1年間を通して、僕に勝てる人はそうたくさんいない」

欧州ツアーポイントランキング総合優勝5回目

22年に引き続き、23年もDPワールドツアー(欧州ツアー)の「レース・トゥ・ドバイ」ランキングで、総合優勝を決めたローリー・マキロイ。
欧米両ツアーの顔としてコース内外で活躍するマキロイの、23年の活躍を振り返りつつ、現在の彼の心境をレポートする。

2023年11月16日〜19日/Jumeirah Golf Estates Earth Course,Dubai UAE/7706ヤード・Par 72

優勝
Rory Mcilroy

ローリー・マキロイ(北アイルランド)
1989年5月4日生まれ。178㎝、73㎏。米ツアー24勝、欧州ツアー16勝、メジャー4勝。「マスターズ」で優勝すれば、キャリアグランドスラム達成。22年は、欧米両ツアーで年間王者に輝いた。23年は米・フェデックスカップ4位。現在、世界ランク2位。©Eiko Oizumi

「23年の出来栄えを点数で表すなら10点中7点。安定したいい1年だった」ローリー・マキロイ

最終戦で、テーラーメイドの未発表作「Qi10 LS」ドライバー(9.0)を投入したマキロイ。今大会のドライビングディスタンスは、323.9ヤードで2位を記録。©Getty Images
最終戦の1週間前に、自宅のあるフロリダで試打したという。「慣性モーメントが自分にとって過去最大なので、よりミスにやさしいし、飛距離も伸びていると思う。形や打音、打感とも好き。今まで使ったドライバーの中でも、最も見た目のいいドライバー。ステルスよりも、もっとスッキリしたイメージだね」とコメント。©Eiko Oizumi

「セベ、モンゴメリーの記録を塗り替えたい」

 11月16日~19日にアラブ首長国連邦・ドバイのジュメイラゴルフエステイツで開催された、欧州ツアー最終戦「DPワールドツアー選手権」を前に、レース・トゥ・ドバイ・ランキング(DPワールドツアー・ポイントランキング)で1位に立っていたローリー・マキロイが、2シーズン連続・5度目の総合優勝を果たした。過去、2012年、2014年、2015年、2022年に優勝しており、今回で5度目の総合優勝だが、この記録は8度の総合優勝をしているコリン・モンゴメリー、6度のセベ・バレステロスに次ぎ、歴代3位の記録である(モンゴメリー、バレステロスの時代は、賞金王のタイトル)。

「(総合優勝については)素晴らしい。自分のゲームが毎年安定していることを示しているからね。過去10年でアメリカと、ここDPワールドツアーで、シーズンを通した総合優勝を8回達成しているし、それが僕の安定感のレベルを物語っているんだ。最終グリーンでハリー(キャディ)と話したんだけど、今週1週間、あるいは翌週に僕に勝てる人はいるけど、1年間のシーズンを通して勝てる人はそう多くはいないよね、と。今年は本当に堅実な1年間だった。平均ストロークも良かったし、すごく良いゴルフをしていた」

 PGAツアーを主戦場に戦うマキロイは、23年のDPワールドツアーの試合にはメジャーを含めて9試合しか出場していないが、1月の「ヒーロー・ドバイデザートクラシック」と7月の「ジェネシス・スコティッシュオープン(PGAツアーと共催)」で2勝を挙げている。
ともに「ロレックスシリーズ」のイベントで、通常の試合よりも賞金とポイントが高いトーナメントだ。
また、メジャーで3度ベスト10入りも果たし、「全米オープン」では優勝争いの末、2位に入った。

「今年の成績には満足しているが、一つだけ後悔しているとすれば、『全米オープン』で逃したチャンスだろう。メジャーで勝つ絶好の機会だったが、逃してしまった。でも、今年は非常に安定した年で、素晴らしいパフォーマンスを出すこともできたし、自分のゲームは過去16~17年間にわたるキャリアの中でも、最高の状態にあるように感じている。満足しているよ」

 23年はその他、イタリア開催での「ライダーカップ」で欧州チームが勝利したこともあり、チームメンバーだった本人は非常に満足しているようだ。
23年の出来栄えに点数をつけるとしたら、「(10点中)7点だ」と答えている。
22年はLIVゴルフの発足もあり、選手会長としてコース外での活動が忙しい1年だったが、それでも欧米両ツアーで総合優勝を果たした。
23年はLIVゴルフについては、一昨年までのように声高に否定や反対することもなく、自身のゴルフに比較的集中できていた1年間だったようだ。

世界中の異なる条件で勝利し、
過去の偉大な選手たちと自分を
比較できるのがゴルフの醍醐味

北アイルランド出身で、幼い頃からの親友でありキャディの、ハリー・ダイヤモンド(左)も年間優秀キャディとして表彰された。©Eiko Oizumi
大会初日は、レース・トゥ・ドバイランキング1位のマキロイと、2位のジョン・ラームが同組で回り、注目を浴びた。©Getty Images

欧州ツアーの上位10名が米ツアーへ。
マキロイの見解は?

 さて、DPワールドツアーとPGAツアーは、戦略的な提携を結んでいるが、23年から欧州ツアーの年間ポイントレース上位10名(有資格者を除く)に翌シーズンのPGAツアー・シード権を付与することになっていた。
この、「欧州ツアーからPGAツアーへのスター選手の流出」について賛否両論あり、「これでは欧州ツアーは米ツアーのフィーダーツアーだ」と非難する人もいる。
マキロイは、この流れをどのように考えているのだろうか?

「それは常に存在していた(欧州ツアー→米ツアーという)経路を正式化したものだ。欧州ツアーが始まった理由は、プロゴルファーに試合に出場し、生計を立てる機会を提供するためだった。だから、欧州ツアーの指針を見れば、プロゴルファーにプレーする場を提供し、生計を立てる機会を提供することと書かれている。そしてそれが実現できる最大限の場所は、PGAツアー以外にない。欧州ツアーでプレーする選手にとっては、素晴らしいことだと思うし、プロゴルフのトップレベルに到達するための経路を正式にしているだけだと思う」と語っている。

プロゴルファーとしての生きがい

 過去、欧米ツアーだけではなく、さまざまな場所で戦い、勝利をものにしてきたマキロイ。
欧州ツアーの試合は、その国のメジャーである場合が多いが、「かなりの数のナショナルオープンを制覇し、僕のトロフィーケースで最も誇りに思うものだ。トロフィーに刻まれた名前を見ると、それがゴルフの醍醐味だと思う。以前の世代の選手と自分を比較することができるのがゴルフ。プロゴルファーであることは、世界中で勝利し、異なる条件や場所で自分を試すことができるということ。過去15年間、僕はそうやってきたし、それによっていい選手になってきたと思う」

 現在、世界ランク2位の34歳は、特に体の故障などに悩まされていないだけに、まだまだ今後も期待が持てる。
どこまで強さを維持できるのか、ゴルフファンにとっても楽しみだが、本人も「あと8~10年はトップレベルで戦えるんじゃないかな」と語っている。

2023年「レース・トゥ・ドバイ」最終成績

1位ローリー・マキロイ(北アイルランド)
2位ニコライ・ホイガード(デンマーク)
3位ジョン・ラーム(スペイン)
4位エイドリアン・メロンク(ポーランド)
5位ライアン・フォックス(ニュージーランド)
6位ビクトル・ホブラン(ノルウェー)
7位ビクター・ペレツ(フランス)
8位トミー・フリートウッド(イングランド)
9位トービヨーン・オルセン(デンマーク)
10位ミンウー・リー(オーストラリア)
13位ロバート・マッキンタイヤー(スコットランド)
17位久常 涼(日本)
18位ラスムス・ホイガード(デンマーク)
29位トム・キム(韓国)
68位ルドビグ・オーバーグ(スウェーデン)
73位アダム・スコット(オーストラリア)
80位川村昌弘(日本)
81位星野陸也(日本)
120位比嘉一貴(日本)

「レース・トゥ・ドバイ」歴代優勝者

2023年ローリー・マキロイ
2022年ローリー・マキロイ
2021年コリン・モリカワ
2020年リー・ウエストウッド
2019年ジョン・ラーム
2018年フランチェスコ・モリナリ
2017年トミー・フリートウッド
2016年ヘンリク・ステンソン
2015年ローリー・マキロイ
2014年ローリー・マキロイ
2013年ヘンリク・ステンソン
2012年ローリー・マキロイ
2011年ルーク・ドナルド
2010年マーティン・カイマー
2009年リー・ウエストウッド
2008年ロバート・カールソン
2007年ジャスティン・ローズ
2006年パドレイグ・ハリントン

Photo/Eiko Oizumi、Getty Images、DP World Tour

Text/Eiko Oizumi

大泉英子
「ゴルフ・グローバル」編集長。海外メジャー取材は男・女・シニア合わせて130試合以上。現在も海外ツアーをメインに取材。全米ゴルフ記者協会、欧州ゴルフ記者協会、日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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