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【DP WORLD TOUR CHAMPIONSHIP】
TVじゃわからないO嬢・現地レポート!

ジョン・ラーム、TGL参戦を取りやめ、LIVゴルフ入り

大会前の公式会見で質問を受けるジョン・ラーム。2022年「DPワールドツアー選手権」のチャンピオン。©GettyImages

 今年の1月から開幕する予定だったPGAツアーの新リーグ「TGL」。
昨年11月半ばに電気の供給が途絶えたことで、工事中だったアリーナのドーム型の屋根が崩落。
それにより、ドームの一部が損傷を受け、2025年まで開幕が延期されたが、ジョン・ラームはその前から参戦を取りやめることを昨年11月に発表。
自身のX(旧ツイッター)に「TGLの初年度に参戦できず残念。今も素晴らしい機会だと思うが、今、出場を約束することはできない」と投稿した。

 そしてその後「DPワールドツアー選手権(以下DPWTC)」の記者会見で、TGLをやめた理由を問われると、「(自宅のあるアリゾナから、会場のフロリダまでの)飛行時間がかかり、家を離れる時間が増える。私のスポンサーのことも考えなければならないし、最初に予想していたよりも、やることが多くなりそうだから」と語った。

 タイガー・ウッズやローリー・マキロイ、ジャスティン・トーマスなど、ほとんどの選手はフロリダに住んでおり、TGLに参戦するのはアリゾナ在住のラームほどの負担ではない。
本業のゴルフと家庭のバランスなどを考えると、ラームの決断も理解できる。
会見では、PGAツアーの選手会の理事を辞任したローリー・マキロイに対してどう思うか?についても聞かれ、「PGAツアーの理事であり、その議長を務めるとなるとある程度の時間を取られてしまうのだろう。ゴルフ場で過ごす時間が制限され、忙しくなっていた」とし、マキロイ辞任に理解を示していた。

 その後、ラームが「TGL」参戦をやめるのは、LIV入りするからではないか? という噂が飛び交った。
というのも、ラームがLIVゴルフと最終段階の交渉に入っていると伝えられたからだ。
彼の複数年契約については、金銭的理由からではなく、LIVのフォーマット変更を説得できるかどうかにかかっているということまで言われていたが、12月初旬に周囲の予想通り、ラームはLIVゴルフ入りを発表した。

 ラームは以前からLIVゴルフには興味がないといい、「自分はLIVに行かなくても、十分お金を稼いでいる」と語っていた。
スペインのセルヒオ・ガルシアやアリゾナ州立大の先輩でもあるフィル・ミケルソンとの交流は今も続き、メジャーでも練習ラウンドを一緒に行なっているが、互いの選択を尊重し合っており、LIVゴルフに勧誘されることはない、と語っていただけに、関係者やプロ仲間もビックリ。
マキロイは「素晴らしい選手のジョンがLIVゴルフ入りして、すごく残念だ」と語った。

 6億ドル(約900億円)という契約金の話まで飛び出したが、真偽は不明。
世界ランク3位のラームがLIVに参加することによって、世界ランクポイントの取り決めや、PGAツアーやDPワールドツアー、LIVゴルフを掛け持ちすることについての協議がなされるかもしれず、大きくゴルフ界が動く可能性があるだろう。

ビクトル・ホブラン
母へマルタ旅行をプレゼント

DPWTCを、優勝したニコライ・ホイガードに2打差の2位タイで終えたV・ホブラン。©Eiko Oizumi

 昨年のPGAツアー・フェデックスカッププレーオフで総合優勝を遂げたノルウェーのビクトル・ホブラン。
「ライダーカップ」参戦後は6週間の休暇を取り、3週間はクラブを握らなかったのだという。

「3週間も休むのはいつ以来か覚えてないね。1週間休んで復帰、というのはあるけど、戻ってきた時にゲームがどうなるのか、という不安は常にある。でも今回は、少しゲームは錆び付いてたけど、僕のゴルフ人生で初めて、完全にゴルフを忘れてしまったとは感じなかった。技術は忘れておらず、1週間オクラホマに行き、そこで練習を始めたんだけど、練習を始めると、ゲーム勘はかなり早く戻ってきたように感じたよ」

 また、母親をマルタのレストランに連れていき、おいしい食事や観光を楽しんだと語った。
最近ではポッドキャストを聴くのが好きで、読書も少し始めているという。
内容は、自己啓発の類が多いそうで、どのようにしたらよく眠れるかとか、サプリメントをどのように摂るかなども……。
また、歴史や世界の謎の探究にも興味があるといい、「エジプトのピラミッドや、ローマに行って古代神殿がたくさんあることを知り、その歴史についてもっと学びたいし、自分達のルーツも理解したい」と語った。

 ゴルフだけでなく、いろいろなものに興味津々のホブラン。
ゴルフ漬けの人生ではなく、バランスよく生活しているようだ。

PGAツアー選手会理事を辞任したローリー・マキロイ

PGAツアーの選手会理事として、広告塔として活躍してきたマキロイが突如、辞任を表明。©Eiko Oizumi

 2022年以降、PGAツアーの選手会理事として選手達をリードしてきたマキロイ。
2024年末まで任期が残っていたものの、個人的および仕事上の都合を理由に、急遽理事を辞任した。
「DPWTC」の週の火曜日に、PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏からの電子メールの形で発表されたものである。
マキロイはLIVゴルフ発足後は、反LIVの姿勢を強硬に示し、PGAツアーを支援し続けてきたが、PGAツアーが、LIVゴルフを支援するサウジアラビア政府系ファンド(PIF)と枠組み協定を昨年の6月に突如結んだことによって、ジェイ・モナハン氏に不信感を抱いたのは事実だった。
当時彼は、その発表の数時間前に事実を知らされ、「犠牲になった子羊のような気持ちになった」と認めている。

 理事のマキロイは、LIVゴルフの発足によって他の誰よりも多くの時間をツアーのために費やし、練習時間や家族との時間などを犠牲にしてきた。
タイガー・ウッズと新会社を設立し、PGAツアーに紐づいた新リーグ「TGL」も発足。
そしてLIVゴルフに移籍した、ガルシアら昔馴染みの仲間達との人間関係にヒビが入ることもあった。
だが、ツアーに忠誠を誓ってきた彼にとって、ツアー側の裏切りとも取れるサウジとの提携が発表された後は、「劣勢側にいるように感じた」と語っていた。

 34歳の彼には、「マスターズ」制覇、グランドスラム達成という大きな目標もある。
「DPWTC」の会見でも語っていたが、ゴルフというゲームの将来について考え続けていることも確かで、若者に何らかの形でゴルフに携わってもらいたいとも思っている。
だが、これまで献身的にツアーのために活動してきた彼も、「今後は自分のために時間を使いたい」と考え、決断したのだった。

 なお、マキロイの後任にはジョーダン・スピースが選出された。
タイガー・ウッズ、パトリック・キャントレー、チャーリー・ホフマン、ピーター・マルナティ、ウェブ・シンプソンら5人の残りの理事による投票で選出され、任期は2024年末までとなっている。

テーラーメイドの未発表モデル「Qi10」を投入したトミー・フリートウッド

テーラーメイドの未発表ドライバー「Qi10 LS」を「DPWTC」から投入したフリートウッド。©Eiko Oizumi
現在、ドバイに居を構えるフリートウッド。開催コースのジュメイラゴルフエステーツには、自身の名前を冠したゴルフアカデミーもある。ヒザに抱えているのは、息子のフランキーくん(6歳)。©GettyImages

 現在、「DPWTC」開催地のジュメイラゴルフエステーツ敷地内に居を構えているトミー・フリートウッド。
2日目はホームコースの知識をフルに活かして66をマークし、2位に浮上した。

「ここにいられるのはいつも素晴らしいこと。この試合の優勝トロフィーに自分の名前を刻みたいね」

 だが、最終日はスコアを伸ばしきれず、ニコライ・ホイガードとは2打差の2位タイに終わった。

 そんな彼はこの週から、ローリー・マキロイ同様、テーラーメイドの未発表新作ドライバー「Qi10 LS」を投入していた。
カーボンヘッドドライバーで、R&A とUSGAの適合リストにも登録されたばかりのもの。
「まだ1月になるまでは詳しいことは話せないんだ」とフリートウッドは語っていたが、連日60台をマークし、「DPWTC」の4日間を通してのフェアウェイキープ率は76.79%(3位)。
1試合目でいきなり2位タイに食い込んだことからも、この新ドライバーを高く評価する。

DPワールドツアーメンバー26人の奇跡

リフティングに参加したDPワールドツアーのメンバーたち。前列には、ロバート・マッキンタイヤー、パブロ・ララサバルらの他、久常涼の姿も。©Eiko Oizumi
全部で26人で行なわれたリフティング。久常もボールを確実に次につないだ。©Eiko Oizumi
最後は、マット・ウォレスがトスを上げて、ロバート・マッキンタイヤーがヒット。成功するかな?!©Eiko Oizumi
マッキンタイヤーが見事ヒットし、大成功!©Eiko Oizumi
成功したあとは、メンバー達がマッキンタイヤーの元に駆け寄り、大騒ぎ!©Eiko Oizumi

 さすがプロゴルファー!しかも世界第2のツアーメンバーならではの技だ。

「DPWTC」の練習日、欧州ツアーメンバーと、一部G4Dツアー(障害者ゴルフツアー)のメンバー、合わせて26名が練習場に集まり、リフティングが行なわれた。

 エイドリアン・メロンクからスタートし、次々に選手にボールをつないでいく。
久常涼もその1人だ。
そして最後にマット・ウォレスが、レフティのロバート・マッキンタイヤーにボールをトスし、ヒットするというものだ。

 最初は何回か練習が行なわれ、マッキンタイヤーが空振りするなど、1回では決められなかったが、2回目の挑戦で成功!
まるで「ライダーカップ」欧州チームが優勝した時のように、皆がマッキンタイヤーに駆け寄り大喜びだった。

 普段は、個人プレーのゴルフだが、欧州、アフリカ、アジア、中東、豪州、北米と世界のありとあらゆる場所をともに転戦している彼らの、チームワークと技術が成功に導いたのだった。
あっぱれ!

9ホールを20分12秒でプレーし
世界最速ゴルファーギネス世界記録樹立

世界最速ゴルファーとして名高い、ルーク・ウィレット(右)が、ジュメイラGEで個人による最速9ホールラウンドのギネス世界記録を樹立。©DP WORLD TOUR
3番ウッド、6番アイアン、PWの3本だけを使って、走りながらプレー。©DP WORLD TOUR
時計をチェックし、ペース配分を考えながらプレー。20分12秒で9ホールをプレーした。©DP WORLD TOUR

 11月16日、「DPWTC」が開催されるジュメイラゴルフエステーツのファイヤーコースで、あるギネス世界記録が樹立された。

 イングランド・バッキンガムシャー出身のPGAプロ、ルーク・ウィレット(39歳)が比類のないスピードと精度を発揮し、3番ウッド、6番アイアン、PWのみを使って9ホール(2709ヤード)をたった20分12秒でプレーしたのだ。
しかも気温34度の暑さの中である。
9ホールを終えて、疲れ切ったウィレットは次のように語った。

「9ホールの最速ラウンドのギネス世界記録を樹立できて、本当に興奮しています。この機会を提供してくれたDPワールド(ドバイを拠点とする、世界最大級の港湾運営会社)に感謝します。スマートロジスティクスにおける彼らの専門知識は、本当に称賛に値しますし、この記録破りな旅に彼らと一緒に参加できて光栄に思います」

 DPワールドは、ルーク・ウィレットをこのチャレンジに招待したことにより、スポーツマンシップと記録樹立へのサポートを示しただけでなく、可能な限り、最も効率の良い方法で目標を達成するための献身的な姿勢を強調した。

O嬢日記@Dubai
「トップゴルフ・ドバイ」がオススメ!

11月のドバイは、日中でも30度近くあり、非常に暑い。だから、夜でもゴルフできるナイターゴルフや、トップゴルフが人気だ。写真は、トップゴルフでショットを放つO嬢。©Eiko Oizumi
ゴルフ場でプレーしたことがない人でも、気軽に楽しめるトップゴルフ。食事をしながら、ビールを飲みながら家族や友達と楽しむ地元の人も多かった。©Eiko Oizumi

 現在、ドバイ市内には10~12のゴルフ場があると言われているが、ドバイゴルフの魅力は他にも。
ノリノリの音楽が流れ、お酒、食事も楽しめるゴルフ練習場「トップゴルフ・ドバイ」に行ってきたが、仮に初心者だったとしても、みんなで楽しい時間が過ごせる場所なのだ。
打席にはソファーが置かれ、打球方向には光り輝く的が……。
その的を目掛けてボールを打ち、ポイントを争うゲームができるようになっている。
手ぶらでOKで、打席にはクラブが用意されている。
ハンバーガーやビールを注文して、仲間とワイワイガヤガヤ言いながら、ゲームに興じるというのは、日本の黙々と静かにボールを打つ練習場の概念とは全く異なる。

 日本にないのは残念だが、もしドバイ(海外)に行くことがあれば、深夜まで営業しているトップゴルフでゴルフを楽しむのもオススメだ。

G4Dツアーシーズン・ファイナル@DPワールドツアー選手権
マイク・ブラウン 亡き父に捧げる最終戦の勝利

G4Dツアーで2勝目を飾った、イングランドのマイク・ブラウン。©Eiko Oizumi
2011年、王立砲兵部隊の日常訓練中に左足を骨折。感染症のため、2年近く経っても怪我が治らず、2年後に切断手術を受けた。©GettyImages
ISPSアンバサダーのブレンダン・ローラー(右・アイルランド)と、ホァン・ポスティーゴ(スペイン)も出場。ローラーは2位タイ、ポスティーゴは6位タイに終わった。©Eiko Oizumi

 イングランドのマイク・ブラウンがG4Dツアー・シーズン最終戦で世界障害ゴルファーランキング1位のキップ・ポパートらに3打差をつけ、1アンダーでツアー2勝目を挙げた。

「今日はとても特別な日。この優勝は、1年前に亡くなった父へのものだ」

 もともと2日間大会だったが、初日は悪天候のため中止に。
1日だけの大会となったが、4バーディ、1ボギー、1ダブルボギーの71をマーク。
他の選手がオーバーパーのスコアを叩く中、唯一のアンダーパーだった。

最終成績

優勝マイク・ブラウン−1
2位キップ・ポパート
ブレンダン・ローラー
カーティス・バークレー
+2
5位クリス・ビギンズ+5
6位デビッド・ワッツ
ホァン・ポスティーゴ
+6
8位トマソ・ペリーニョ+8

Photo/Eiko Oizumi, PGA of America
Text/Eiko Oizumi

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