世界のゴルフフォトグラファーの第一人者として今も第一線で活躍するデビッド・キャノン。
彼のファインダーを通して切り取られた世界のゴルフコースの数々は、まるで宝石箱のジュエリーのように一つ一つが個性豊かに輝いている。
私の愛したゴルフコース第23回はセント・パトリックス リンクス(北アイルランド)を紹介する。
St Patrick’s Links
セント・パトリックス リンクス(北アイルランド)
●設計:トム・ドーク
●全長:6826ヤード・パー72
●備考:2021年オープン。ロサペンナホテル&ゴルフリゾート内にあり、ベルファスト国際空港から車で約2時間。開業2年目にして、米『ゴルフマガジン』誌で「世界のトップ100」にランクインしている(49位)。他に、サンディヒルズ・リンクス、オールド・トム・モリス・リンクスという2つのリンクスもある。ホテル、レストラン、スパ完備。
https://www.rosapenna.ie
開場2年目にして世界49位のコースに
セント・パトリックス・リンクスは、ロサペンナホテル&ゴルフリゾートに最近オープンした、第3のコースだ。
アイルランド・ドニゴール州の美しい自然に恵まれた北西海岸エリア、シープフェブン湾に面し、トム・ドークの最高傑作の一つとして瞬く間に有名になった。
すでに世界のゴルフコース・トップ100選にしっかりと名を連ねている。
米国のゴルフ誌『ゴルフマガジン』は、最近発表した2023年の世界トップ100のリストで、このリンクスコースを49位にランクインさせた。
これは、2021年にオープンしたばかりのコースにとって、信じられないほどの栄誉だ。
4つ星のロサペンナホテル&ゴルフリゾートは、40年以上にわたってケイシー家が所有しているが、この素晴らしいゴルフの楽園を訪れる際の楽しみの一つは、ケイシー家のフランクとジョンの歓迎とおもてなしにある。
このリゾートには既存の2つの素晴らしいコースがあるが、1つは1893年に建設されたオールド・トム・モリス・リンクス。
もう1つはパット・ラディが設計し、2003年6月にオープンしたサンディヒルズ・リンクスである。
2012年、ケイシー家はかつて「マヘラマゴーガン・リンクス」と「トラモア・リンクス」だった36ホールのゴルフ場を取得した。
これらのコースは1990年代中期に開業し、リゾートの南端に位置する砂丘地にあったものである。
2000年代初頭、ジャック・ニクラスにこれらのコースの新しいデザインを検討するよう依頼したが、2008年~2009年の世界金融危機の間に頓挫してしまった。
2012年にフランク&ジョン・ケイシーがそのコースを取得すると、トム・ドークとルネッサンスゴルフデザイン社に新しい18ホールのゴルフコースのための初期デザインを提供するよう依頼。
2013年、ドークと彼の同僚であるエリック・アイバーソンは、セント・パトリックス・リンクスの最終レイアウト案を発表した。
ドークはコースについて次のように語っている。
「海辺のコースを建設する機会は、今ではほとんどない。敷地は270エーカー以上あり、シープフェブン湾から100フィート以上高くそびえ立つ大きな丘の中央にあるが、ルーティングのコツの一つは、丘の頂上に向かう途中で劣悪なホールを造らずに、上がって景色を楽しむことだ」
2023年9月、私がここを初めて訪問した時は、彼が創造したリンクスの壮観さに驚かされたものだ。
広々としたフェアウェイが広がっているが、決してこれに惑わされないこと。
巧妙に配置されたコンター(等高線)や尾根により、ボールはフェアウェイそばのラフやバンカーに転がり込むようになっているからだ。
「偉大な土地が、偉大なコースを生み出す」
トム・ドークが命を吹き込んだ奇跡
5th Par3/214yard
Doak’s Finest
ドークの最高のコース
既存の景観を活用した景色を楽しむコース
ドークの設計の中でも秀逸なのは、もともとあったコース「マヘラマゴーガン」にちなんで名付けられた、宝石のようなショートホールだ。
130ヤードの15番ホール・パー3は、見事な自然なバンカリングを備えた難しいホールで、グリーンの後ろから見ると、海面からほぼ100フィート上にある、壮大なリンクスならではの絶景を楽しめる。
この素晴らしいショートホールのあとは、究極のビュースポットに向かって登っていく。
それは景色を楽しみたいというドークの望みが叶えられている場所だ。
534ヤードの打ち下ろしのパー5で、おそらくコースで最も広いフェアウェイを持つホール。
スキー場の「モーグル」のコースにしても違和感のないフェアウェイが広がっている。
フェアウェイにあるコブやくぼみにより、ドライビングエリアが狭くなり、ラフに近いところに落下すると、深いラフやフェアウェイバンカーに転がりこむようになっている。
しかしその一方でバーディやイーグルチャンスもある、非常に頭を使うホールだ。
18番ホールはやや短いパー4で、2打目はグリーンに向かってやや打ち上げで、グリーンの左手前には大きなバンカーが口を開けている。
ある意味、このホールはこのコースがいかに自然であるかを物語っている。
ドークが既存の景観を活用したその設計は、まさに天才の作品だ。
Text & Photo/David Cannon
David Cannon デビッド・キャノン(イギリス)
海外メジャー100大会以上を取材し、現在も第一線で活躍中のゴルフフォトグラファー界の巨匠。自身もシングルハンデの腕前で、息子はプロゴルファー。アメリカ、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、アジアと世界各国を股にかけて撮影している。2022年、PGAオブ・アメリカ生涯功労賞を受賞。Getty Images所属。
Text & Photo/ David Cannon (Getty Images)