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【世界のゴルフ通信】From USA PGAツアーとLIVゴルフに新たな展開? PIFではなくSSGとPGAツアーエンタープライズを創設

SSGがPGAツアーの新会社に、約30億ドルの投資

PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏(左)とストラテジック・スポーツ・グループ(SSG)の親会社であるフェンウェイ・スポーツ・グループの代表、ジョン・ヘンリー氏。©GettyImages

ゴルフが好きな人々は、単にゴルフの話に戻りたいと思っている。
お金の話、プライベートエクイティ(未公開企業や不動産に対して投資を行なう投資家や投資ファンド)の話、PIF(サウジ政府系ファンド)の話にうんざりしているのだ。
彼らは最高の選手たちがもっと頻繁に競い合うのを見たいと思っており、なんとかPGAツアーとLIVゴルフリーグの間の対立が解消されることを望んでいる。
だが、それは容易なことではない。

PGAツアーがストラテジック・スポーツ・グループ(以下SSG)との契約を結んだという発表は、当然のことながら大きな出来事だ。
この取引により、新会社のPGAツアーエンタープライズに、約30億ドルが投資されることになる。
これは、LIVゴルフの台頭を受けて、ツアーが直面した財政問題の一部を解決するのに役立つが、SSGの資金は、非営利団体のPGAツアーに投資されるわけではない。
最大200人の選手が、過去、現在、未来の活躍ぶりを含む、多くの要因に基づいて、新会社の何らかの株式を受け取ることができるというものだ。
だが、それが何を意味し、どのように決定されるかは謎のままであり、新会社がどのようにして巨額の収益を生み出し、プライベートエクイティ・パートナーを満足させるのかも不明だ。
そして、PIFがどのように関与するか(またはしないか)が、今では大きな疑問となっている。

PGAツアーとPIFの統合はどうなる?

PGAツアーは、PIFはもはや必要ないとの見方もできる。
PIFと組まなくても、選手に報酬を与え、新しいフォーマットを独自に考案するという目標を達成できると考えているのだ。
もちろん、これには明白なリスクが伴う。PIFがLIVゴルフに資金を提供し続け、PGAツアーの選手を引き抜き、ゴルフ界をさらに分裂させる可能性があるからだ。
現状では、過去5回のメジャーのうち3人の優勝者がLIVゴルフでプレーしている。
LIVゴルフを観なくても、PGAツアーには優秀な選手がたくさんいる。だが、それでも大きな問題があることには変わりない。

ゴルフファンは、誰がプレーしているかに関係なく、PGAツアーの試合を視聴している。
しかし、ジョン・ラームやブルックス・ケプカ不在でも、PGAツアーの選手たちは優秀と言えるのだろうか?
ゴルフファンは、昨年のメジャーで優勝した、最も栄誉ある2人の選手のプレーを観ることができないのだ。

はっきり言っておくが、PIFもまたPGAツアーと手を組まなければ、ここでリスクに直面する。
PGAツアーと同じテーブルに着くという大局の目標の観点から言えば、この受け入れは非常に重要だ。
PIFはLIVを大変気に入っているかもしれないが、当初から掲げられていた目標は、単なる異例のゴルフツアーを運営することだけではなかった。
そして、両者の分裂が残ったままであれば、まさにそうなってしまう。

LIVはテレビ放送枠を必要としているが、試合の一部はPGAツアー最大の試合と競合しており、他の方法でも受け入れられることが必要だ。
大手スポンサーはLIVを支援することに、これまで消極的だった。
LIVビジネスプランの一環として、LIVの各チームが独自に契約を獲得するという任務を負っているため、この計画はゆっくり進んできたが、PIFはいつか2500万ドルの賞金や、テレビ制作、トーナメント会場の巨大な建造物にさらに数百万ドルを費やすことにうんざりする可能性もある。
通常、これらすべてにかかる費用は、PGAツアーであればテレビ放映権契約とスポンサー契約によってカバーされているものだ。

LIVゴルファーの最大の悩み

「全米オープン」チャンピオンのブライソン・デシャンボー(右)とメジャー2勝のジョン・ラームが、「LIVラスベガス」でともに2日間プレー。©LIV GOLF

メジャーに出場するために必要な、世界ランキングポイントの問題もある。
全員が同じ側に立っていれば、この厄介な問題を解決する動機がさらに高まるのではないだろうか?

もしLIVの支援者であるPIFがPGAツアーエンタープライズの一部であれば、これらの問題はLIVにとって解決可能になるかもしれない。
だがこれまでのところ、その感情はジョーダン・スピースやローリー・マキロイの発言を聞いても複雑だ。
この話がどうなるのかわからないのだ。

一方、ゴルフファンは、合意がなかった場合、「統一」がどのようなものになるのか、疑問に思っている。
最高の選手だけがメジャーで競い続けるのだろうか?
LIVゴルファーは、PGAツアーやDPワールドツアーに参加していないため、「ライダーカップ」への参加を拒否され続けるのだろうか?
彼ら全員を集めるため、欧州サッカーのチャンピオンズリーグに類似した、別の「ワールド」シリーズのような、何らかの競技モデルがあるのだろうか?
どうすれば選手は、その出場資格を得られるのか?

アマチュアが32年ぶりにPGAツアーで優勝

「アメリカンエキスプレス」でアマチュア優勝を果たしたニック・ダンラップ(中央)。左からコーチのジェイ・シーウェル氏、ガールフレンドのイサベラ・エリスさん、本人、母親のシャーリーンさん、父親のジムさんと記念撮影。©GettyImages
1991年「ノーザンテレコム・オープン」でアマチュアとして優勝したフィル・ミケルソン。©GettyImages

ある一人の選手が、困難な方法でPGAツアーの参加資格を得た。
彼にとっては、試合に優勝するしか他にPGAツアーでの資格を得る方法がなかったのだ。
その選手とはニック・ダンラップである。
彼はアマチュアとして招待され、「アメリカンエキスプレス選手権(以下「アメックス選手権」)で意外な勝利を収めた。彼は1991年のフィル・ミケルソン以来となる、PGAツアーで優勝したアマチュアである。
優勝したことで、全てのシグネチャーイベント(高額賞金の昇格試合)に出場できることになったが、ダンラップがその機会を活かすのは当然のことだ。
彼には堅実なプレースタイルが確立されており、すでに多くの出場機会が保証されているので、この時点でアマチュアのままでいることは困難だ。
それでも……彼がアラバマ大での大学シーズンが5月に終了するまで待った方が良かったのではないか、と思うかもしれない。
彼はチームメイトとの無給のゴルフをもう少し楽しみながら、チームが「NCAAトーナメント」まで勝ち抜くのを見届けることができる一方、推薦やスポンサーを獲得し、現実の世界(PGAツアーの出場)に向けた準備をすることができたかもしれない。

ダンラップが、プロの試合に適しているかどうかはわからない。
しかし、彼はプレーするにつれて学んでいくだろうし、PGAツアーでの優勝で見せた成熟度が、さらに彼の活躍ぶりを高めると言っても過言ではないだろう。
「アメックス選手権」は、彼にとって4回目のPGAツアー出場であり、過去3回は予選落ちだった。
今後の試合で賞金やポイントを稼ぐことができるかについては保証はないが、彼が出場できる4つのシグネチャーイベントでは、賞金とフェデックスポイントが保証されている。

ダンラップには、プロ転向を決断する十分な時間があった。
ミケルソンは、1991年に「ノーザンテレコム・ツーソンオープン」で優勝した後、プロ転向するまで1年以上待ったものである。
彼はアリゾナ州立大3年生で、学校に戻り、その年の「NCAAトーナメント」で4位に入賞(前年までは2年連続で優勝)、「マスターズ」と「全米オープン」の両方でローアマを獲得した。
翌年、ミケルソンは3度目の「NCAA」個人タイトルを獲得。その後プロに転向し、「全米オープン」の地区予選をメンフィスで通過。
そこで初めてジム・〝ボーンズ〟・マッケイが彼のキャディを務めた。
その後、ペブルビーチで開催された「全米オープン」では予選落ちに終わっている。 

ミケルソンは、翌2シーズンはシード権があるという安心感があって、1993年には「ビュイック招待(現在の『ファーマーズインシュランスオープン』)」でプロ入り初優勝を果たした。

ダンラップは今年末までにプロとしての立場を決定する必要があったので、すぐにプロ入りを決断したのは理にかなっているかもしれない。
プロとして初出場となった「AT&Tペブルビーチプロアマ」では、最下位に終わっている。

いくつかの注意すべき話があるが、最も注目に値するのが、ジャスティン・ローズだ。
彼は1998年にロイヤルバークデールの最終ホールでバーディを決めて「全英オープン」で4位になったが、当時はわずか17歳だった。
その後プロに転向したが、その後は21回予選落ち。

「21回、予選落ちをしていた時、私は本当にこの世界から消えないようにしようとしていた」

ダンラップはプロ転向したことで、「全米プロ」に出場できるようになったが、「全英オープン」への出場権は失われた。
しかし、彼にはまだ十分な時間がある。
なぜなら、世界ランキングの第21週時点でトップ50に入っている選手は出場できるからだ。
ダンラップは「アメックス選手権」での勝利により、68位に急上昇している。

Photo/Getty Images

Text/Bob Harig

ボブ・ハリグ(アメリカ)

Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

Photo/Getty Images、Eiko Oizumi

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