欧州ツアーCEOの功績に対する評価
今年の年末までには、ゴルフ界のトップに君臨する最も重要な2人が、自らの意志で新たな舞台に移ることになる。
マーティン・スランバーズ氏がR&Aの最高経営責任者を辞任する意向を発表しており、さらには8年半にわたりDPワールドツアーを率いたCEO、キース・ペリー氏の退任が間近に迫っているということだ。
まず、最初に去ることになる人物はペリー氏だ。
彼は4月にDPワールドツアーを去り、彼の大好きなアイスホッケーチーム「トロント・メープルリーフス」を統括するためにカナダの故郷に戻るのだ。
彼が欧州ツアー本部にやってきた瞬間から、ヨーロッパ風の派手な青い縁取りメガネと大胆な性格で、大きな変化が訪れる予感がしたものだが、彼の功績については、例えば次に挙げるようなものがある。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックという、前例のない課題を抱えながらも、2021年のスケジュールをまとめることができたことは、彼の創意工夫、外交力の賜物と評価されている。
また、既成概念にとらわれず、ゴルフシックスなど、通常の72ホールのストロークプレーとは違った、革新的なイベントを導入することで、新風を吹き込んだ。
もう一つの成功は、ロレックスシリーズである。
賞金と地位の向上を切望しているプロサーキットが、最低700万ドル以上の価値のある複数の試合にプレミアムなステータスをもたらし、活気を与えたのだ。
彼はまた、障害者ゴルファーが自分のスキルを示し、スポーツを成長させるための適切なプラットフォームを提供するためにG4Dツアーを導入。
多くの人々が彼に感謝していることだろう。
しかし、他の大胆で革新的な動きについては、議論の余地がある。
ヨーロピアンツアーの名前を犠牲にして、アラブ首長国連邦の会社、DPワールドと新たなタイトルスポンサー契約を締結するための取引は、商業的には大成功だったと言えるのか?
それとも、50年にわたるアイデンティティと遺産を台無しにした、恥知らずな投げ売りだったのだろうか?
また、レース・トゥ・ドバイランキングで、上位10位以内に入った選手(有資格者を除く)に、次のシーズンのPGAツアー出場権を与える契約は、ヨーロッパの最も優秀な才能にエキサイティングな機会を生み出す優れたシステムといえるのだろうか。
それとも、「全米オープン」チャンピオンのマット・フィッツパトリックが言うように、「ヨーロッパのベストプレーヤー10人をPGAツアーに提供する」というものであり、本質的には欧州ツアーというブランドを、より大きなライバルであるPGAツアーのフィーダーツアーにしてしまったのだろうか。
これは、ペリー氏が組織の最高の財産を、最も古くから成功しているライバル(PGAツアー)に手放した、唯一の例ではない。
2022年にPGAツアーに約束された13年間の「戦略的提携」は、ほとんどの人々にとって、アメリカ人の利益に重点を置いた一方的な取引と見なされている。
PGAツアーは、ヨーロピアンツアープロダクションズ・メディア部門の40%の株式を所有しているのだ。
ツアーの「ドル箱」「ライダーカップ」が赤字運営
「ライダーカップ」は2年ごとに規模がますます大きくなり、さらに魅力的なものになっているが、年次報告書と、内部からの情報によれば、昨年、ツアーの最大の収益源である「ライダーカップ」がなぜか赤字で運営されていたようなのだ。
では、ペリー氏の在職期間はどのように記憶されるのだろうか?
新型コロナウイルスによる嵐の中でも船を浮かべ続けたリーダーとしてだろうか?
それとも彼は、キツネ(サウジアラビア)を鶏小屋(欧州ツアー)に入れたのに、そのうまみにありつけなかった男であり続けるのだろうか?
サウジアラビアの初のゴルフへの進出は、ペリー氏との提携によって始まった。
2019年、ジェッダ郊外で「サウジインターナショナル」を開催した時のことである。
その5年後、ゴルフ界は内戦に巻き込まれ、ビッグネームたちがサウジ支援のLIVゴルフに寝返る一方、旧世界の組織が団結して数十億ドル規模の新興企業に対抗している。
しかし、もしペリー氏がサウジアラビア人の新しい友人たちの前進を、もっとオープンに受け入れ、ゴルフというスポーツの新しい未来を探るための彼らの提案を受け入れていれば、このようなことが起こることはなかったかもしれない。
その代わりに、PGAツアーとの戦略的提携が生まれ、世界のプロゴルフ界の不和な時代に突入したのだ。
欧州ツアーの元最高経営責任者ケン・スコフィールド氏は、「米ゴルフダイジェスト」のインタビューで「サウジ側と協力しないことに驚いた」と語った。
「もし当時、サウジが私たちのところに来ていたら、取締役会は彼らと前進する方法を見つけるよう、要求しただろう。今、欧州ツアーはモナハン氏(PGAツアー)の言いなりになっている」
一方、「ライダーカップ」の元キャプテンのポール・マギンリーは、ペリー氏に次のように理解を示している。
「新型コロナウイルス・パンデミックの危機を乗り越え、強力で持続可能な財務状況を作り上げたことは驚くべきこと。そして最も重要なのは、PGAツアーとPIFの交渉が行なわれているテーブルに欧州ツアーも座っていることだ。キース・ペリーの在職期間を災難と見なす人がいるが、理解できない」
ゴルフの近代化に貢献したスランバーズ氏
スランバーズ氏がR&Aの最高経営責任者として9年間在任し、特にトップアマの女性のゴルフを代表するレディースゴルフ連合との統合を通じて欧州ゴルフ発展の先頭に立ったという評価は、それほど意見の分かれるところではない。
また、R&Lが「AIG全英女子オープン」の運営を引き継いで以来、賞金は2018年の325万ドルから2023年には900万ドルにまで増加したのだ。
63歳の彼の退任に関して唯一意見が分かれたのは、全米ゴルフ協会(USGA)と提携してディスタンス・インサイト・プロジェクトを推進する上での同氏の役割についてである。
このプロジェクトでは、長年争われてきたゴルフボール技術の引き戻し(飛ばないボールを使用)が2028年1月から予定されているが、一部の人々の間では、引き戻しが進歩と革新を抑制しているという意見もある。
Text/Euan McLean
ユアン・マクリーン(スコットランド)
スコットランド・グラスゴー在住のスポーツライター。『サンデーメール』などに寄稿。欧州ツアーなど過去20年にわたり取材。