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【世界のゴルフ通信】From Asia 欧米ツアーの縄張り争い! 欧米ツアーのアジア侵入が試合数に影響

今年のアジアンツアー開幕戦「IRSプリマ・マレーシアオープン」は2月15日~18日に開催され、LIVゴルファーのデビッド・プイグ(中央)が優勝した。左はマレーシアでトップの成績を収めたカビシュ・バラダン、右はローアマのラチャノン・チャンタナヌワット。©Asian Tour
PIF(サウジ政府系ファンド)の資金を投入して開催されている、アジアンツアーの中でも高額賞金試合「インターナショナルシリーズ」。写真は昨年のカタール大会で優勝し、今年はLIVゴルフでプレーしているアンディ・オグレトリー(中央)。左はアジアンツアー・コミッショナーのチョ・ミンタン氏。©Asian Tour
4月1日に辞任するDPワールドツアーCEOのキース・ペリー氏(左)と、PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏。©GettyImages

今もなお混迷の世界の男子ゴルフ界

2月中旬、アジアンツアーがマレーシアの首都クアラルンプールで2024年シーズンのスタートを切った時、男子プロゴルフ界の、複雑な議論は収まる兆しがなかった。
皆さんの中には、PGAツアー、LIVゴルフ、DPワールドツアーが男子ゴルフの全てであり、最終的なもののように思っている人もいるかもしれないが、最近の議論の大部分は、現在進行中の論争、および数十億ドルの取引や、既に億万長者である選手への数百万ドルの支払いについて集中している。
一般のゴルフファンにとっては、富裕層がますます裕福になることについて絶え間なく聞かされることは、かなり不快なことだろう。
特に多くの生活分野で、削減や緊縮財政が行なわれている時代には……。

PGAツアー、LIVゴルフ(およびサウジアラビアの公的投資ファンドであるPIF)の関係者たちは、両組織が独立して調和し、機能することが可能な何らかの共通点を見つけようとしているが、他のツアーには、あまり関係のない話である。

欧米ツアーの不当な侵入を受けてきたアジアンツアー

何十年もの間、アジアンツアーはアメリカとヨーロッパのお偉方から、二流の市民のように扱われてきた。
PGAツアーのジェイ・モナハン氏とDPワールドツアーのキース・ペリー氏、および彼らの前任者たちは、アジア地域でいくつかの共催試合を開催することで、アジア全体でのゴルフの成長に、彼らがどのように貢献したかを好んで語っていたものだ。
彼らの言葉は空虚なものだったが、結果的に二重の目的を果たしたといえよう。
つまりアジアで試合を開催したことで、彼ら自身を満足させ、アジア開催を進めるために「自分達は正しいことをしている」という自己正当化を可能にしたのだ。
もちろん現実は、彼らが単に自分自身と選手達の利益を追求していただけであり、公正を期すために言うと、それは彼らがそれぞれのポストで指揮を執る際に与えられた使命だった。
彼らがアジアでゴルフを発展させたり、永続的な遺産を残すことに真剣に取り組んでいたというわけではなく、それを示すわずかな証拠もない。
考えてもみて欲しい。
約20年前、DPワールドツアー、または当時、ヨーロピアンツアーとして知られていた組織が、アジアの地で試合を行なうにもかかわらず、アジアンツアーと共催試合を開催することもなかったほど、鈍感で、傲慢、大胆不敵だったことを……。
これは、その組織(欧州ツアー)が地域の主要なツアー(アジアンツアー)と長期にわたって友好的、かつ相互に有益な関係を育成しようとしているとは到底解釈できないものだ。
当時のアジアンツアー・コミッショナーはこれを侵略行為と呼び、「アジアへの侵入」と非難した。
それ以来、ゴルフの「縄張り争い」におけるアジアの重要性は変わっていない。
ライバルツアー間の協力や、他者との地理的境界を尊重するというリップサービスは忘れたほうがいい。
それは今や、単に各自の利益を追求するためのものだからだ。

2023年、PGAツアーは「ZOZOチャンピオンシップ」を日本で開催し、日本ツアーメンバーにも限られた出場枠が割り当てられた。
一方、2024年のDPワールドツアーは、昨年11月末のオーストラリアでの2試合(フォーティネット・オーストラリアPGA選手権とISPS Handaオーストラリアンオープン)で開幕。
3月の第4週~5月の第1週までの期間、新設された「アジアンスイング」がシンガポール(ポルシェ・シンガポールクラシック)、インド(ヒーロー・インドオープン)、韓国(韓国選手権)、日本(ISPS Handa選手権)および中国(ボルボ・チャイナオープン)で開催される。
これらの5試合の合計賞金は1125万ドル(約17億円)だが、ほんのわずかなアジア人選手しか賞金獲得のチャンスがないことは悲しいことだ。
それに飽き足らず、欧州チャレンジツアー(下部ツアー)がインド(3月)と中国(10月)でそれぞれ2週間、試合を予定しており、シニア向けのレジェンドツアーが、11月の最終週にベトナムで開催される予定だ。

一方、おそらく最も衝撃的なのは、アジアンツアーでは2024年に中国本土、またはインドで1試合も開催されないという事実である。

昨年よりもさらに前進?!
今年のアジアンツアーのスケジュールに注目

アジアンツアーは昨年12月末に、2024年には12か国で20試合を開催するという当初のスケジュールを発表し、「かなりの数の重要なトーナメントが、追加される予定だ」と伝えた。

「最終決定すれば、スケジュールは2023年を上回ることが予想される。
咋年は、23試合が開催され、賞金総額は3500万ドル(約52億7000万円)だった」とアジアンツアーは声明で発表している。
これには、PIFが後援する10の「インターナショナルシリーズ(高額賞金イベント)」が含まれており、最低200万ドル(約3億円)の賞金総額と、来季のLIVゴルフの出場枠を獲得するために必要な「インターナショナルシリーズ」独自のポイントが与えられる。
これにより、アジアンツアーはその翼を広げることができたのだ。
昨年、このシリーズは、イングランドとスコットランドで開催されたが、今年は2月の最終週にオマーンで開幕し、マカオ、モロッコ、インドネシア、カタールで開催される。
また、「香港オープン」は再びインターナショナルシリーズの一部となり、2022~2023年にはアジアンツアーの開幕戦だった「PIFサウジ・インターナショナル」は今年の後半に開催されることになっている。
追加の日程は間もなく発表されるが、インターナショナルシリーズの3試合増が、発表されることになっている。

アジアンツアーのコミッショナー兼CEO、チョ・ミンタン氏は、次のように語っている。

「アジアンツアーの2024年のスケジュールは強化され、それはこれまでの驚異的な成長を反映している。インターナショナルシリーズの試合と、従来の試合の中心的な柱を組み合わせたものが、ツアーの根幹を形成しており、同時に、今後他のプレミア大会を発表できることを楽しみにしている」

Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)

ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。

アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。

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