タイガーとPIF総裁が急接近
3月中旬、リンデン・ピンドリング国際空港には、PGAツアー、DPワールドツアー、およびサウジアラビアの公共投資ファンド(PIF)の責任者たちが集結し、ゴルフの未来を築くために会合を開いた。
排気ガス、着陸料、保安検査、そしてバハマの首都へ向かう際に伴うあらゆる煩わしさを乗り越えた後、会議は順調に進行したようだが、ゴルフ界を2年間にわたって巻き込んできた争いの解決までには、まだまだ遠い道のりのようだ。
明らかになった情報には、会議がタイガー・ウッズの邸宅があるナッソー郊外のアルバニーリゾートで開催されたこと。
そしてメジャー15勝のウッズが、LIVゴルフを支援するPIF総裁のヤシール・アル・ルマイヤンに会談を持ちかけ、一緒にゴルフをしたことが含まれている。
ゴルフ界最大のビッグネームであるウッズと、7000億ドルを超える、世界で最も利益の高い主権基金(PIF)のトップであるルマイヤンが、どのような絆を構築したのかは不明だ。
PGAツアー、PIF、SSGの関係は?
ところで、昨年6月に発表され、12月31日を期限としていた「枠組み合意」は、解決には至っていないようだ。
いったいこの間に何を行なってきたのか?と誰もが疑問に思うことだろう。
会議に出席したPGAツアー政策委員会の6選手のうちの1人であるウェブ・シンプソンは、「私たちはSSGと優先順位を調整し、それをまず解決したかった」と述べた。
「SSGとの契約が成立して良かった。これは間違いなく、今後の私たちにとって力の源だ」
シンプソンが言及したのは、ボストン・レッドソックスのオーナーであり、フェンウェイスポーツグループの一員でもあるアーサー・ブランク氏やジョン・ヘンリー氏を含む、裕福なスポーツオーナーのコンソーシアムであるストラテジック・スポーツ・グループ(SSG)のことだ。
このプライベートエクイティ会社(株式の未公開会社)は、PGAツアー選手にPGAツアーエンタープライズ、理論上はPIFも含む新しい営利企業の株式を提供するための方法として、既に議論されている15億ドルの初期投資で、最大30億ドルを出資すると言われている。
懐疑論者の中には、SSGの関与はPGAツアーがPIFを追い出すのが目的ではないか、と指摘する人もいるだろう。
会議で選手理事であるジョーダン・スピースとアダム・スコットは、今年の初め、SSGとの取引が発表された後に、PIFの投資はもはや必要ないと述べていた。
PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏は会合の後、PIFとの交渉は「加速した」と述べ、バハマでの会合後に何が起こったのかを大まかに説明したメモを送った。
「全体を通しての会話は建設的であり、PGAツアーエンタープライズへの潜在的な投資家を選定するための適正評価手続きのプロセスの重要な部分を表している。これは、今年初めにSSGからの投資提案を評価する際に採用したアプローチと一致している。セッション中、ヤシールは選手理事会メンバーに自己紹介し、プロゴルフへの投資のビジョン、優先事項、動機について話す機会があった」
最終的に枠組み合意が実現するかどうかはまだわからない。
今後数か月にわたり、最高の選手たちの一部がメジャー以外で一緒に競技に出ることが禁止されているため、かなりの憶測が飛び交うことになるだろう。
PIFと手を組まないとどうなるのか?
シンプソンはその後、PIFとの契約が成立しないことは「非常に危険だ」と述べ、将来的にPGAツアー選手がLIVゴルフによって「引き抜かれる」可能性にも言及した。
彼はまた、SSGへの投資がPIFにとってセールスポイントになる可能性があるとも考えている。
PIFは世界中の数多くのところに資産を分散させており、ゴルフ以外の分野でもSSGを潜在的なパートナーと見なす可能性があるかもしれないと指摘しているのだ。
シンプソンは「関与している人たちは非常に成功していると言っても過言ではない。既にプロダクトに興奮している人たちについて、潜在的な投資家なら誰でもワクワクするだろう。彼らは良い仲間だ」
このことは、12月にSSGとの交渉が公になった時からPGAツアー側で話題になっていた。
しかし、それがPIFとの合意に影響を与えるかどうかは、まだ不透明だ。
だが、合意が成立しないことには、明らかに双方にとってリスクがある。
PGAツアーは、LIVゴルフへの人材流出が続く可能性に直面しているのだ。
一方、PIFは、ゴルフというゲームの中で部外者であることに気づくだろう。
アル・ルマイヤンの大きな目標は明らかではないが、過去の行動を見て判断するに、彼は明らかに座席を確保したいと切望しているようだ。
しかし、彼はLIVゴルフに何を求めているのか、そしてLIVに参加した選手がPGAツアーに戻れるようにするにはどうすれば良いのだろうか?
PIFと合意しなければ、PGAツアーからのLIVへの人材流出は免れない
今後、ツアーとPIFが目指していくもの
ピーター・マルナティも、選手理事会メンバーであるT・ウッズ、W・シンプソン、A・スコット、J・スピース、パトリック・キャントレーとともに会議に参加した。
マルナティは、「メジャーに限らず、最高の選手が一堂に会するのを見たい」とその願望を繰り返し語った。
「プロゴルフ界の発展にとっては、アル・ルマイヤンと対立するよりも、我々の仲間に置いた方が理にかなっていると今でも思っている。しかし、プロゴルフの将来について、同じビジョンを見るためには、やるべきことがたくさんある。彼と私たちのビジョン間にはギャップがある」とマルナティは述べた。
しかし、そのギャップは埋めることができるのだろうか?
もし埋められるなら、どのような形になるのか?
既存のツアーに加えて、「チャンピオンズリーグ」タイプのワールドツアーが設立されるのだろうか?
LIVプレーヤーはPGAツアーとDPワールドツアーでプレーすることができるのだろうか?
さらに、現在54人の選手で構成されたLIVゴルフで、PGAツアーやDPワールドツアーの選手はプレーできるのだろうか?
解決しなければならないことはまだまだたくさんある。
と同時にゴルフファンはこのゴタゴタにますますガッカリしている。
Photo/Getty Images、R&A
Text/Bob Harig
ボブ・ハリグ(アメリカ)
Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。
Photo/Getty Images、Eiko Oizumi