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【ゴルフ上達のメンタル法】vol.21「自分の能力を最大限に引き出すためのメンタルコントロール」

ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!

自分の「心」を味方につければミスは激減する!

練習場で十分に練習し、ショットの調子に自信を持ってコースにやってきたとしても、実際ラウンドしてみるといろいろな状況に出くわして大叩きしたり、精神的にプレッシャーがかかったりして、思うようなゴルフができない。
そんな悩みに対して、今回はQ&A形式で、ジョー・ペアレント博士がアマチュアの悩みに答える。

Joe Parent
(ジョー・ペアレント)

過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com

ショットの結果を考えすぎると、緊張してスイングの流れを妨げてしまいミスショットになりやすい

Illustration/Masaya Yasugahira

自分の成功を邪魔せずにプレーする方法

メンタルゲームでパフォーマンス(ゴルフの腕前)が向上するか?
それはもちろんだ。
しかし、それは肉体的および技術的能力の限界までの話である。
メンタルゲームコーチとしての私の仕事は、ゴルファーのショットの分散パターンに収まる確率を最も高くできるようにすること(打球ができるだけフェアウェイ内に収まるようにすること)だ。
クラブごとの分散パターンとは、精神的な干渉なしに、自由で献身的なスイングをした時に、大部分のショットが着地する領域のことだが、アベレージゴルファーはプロよりも広い分散パターンを持ち、初心者ならさらにもっとショットの着弾地点が散らばる。
言い換えれば、メンタルゲームコーチングの目的は、自分自身の邪魔をしないようにし、自分の能力を最大限に発揮できるようにすることだ。
そしてそれは、その日の能力のレベルが、どのようなものであっても当てはまることである。

今回は、メンタルゲームに関して、よくある質問へのいくつかの回答を紹介しよう。

質問1

練習場ではうまく打てるのに、コースに出ると緊張してうまく打てなくなるのはなぜ?

回答

こんなショットが打ちたい、という結果を考えすぎると、正しくショットができなくなることがある。
緊張で体が思うように動かなかったり、ショットに対する期待で興奮してしまったりするのだ。
どちらにしても、ルーティーンやスイングの流れを妨げることになる。
より良いショットを打つためには、次の4ステップのプロセスに完全に集中しよう。

❶ボールが落下した時に、あまりにもひどいトラブルに陥らないような、自分の希望する位置に留まるターゲットを選ぶ。

❷そのターゲットに対して、打ちたいショットのイメージをしっかり持つ。

❸そのイメージを生み出すための、スイングを感じる。

❹そのスイングにコミット(専念)する。ルーティーン→アドレスと、スムーズな流れを保ち、スイングのテンポを良くする。

このようにスイングするまでの過程・流れを大切にすれば、結果は自ずとついてくるのだ。

質問2

いいショットを打ちたいと思うほど、うまくいかなくなるのはなぜ?

回答

特別な打ち方をしようとせずに、無心でスイングした時を思い出して欲しい。
結果はおそらくよかったにちがいない。
これは何かといえば、その時はスイングをコントロールしてショットしようとはしていなかったのだ。

スイングをコントロールしようとすると、思考力を使うことになるが、それが自由なスイングを妨げる。
スイングを自然に任せると、たとえスイングのコントロールを放棄したと感じても、実際にはコントロールを失ったのではなく、潜在意識に移しただけなのだ。

意識的に潜在意識にコントロールを引き渡すためのテクニックを紹介しよう。

スイングする前に、心の中で自分の体に「あなたに任せるよ」や「さあ、引き継いで」などと言い聞かせよう。
それは思考を手放す合図となり、意識的な精神介入のないスイング、つまり潜在意識によって体を動かすことができるようになる。
そうすることで、あなたの体が知っている最高のスイングが繰り返しできるようになるのだ。

質問3

プロゴルファーがティーショットを打つ前に深呼吸するのを見たことがあるが、それをオススメするか?

回答

ショット前のルーティーンの一環として、素振りの後、ボールに向かう直前に深呼吸すると非常に効果的だ。
息を吐き出す時に、緊張や不安が一緒に流れ出ていくのを想像してみよう。
自然と地に足がついて、落ち着いた感覚が得られターゲットに集中しやすくなる。
スイングのテンポもより安定する。
そして肩を上げないように注意し、体全体が空気で満たされるように感じながら、鼻から主に息を吸い込んでみよう。
主に口から息を吐き、吸った時よりも少しゆっくりと息を吐こう。
アドレスに入る前に、完全に息を吐き切ることが大切だ。

また、呼吸に自分の展開したい感情を呼び起こすフレーズを組み合わせることもできる。
例えば、息を吐きながら「息を吐き、地面を感じよう」と言うことも可能だ。
そして、ゆっくりと歩いてアドレスに入り、地に足をつけた状態でスイングの準備ができていると感じよう。

*呼吸に関する身体的問題がある場合は、医療専門家に必ず相談してから、この呼吸法を行なってください。

ショット前に深呼吸するニック・ファルド。2013年「SAS選手権」にて。©GettyImages

ミスショットした時は怒ってもいい
だが、それは数秒間だけに収めること深呼吸して、負のスパイラルを断ち切ろう

ミスショットして、地面を蹴って悔しがるセベ・バレステロス。1995年「ジョニー・ウォーカークラシック」にて。©GettyImages
パットを外し、歯を食いしばって悔しがるアダム・スコット。2014年「オーストラリアン・マスターズ」にて。©GettyImages

質問4

ショットが悪いと腹が立ち、その後のショットがさらに悪くなることがある。どうすればいいか?

回答

ショットがうまくいかなかった場合、ほとんどの人は最初に怒りやフラストレーションを感じる。
悪いショットに対して腹を立てるのは当然だし、数秒怒りの感情が爆発することは、大した問題ではない。
問題は、その感情を引きずって次のショットに悪影響を与え、負のスパイラルを引き起こすことだ。
怒ることは問題ないが、その後は気持ちを切り替えよう。
ネガティブな感情を払拭するためのルーティーンを紹介しよう。

最初に感じた激しい怒りが収まったら、深呼吸を数回してみよう。
息を吐き出しながら、ネガティブな感情が流れ出るのを感じ、そのエネルギーをポジティブなプロセスに変えるのだ。
前のショットで本当は打ちたかったスイングを再現できるまで1~2回、素振りをしよう。
その違いを感じることで、次のショットに最善の準備をするために何が必要かがわかる。

このミスショット後のルーティーンをすることによって、負のスパイラルから抜け出せる。
最後のスイングは悪いものではなく良いものであり、集中力がそらされてしまうネガティブな感情からポジティブな感覚に焦点を移すことができる。

また、心の状態が体に影響を与えることを知っておくと役立つ。
精神的に落ち込んだり、動揺したりすると、体はぎこちなく不安定になる。
一方、幸せで自信がある時は、体は快適で元気に満ちている。
最後の数ホールをプレーするゴルファーの歩き方を見れば、どのゴルファーが調子が良いのか、苦戦しているのかがわかる。

逆に、体も精神状態に影響を与える。
頭を下げ、肩を落とした姿勢で歩くと、心は物事がうまくいっていないことを察知するのだ。
自信を失い、状況はさらに悪化する。
だが、必ずしもそうである必要はないのだ。
たとえミスショットを打っても、次のショットに向かう時には前向きな姿勢で歩こう。
アゴを上げ、肩を後ろにそらして胸を張るのだ。
良い姿勢を保っている自分を意識すると自信が湧き、状況を好転させるチャンスが生まれる。

ゴルフをもっと楽しめばプレーも上達する
ミスしても前向きに!

胸を張って、ポジティブな姿勢で次打の地点に歩くビクトル・ホブラン。2024年「アーノルド・パーマー招待」にて。©GettyImages

質問5

ポジティブなセルフトークが重要だと感じるのはなぜ?

回答

ゴルファーが自分をネガティブな名前で呼んだり、自分のプレーをネガティブに表現したりするのをよく耳にするが、問題は、そういったことを言うだけでなく、聞くこともあるということだ。
そして、いくらそれを気にしないようにしても、実際にはそれが内面に入り込み、私たちに影響を与えてしまう。

自分をハッカー(下手なゴルファーのこと)、あるいはもっとひどい言葉で呼ぶと、次のショットを失敗することを無意識に期待してしまう。
それが結果に対する不安を引き起こし、スイングの緊張感がその不安を現実にしてしまうのだ。
もしトーナメントで友人のキャディを務めれば、友人がミスショットを打った時に、「キミはなんて下手なゴルファーなんだ」と叱ったりはしないだろう。
おそらく、前向きで協力的な態度を取り、次のショットを打つ前に適切な計画を立て、落ち着いて準備を整えるように励ますだろう。
そこで自分自身にとって良いキャディになってみようではないか?
セルフトークをポジティブに保ち、ルーティーンの要点を思い出し、自分がキャディをしている場合に、自分と同じレベルのプレーヤーに勧めたいショットを選んでみよう。
前向きな姿勢でいれば、プレーが上達するだけでなく、より楽しい時間を過ごすこともできる。
多くの人は「もっと上手にプレーできれば、もっとゴルフを楽しめるのに」と考えるが、私はその逆だと思う。
ゴルフをもっと楽しめば、プレーも上手くなるだろう。

Illustration/Masaya Yasugahira 

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