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【世界のゴルフ通信】From Latin ジョン・ラームの苦難とラテン系選手のオリンピック

今年からLIVゴルフでプレーしている、スペインのジョン・ラーム。まだ個人戦優勝はない。©LIV GOLF

米国で地獄に落とされたスペインの英雄

ジョン・ラームは、ゴルフのような、紳士のスポーツにあるはずの「フェアプレー」からは程遠い米国での嫌がらせと破壊活動に苦しんでいる。
一方、ラテン系ゴルファーや一部のスペイン人ゴルファーは、その根底にある悪の恩恵を受けているようだが……。

3年ちょっと前、ジョン・ラームは、スペイン人として初めて「全米オープン」で優勝し、ゴルフ界の英雄となった。
彼はゴルフ史において、重要な1章を書き込み、このスポーツの神々に祝福されたのだ。
そしてその2年後、彼はオーガスタの地で優勝し、「マスターズ」のタイトルを獲得。
神々は彼に微笑みかけ、彼は偉大な選手たちと並んで、オリンポスの頂に座したのだった。
しかし今日、バスク地方出身のジョン・ラームは地獄に落ち、天使から悪魔に変わってしまった。
そして、アメリカの一部のメディアと支配層だけがそのような視点を持っているのは事実だが、彼らこそが米国ゴルフで育ち、教育を受け、勝利を収めたラームに最もダメージを与えたのだ。

では、その間に何が起こったのだろうか?
ラームは、他の偉大なスペイン人アスリート、例えばテニスのラファエル・ナダルのように、アラブリーグの何百万ドルに魅了され、LIVゴルフというダークサイドに落ちたのだ。
これは、以前の上司とはうまくいかなかったフリーワーカーが、新しい会社を選ぶという合法的な行為と同じである。
しかし、多くの人が忘れているデータを分析してみよう。
ジョン・ラームは、観客やスポンサー、ファン、そしてお金を引き寄せる1つの「ブランド」であるが、PGAツアーが2000万ドルの賞金と700ランキングポイントを提供する「シグネチャーイベント」と呼ばれるイベントを創設したのは、ラームを含む主要選手たちのおかげであることも無視するつもりだろうか。

LIVゴルフとラームのおかげで、ゴルフファンの平均年齢は低下しており、ラテンアメリカやスペイン、イタリアのようにゴルフファンが少ない一部の国では依然としてエリートスポーツの汚名を着せられているものの、現代的になり、ゴルフ人気が高まっている。
これは真実である。

スペインには「悪い知らせをもたらしたメッセンジャーを殺してはいけない」ということわざがあるが、PGAツアーが元通りにならないのはラームのせいではない。
このスペイン人選手は、自分の歴史を作るために別の道を選んだにすぎないのだ。

いよいよオリンピックが開幕! 
誰がメダルを獲る?

LIVゴルフで今季、個人戦で2勝を挙げているチリのホアキン・ニーマン。「パリオリンピック」にも出場する。©LIV GOLF
ホアキン・ニーマンと同じチーム(トルクGC)でプレーしているセバスチャン・ムニョス。©LIV GOLF
今年はLPGAツアー「フォード選手権」で3位タイ、女子海外メジャーの「シェブロン選手権」で6位に入賞しているカルロタ・シガンダ(スペイン)。©GettyImages
今年は9試合中、7試合で予選落ちし、苦戦中のマリア・ファッシ(メキシコ)。©GettyImages

男女合わせて120人のゴルファーが出場権を獲得する「オリンピック」が注目される中、パリは今夏のゴルフの一大イベントとなるだろう。
「オリンピック」ゴルフランキングによれば、男子は米国が大本命という見方が強い。
スコッティ・シェフラー、ザンダー・シャウフェレ(東京五輪・金メダリスト)、ウィンダム・クラーク、コリン・モリカワが上位9位以内に入っており、メダルを獲得するのではないか、と見られている。

過去の大会では、ダスティン・ジョンソン、ジョーダン・スピース、ジェイソン・デイなど、多くのビッグネームが「オリンピック」を辞退したが、彼らは「オリンピック」が単なるもう1つの大会であり、大会フォーマットが退屈で興味を欠くと主張している(リオデジャネイロや東京と同じ形式)。
しかし、今年はノルマンディー上陸作戦80周年にあたり、戦場はパリ。
伝統的なゴルフとジョン・ラームの対決となる。

ラームは、新型コロナウイルス感染症の影響で「東京オリンピック」に出場できなかったが、幼い頃から「オリンピック」のメダル獲得を夢見ていたため、今年は念入りに準備を進めている。
バスク地方出身の彼は、スペインゴルフ界の期待のメダル候補の1人だったが、LIVゴルフでの成績不振により、有力候補としての地位は危うい。
アドリアン・オタエギ(DPワールドツアー)、デビッド・プイグ(LIVゴルフ)、ホルヘ・カンピーヨ(現在PGAツアーにいる唯一のスペイン人)が候補として挙がっている。

ラテンアメリカのゴルフに関しては、チリのホアキン・ニーマン(「東京オリンピック」10位タイ)がLIVゴルフでの好成績(今季2勝、7試合中6試合でトップ10)を背景に、メダルの有力候補だ。
また、コロンビアのセバスチャン・ムニョスは、「東京オリンピック」4位タイを上回る順位を目指す。
アルゼンチンのエミリアーノ・グリジョは、2016年の「リオオリンピック」で8位タイに入賞。
現在世界ランキング54位の彼に期待が寄せられている。

女子ゴルフでも、米国はネリー・コルダを筆頭に無敵の存在だ。
ネリー・コルダは東京で金メダルを獲得しており、若いローズ・チャンやリリア・ヴーも登場している。
ニュージーランドのリディア・コー(リオで銀メダル、東京で銅メダル)は、金メダルを獲得し、メダルコレクションを完成させたいと考えている。

カルロタ・シガンダ(世界ランキング29位)はスペイン代表であり、ラテン系選手の中で最高順位の選手だ。
コロンビアのマリアホ・ウリベが今年で引退を表明しているが、世界ランキングを見ても、女子のラテンゴルフはこの4年間大いに低迷している。
欧州女子ツアーの活性化や「アラムコ・チームシリーズ」の導入、そして「ソルハイムカップ」での欧州チームの強さにもかかわらずである。

LPGAでは、メキシコのマリア・ファッシもラテンアメリカ勢の中で注目されている。
2019年4月、彼女は第1回「オーガスタ女子アマ」でジェニファー・カプチョに次いで2位に入り、2019年「全米女子オープン」でプロデビューを飾った時は、12位タイの成績を収めた。

果たしてパリでは、サプライズが起こるだろうか?

Text/Isabel Trillo Amores

イサベル・トリロ・アモーレス(スペイン)

PGA・オブ・スペインのコミュニケーションディレクター。80年代後半からゴルフ取材を始め、その数は世界250試合以上。ゴルフのラジオ番組も手がける。

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