今回も「個人戦」で行なわれる五輪ゴルフ
7月26日に開幕した「パリ五輪」。
112年ぶりに「リオ・デ・ジャネイロ大会」(2016年ブラジル)で五輪種目として復活したゴルフは、東京(2021年日本)に続き、3回目の決戦に向けて盛り上がりを見せている。
舞台となるのは、パリ郊外のル・ゴルフ・ナショナル。
男子は8月1~4日。女子は7~10日と五輪終盤の注目競技だ。
稲見萌寧が銀メダルを獲得し、松山英樹がプレーオフで惜しくもメダルを逃した「東京大会」に続き、金メダルを獲得したい日本勢は、比較的すんなり代表が決まった男子に対し、女子は最後まで大激戦が繰り広げられた。
前の2大会に続いてフォーマットは、男女それぞれ60人の個人戦。
各国代表は、世界ランキングを基準にしたオリンピックランキングによって決められる。
男子は「全米オープン」週終了、女子は「KPMG全米女子プロ」週終了時点で、基本的には各国最大2人まで。
ただし世界ランキング15位以内の選手が複数いる場合、上位4人までが出場できる。
男子は松山、中島
女子は笹生、山下が日本代表
男子は、「ジェネシス招待」で優勝し、「全米オープン」でも6位と実力を見せた松山英樹(代表決定時オリンピックランキング9位)と、DPワールド(欧州)ツアーを主戦場にし、「ヒーロー・インディアンオープン」で初優勝した中島啓太(同31位)が代表となった。
DPワールドツアーの昨年の新人王で、ル・ゴルフ・ナショナルでの「フランスオープン」で優勝した久常涼が3番手(同93位)。
今季も中島同様、DPワールドツアー中心の星野陸也が4番手(同109位)につけていたが、代表入りがかなわなかった2人も含めて、海外で戦う選手が多く、世界ランキングポイントを稼いでいることがはっきりと見て取れる。
五輪出場選手の決定ギリギリまで大混戦だった女子
土壇場で大きく順位が入れ替わった女子の涙と歓喜
一方の女子は、リオ、東京以上にどんでん返し続きだった。
畑岡奈紗、笹生優花、古江彩佳、渋野日向子、西村優菜、勝みなみ、西郷真央、稲見萌寧と8人が米ツアーに常駐。
4日間大会が増え、海外で結果を出し、ランキング上位にいる選手が出場すればその大会のポイント配分が上がる相乗効果。
ランキング上位の資格でメジャーには多くの選手が出場し、結果を出してポイントを稼ぐため、想像以上に順位が入れ替わったのだ。
「全米女子オープン」前までは、今季は優勝こそないが、米ツアー6勝の実力者、畑岡が日本勢トップの18位におり、次は日本の2年連続年間女王で、基本は日本でプレーしている山下美夢有(23位)。
25位の古江、30位の笹生と3人が僅差で2番手の座を争っていた。
ところが、「全米女子オープン」で笹生が優勝したことで、状況は大きく変わった。
笹生が6位に躍進し、44位タイに終わった畑岡は19位で2番手に後退。
古江(22位)、山下(25位)が肉迫する。
畑岡はこの後、不運が続いた。代表決定まで残り3試合となった「ショップライトLPGA」で好発進しながら、ロストボールを探す時間が長すぎたことが後になって発覚して失格。
次の「マイヤーLPGA」にはエントリーしていなかった。
この間に、古江が「ショップライト」2位タイ、「マイヤーLPGA」8位タイと上位に入って20位となり2番手に浮上。
畑岡は21位の3番手に転落し、山下が22位で迫る状況に追い込まれた。
後がない状況で迎えた最後の1戦、「KPMG全米女子プロ」で、畑岡はまさかの予選落ち。
大会終了後にはランキング24位と日本勢4番手で涙を呑んだ。
笹生は「全米女子プロ」68位と不本意な結果に終わったが、〝貯金〟が効いてランキング10位で代表決定。
「全米女子オープン」の優勝スピーチで口にした通り、母の母国フィリピン代表として出場した東京大会に続き、今度は日本代表としての五輪に挑む。
最後までデッドヒートを演じたのは、古江と山下だ。
大会前には古江が20位、畑岡を間に挟んで山下が22位。
大会2日目を終わって2人ともいい位置にいるという状況だった。
しかし、週末になって明暗が分かれた。
上位でプレーを続け、2位タイと大健闘した山下が、ランキングを3つ上げて19位にジャンプアップして代表に飛び込んだ。
19位タイに終わった古江は20位と惜しくも代表入りを逃した。
これほど激戦になった理由は明白だ。
前述のように日本でも結果を出し続ければポイントが稼げるようになってきたこと。
米ツアーで踏ん張り続け、メジャーでも上位に入りやすい常駐組に対し、スポット参戦組もメジャーで上位に入ることができるようになってきたことだ。
ここには選手個々のレベルアップだけでなく、シーズン中はほぼ毎週試合があり、4日間大会も増えてきた日本ツアーそのものが力をつけたという事情がある。
選手個々が各ツアーに進出し、レベルアップしているが、ホームツアーは残念ながら試合が少ない上にポイント配分も減っている男子とは対照的だ。
いずれにしても今回、日本の代表は男女ともに2人ずつ。
メダルも十分に狙えるメンバーだけに、五輪本戦での戦いぶりも楽しみだ。
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。
現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。