世界にはゴルフ文化のない国、あるいは最近ゴルフ場ができたばかりという国がいくつもある。
ここでは、「ゴルフ発展途上国」の歴史と文化、“ゴルフの夜明け”との関係性などを紐解いていく。
第20回はカーボベルデ共和国 を紹介する。
カーボベルデ共和国
西アフリカの沖合に浮かぶ無名の火山島国家「緑の岬」
10の火山島から成る西アフリカの島国
西アフリカの島国で、大西洋に浮かぶ10の火山島から構成されているカーボベルデの群島は、約4億年前に形成された、ガンビア、モーリタニア、セネガルの西海岸に近い、馬蹄形の国である。
首都はサンティアゴ島のプライアで、1456年にジェノバ出身のアントニオ・デ・ノリが発見するまで無人だった。
後に彼はポルトガルの探検家ディオゴ・ゴメスと航海し、サンティアゴに上陸。名前をつけたという。
なお、この国の名前は、アフリカ大陸のセネガル領カーボベルデ(ポルトガル語で「緑の岬」の意)に由来し、ヨーロッパ人が初めて熱帯に植民地を築いた場所となっている。
1462年にポルトガル人入植者が到着し、リベイラ・グランデの入植地を建設。
16世紀からは、大西洋奴隷貿易において重要な役割を果たした。
1974年に勃発したポルトガル革命は、カーボベルデとポルトガル領ギニアの活動を活発化させ、翌1975年にカーボベルデはポルトガルから独立した。
天然資源はほとんどなし
観光業が急速に発展
カーボベルデの経済の、75%のビジネスがサービス業であり、天然資源はほとんどなく、2007年以降、発展途上国に分類されている。
10の島々のうち、半分の島だけが大規模な農業生産を支え、食糧の90%を輸入に頼っているが、人口の3分の1以上が農村地域に住んでいる。
カーボベルデの経済は、あらゆる面でポルトガルとの強固な結びつきが今でも見られ、通貨や賃金構造、資本流入、国際組織への関与に至るまで広がっている。
そんな中で、観光業は急速に成長しており、失業率も低下。
貧困レベルも改善されている。
カーボベルデは、大西洋の中央に位置し、航空及び海上交通の交差点にあることが、観光業の成長を助長しているのだ。
現在、4つの国際空港があり、ヨーロッパから南米へのルートの一部になっている。
アフリカ、ヨーロッパの文化の融合
カーボベルデの文化は、15世紀から進化し、アフリカとヨーロッパの生活様式が時間をかけて混ざり合い、独自の文化や社会を生んだ。
キリスト教が主流で、ローマ・カトリック教徒が80%以上を占めており、ユダヤ教徒も植民地時代に存在していたという。
またポルトガルの教育制度と並び、カーボベルデはアフリカで最高の教育を提供。
初等教育は義務教育で、6歳から14歳までの全員に無料で提供されている。
就学率は90%近くに達しているほどだ。
識字率は90%以上で、25%以上が大学の学位を取得。
女性は学生の3分の1を占めており、卒業生の3分の2は女性である。
バスケが人気
ゴルフ場は国内に2か所のみ
スポーツについては、バスケットボールが非常に人気で、2007年には「FIBAアフリカ選手権」で銅メダルを獲得。
また、カーボベルデは、アフリカで最も人気のあるウィンドサーフィンのデスティネーションとなっており、多くのサーファーが訪れている。
さらに1996年以降の全ての夏季オリンピックに参加しており、2016年のパラリンピックでは、グラセリーノ・バルボサが陸上400メートルレースで銅メダルを獲得した。
さて、ゴルフであるが、まだまだ発展途上の段階。
18ホールのコースが2つあり、1つはサンドコース、もう1つは芝のコースだ。
現在、ゴルフ連盟は存在していないが、今年中には設立予定だという。
サン・ビセンテゴルフクラブ
Sao Vicente Golf Club
イギリス人により創設された18ホールのコース
1906年に創設された、カーボベルデ最古のサンドゴルフ場
現在ではパン屋から教授、海軍の艦長までプレー
カーボベルデには2つの18ホールのコースがあるが、1906年にサン・ビセンテ島にできたアフリカ最古のコースの1つ、サンドコースがサン・ビセンテGCだ。
パー70のコースで、設計者は不明。
もともとイギリス人が石炭の採掘のため、サン・ビセンテにやってきたが、彼らの好むスポーツであるゴルフを持ち込み、サン・ビセンテC・V・I・ゴルフクラブが創設された。
1969年にテニスクラブと合併し、ポルトガルから独立した1975年には現在のサン・ビセンテGCになったという。
サン・ビセンテとカーボベルデ全体において、ゴルフ発展に寄与したガブリエル・R・デルガド氏の貢献度は高く、「ゴルフは進化し、人気を博して現在ではパン屋から教授、海軍の艦長まで、さまざまな職業の人々がプレーしている」と語る。
今年は14試合が開催され、カーボベルデ初のゴルフスクールが開校。
ジュニア向けのプログラムも開催されている。
芝生を植える計画も検討されているが、カーボベルデ初のコースであるため、遺産を残すことも重要だ。
ビベイロゴルフ&カントリークラブ
Viveiro Golf & Country Club
今年、バック9がオープンし、18ホールの芝生のコースに!
サハラ砂漠から風が吹くとさらに難しくなる、砂漠の景観が魅力のコース
大西洋の美しい景観を楽しめるコース
サル島に位置するビベイロゴルフ&CCは、全長6000メートルの18ホール・パー72のカーボベルデ初の芝生のコースだ。
砂漠の景観と大西洋の景色を楽しむことができ、アロエやヤシの木、サボテンなどの植生もある。
公式にオープンしたのは2022年1月で、バック9は2024年にオープン。
クラブプロのパオラ・マリアーニ氏は「バック9はビーチへの美しい散歩道。
息を呑むような美しさだ」と強調する。
メンバーは2022年の開業以来、12人しかいないが、「島内外からの観光を促進」するため、トーナメントも開催している。
Photo/Cabo Verde Tourism、Loren Bedelli、Getty Images
Text/Susanne Kemper
スザンヌ・ケンパー(スイス)
オーストリア国籍、スイス在住。20年以上にわたって米国、欧州を中心に世界中を旅しながら、ゴルフ誌やライフスタイル誌に寄稿。5ヶ国語を操る。