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【ゴルフの夜明け】カーボベルデ共和国 ポルトガル領の「幸せの島」

世界にはゴルフ文化のない国、あるいは最近ゴルフ場ができたばかりという国がいくつもある。
ここでは、「ゴルフ発展途上国」の歴史と文化、“ゴルフの夜明け”との関係性などを紐解いていく。
第20回はカーボベルデ共和国 を紹介する。

カーボベルデ共和国

アフリカの北西沖に浮かぶ火山群島の国家「カーボベルデ」は、セネガルのベルデ岬の西方約400キロメートルの所にあり、大小15の火山性の島で構成されている。首都はサンティアゴ島のプライア。北部にある第2の都市ミンデロは、日本船のマグロ漁の基地。日本からは、ポルトガル経由で行くのがオススメ。

西アフリカの沖合に浮かぶ無名の火山島国家「緑の岬」

カーボベルデのカーニバルは、南米のサンバに似ているが、ポルトガルとヨーロッパ、アフリカの文化がミックスされている。©Cabo Verde Tourism
サンティアゴ島で開かれる、活気あふれるアフリカ野菜市場。©Cabo Verde Tourism
サンティアゴ島の西海岸に位置するレアル・デ・サン・フェリペ要塞は、1590年に建設された。フランスやイギリスの進軍からポルトガル人を守るために建造されたもの。大西洋を一望できる大パノラマが魅力。©Cabo Verde Tourism
美しい海に囲まれたサンティアゴ島のプライア灯台。©Cabo Verde Tourism
サル島には、白とピンク色の塩田がある。島名になっている「サル」は、塩を意味し、1940年代まで約1世紀の間、岩塩の採掘が盛んに行なわれていた。現在も塩田跡と塩運搬用のリフト施設が残っている。©Cabo Verde Tourism
カーボベルデの島々の中でも、最も火山活動が活発なフォゴ島。その最大の見どころは「フォゴ国立公園」だ。カノ火山(写真)は2829メートルで、麓には溶岩流跡や噴火口が残る。©Cabo Verde Tourism
サル島のサンタマリアビーチは、島の南端に位置し、約8キロにわたる真っ白なビーチとエメラルドグリーンの海が魅力。ポルトガル領だった頃の面影が色濃く残る街並みが特徴だ。©Cabo Verde Tourism
サントアンタン島の北部の山々には村(集落)があり、トレッキングなどに訪れる観光客もいる。©Cabo Verde Tourism

10の火山島から成る西アフリカの島国

西アフリカの島国で、大西洋に浮かぶ10の火山島から構成されているカーボベルデの群島は、約4億年前に形成された、ガンビア、モーリタニア、セネガルの西海岸に近い、馬蹄形の国である。
首都はサンティアゴ島のプライアで、1456年にジェノバ出身のアントニオ・デ・ノリが発見するまで無人だった。
後に彼はポルトガルの探検家ディオゴ・ゴメスと航海し、サンティアゴに上陸。名前をつけたという。

なお、この国の名前は、アフリカ大陸のセネガル領カーボベルデ(ポルトガル語で「緑の岬」の意)に由来し、ヨーロッパ人が初めて熱帯に植民地を築いた場所となっている。
1462年にポルトガル人入植者が到着し、リベイラ・グランデの入植地を建設。
16世紀からは、大西洋奴隷貿易において重要な役割を果たした。

1974年に勃発したポルトガル革命は、カーボベルデとポルトガル領ギニアの活動を活発化させ、翌1975年にカーボベルデはポルトガルから独立した。

天然資源はほとんどなし
観光業が急速に発展

カーボベルデの経済の、75%のビジネスがサービス業であり、天然資源はほとんどなく、2007年以降、発展途上国に分類されている。
10の島々のうち、半分の島だけが大規模な農業生産を支え、食糧の90%を輸入に頼っているが、人口の3分の1以上が農村地域に住んでいる。

カーボベルデの経済は、あらゆる面でポルトガルとの強固な結びつきが今でも見られ、通貨や賃金構造、資本流入、国際組織への関与に至るまで広がっている。
そんな中で、観光業は急速に成長しており、失業率も低下。
貧困レベルも改善されている。
カーボベルデは、大西洋の中央に位置し、航空及び海上交通の交差点にあることが、観光業の成長を助長しているのだ。
現在、4つの国際空港があり、ヨーロッパから南米へのルートの一部になっている。

アフリカ、ヨーロッパの文化の融合

カーボベルデの文化は、15世紀から進化し、アフリカとヨーロッパの生活様式が時間をかけて混ざり合い、独自の文化や社会を生んだ。
キリスト教が主流で、ローマ・カトリック教徒が80%以上を占めており、ユダヤ教徒も植民地時代に存在していたという。

またポルトガルの教育制度と並び、カーボベルデはアフリカで最高の教育を提供。
初等教育は義務教育で、6歳から14歳までの全員に無料で提供されている。
就学率は90%近くに達しているほどだ。
識字率は90%以上で、25%以上が大学の学位を取得。
女性は学生の3分の1を占めており、卒業生の3分の2は女性である。

バスケが人気
ゴルフ場は国内に2か所のみ

スポーツについては、バスケットボールが非常に人気で、2007年には「FIBAアフリカ選手権」で銅メダルを獲得。
また、カーボベルデは、アフリカで最も人気のあるウィンドサーフィンのデスティネーションとなっており、多くのサーファーが訪れている。

さらに1996年以降の全ての夏季オリンピックに参加しており、2016年のパラリンピックでは、グラセリーノ・バルボサが陸上400メートルレースで銅メダルを獲得した。

さて、ゴルフであるが、まだまだ発展途上の段階。
18ホールのコースが2つあり、1つはサンドコース、もう1つは芝のコースだ。
現在、ゴルフ連盟は存在していないが、今年中には設立予定だという。

サン・ビセンテゴルフクラブ
Sao Vicente Golf Club

イギリス人により創設された18ホールのコース
1906年に創設された、カーボベルデ最古のサンドゴルフ場

グリーンは、砂とコールタールをミックスして固めたもの。©Sao Vicente GC
1906年に創設されたサン・ビセンテGC。オープン当時は、イギリス人とポルトガル人のエリートだけがプレーしていたが、のちに貧しい地元民が彼らのマネをしてプレーするようになったという。©Sao Vicente GC
イギリス人が石炭の採掘のため、サン・ビセンテに到着して以来、スポーツや趣味も持ち込み、コンペなども熱心に行なわれていた。1933年までにサン・ビセンテC.V.I.ゴルフクラブ、サン・ビセンテ・ローンテニスクラブ、サン・ビセンテスポーツクラブという3つのクラブが存在し、現在はゴルフのみが存続している。©Sao Vicente GC

現在ではパン屋から教授、海軍の艦長までプレー

カーボベルデには2つの18ホールのコースがあるが、1906年にサン・ビセンテ島にできたアフリカ最古のコースの1つ、サンドコースがサン・ビセンテGCだ。
パー70のコースで、設計者は不明。

もともとイギリス人が石炭の採掘のため、サン・ビセンテにやってきたが、彼らの好むスポーツであるゴルフを持ち込み、サン・ビセンテC・V・I・ゴルフクラブが創設された。
1969年にテニスクラブと合併し、ポルトガルから独立した1975年には現在のサン・ビセンテGCになったという。

サン・ビセンテとカーボベルデ全体において、ゴルフ発展に寄与したガブリエル・R・デルガド氏の貢献度は高く、「ゴルフは進化し、人気を博して現在ではパン屋から教授、海軍の艦長まで、さまざまな職業の人々がプレーしている」と語る。

今年は14試合が開催され、カーボベルデ初のゴルフスクールが開校。
ジュニア向けのプログラムも開催されている。
芝生を植える計画も検討されているが、カーボベルデ初のコースであるため、遺産を残すことも重要だ。

ビベイロゴルフ&カントリークラブ
Viveiro Golf & Country Club

今年、バック9がオープンし、18ホールの芝生のコースに!
サハラ砂漠から風が吹くとさらに難しくなる、砂漠の景観が魅力のコース

ヤシの木や大西洋の景色を楽しむことができるビベイロゴルフ&CC。砂や赤・茶・灰色の土壌の上にパスパラム(芝)を植え付けた約6000メートル・パー72のコースだ。©Viveiro Golf & Country Club
海水に強い青々としたパスパラムが生い茂るフェアウェイ。周囲の土漠とのコントラストが美しい。©Viveiro Golf & Country Club
フェアウェイは芝生だが、外すと土漠から打たなければならない。©Viveiro Golf & Country Club
ドライビングレンジ、ショートゲームエリア、パッティンググリーンなど、一流の練習設備が整っている。アカデミーでは、個人やグループレッスンも提供。©Viveiro Golf & Country Club

大西洋の美しい景観を楽しめるコース

サル島に位置するビベイロゴルフ&CCは、全長6000メートルの18ホール・パー72のカーボベルデ初の芝生のコースだ。
砂漠の景観と大西洋の景色を楽しむことができ、アロエやヤシの木、サボテンなどの植生もある。

公式にオープンしたのは2022年1月で、バック9は2024年にオープン。
クラブプロのパオラ・マリアーニ氏は「バック9はビーチへの美しい散歩道。
息を呑むような美しさだ」と強調する。

メンバーは2022年の開業以来、12人しかいないが、「島内外からの観光を促進」するため、トーナメントも開催している。

Photo/Cabo Verde Tourism、Loren Bedelli、Getty Images

Text/Susanne Kemper

スザンヌ・ケンパー(スイス)
オーストリア国籍、スイス在住。20年以上にわたって米国、欧州を中心に世界中を旅しながら、ゴルフ誌やライフスタイル誌に寄稿。5ヶ国語を操る。

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