賞金+ボーナスで約91億円を稼ぎ出した
スコッティ・シェフラー総合優勝
フォーマットに対する不満を切り替え、最善を尽くしたシェフラー
「パリ五輪」で金メダルを獲得し、「マスターズ」2勝目を含む、今季7勝を挙げたスコッティ・シェフラー。
フェデックスカップ・プレーオフ最終戦の「ツアー選手権」には、フェデックスカップランキング1位で入り、「目の前の1打に集中する」ことで4日間、60台のスコアをマーク。
最終的には2位のコリン・モリカワに4打差で「ツアー選手権」に優勝し、今年のフェデックスカップ総合優勝を飾った。
世界ランク1位であり、シーズン中、フェデックスカップランキングで25週連続1位だったシェフラーが、最終戦で大波乱が起きることなく、総合チャンピオンに。
今年獲得した賞金総額と、総合優勝のボーナスなどを合わせると、なんと6222万8357ドル(約91億円)という破格の金額。最も活躍した彼の総合優勝は、誰もが納得の相応しい結末だった。
(注/フェデックスカップランクで25週連続1位は、歴代1位の最長記録。2位は、2008年のビジェイ・シンで4週。今年の「アーノルド・パーマー招待」以降、シェフラーは1位をキープした)
「とてもいい気分だね。この位置(総合優勝)に辿り着くまでに多くの努力を重ねてきたけど、今週は長い1週間だった。今はただとても疲れている。最終的にこのトロフィーを手にすることができて、本当に特別な気持ちだよ」
PGAツアーは、2007年に「フェデックスカップ」と呼ばれる年間ポイントレースがスタートして以来、最終戦の「ツアー選手権」をよりエキサイティングなものにしようと、何度もフォーマットを変えてきた。
そして、ここ数年は、最終戦に入る段階で1位の選手は10アンダーからスタート、2位の選手は8アンダーからスタート……というように、ストローク差をつけてスタートする「スタッガード」方式を採用している。
1年間戦い、7勝を飾っているシェフラーにしてみれば、最終戦で2位とたったの2打差、というハンデをもらってスタート、というのは、なんとも不条理な話だ。
本人も「バカげている。実際には一つのトーナメント(最終戦の『ツアー選手権』)で決まるわけで、シーズン全体のレースとは考えていない。仮にイーストレイク(最終戦のコース)で首の状態が悪化し、棄権したらフェデックスカップ30位になるのか?こんなの、シーズン全体のレースと言えないよ」とプレーオフ第1戦「フェデックス・セントジュード選手権」では不満を漏らしていた。
たしかに72ホールで、たった2打のハンデは、ほとんどないに等しいだろう。
しかし、その2週後の最終戦での大会前記者会見では「自分のプレーに集中して最善を尽くすつもり。バーディが多ければスコアも良くなる。ゴルフのゲームで不満を解決する最も簡単な方法は、より良いゴルフをすることだけ。これがゴルフで一番大事なことであり、最終的には十分に良いゴルフをすれば、全てがうまくいく。我々はスポンサーが望む形でプレーしなければならないんだ」と気持ちを切り替えていた。
シェフラーは、友人にハンデを与えてゴルフを楽しむ時ですら、「勝ちたい」と思う負けず嫌いな人間。
「たとえ、5ドルでも500ドルでも、自分の財布から他人にお金を渡したいとは思わないし、それは私の性分ではない。卓球であろうとなんだろうと、勝ちたいんだ」と言う。
そんな彼は、あっという間に逆転も可能なたった2打のハンデに内心不満を抱きながらも、「自分がバーディをたくさん取ればいいんだ」と考え直し、目の前の1打に集中して優勝を掴みとった。
「この1年間でほぼ一生分を生きたような気がする」
今年のシェフラーの活躍は、全盛期のタイガー並み
「マスターズ」優勝に、ツアー7勝、「パリ五輪」金メダル獲得、子供の誕生、そして「全米プロ」での逮捕と、目まぐるしく様々な出来事が起きたシェフラーの1年間。
アダム・スコットは「(強豪がひしめき合い、誰が優勝するかわからない)今日では、誰かが際立った成績を挙げることは難しいが、スコッティはそれをやってのけている」と言い、彼の今年の活躍について、タイガー・ウッズの全盛期に匹敵すると語っている。
シェフラー自身、今シーズンについて「この1年で、ほぼ一生分を生きたような気がする。狂気の沙汰だ。今年は素晴らしい年で、本当に特別だ」と述べた。
以前は、世界ランク1位になっても過小評価されがちだった彼だが、世界中のゴルフファンにその実力を認めさせた1年でもあった。
2024年フェデックスカップツアー選手権
最終成績(最終ポイントランキング)
1位 | スコッティ・シェフラー | −30 |
2位 | コリン・モリカワ | −26 |
3位 | サヒス・シガーラ | −24 |
4位 | ラッセル・ヘンリー アダム・スコット ザンダー・シャウフェレ | −19 |
7位 | イム・ソンジェ | −18 |
8位 | ウィンダム・クラーク | −17 |
9位 | ローリー・マキロイ 松山英樹 シェーン・ローリー | −16 |
12位 | ビクトル・ホブラン | −15 |
14位 | ジャスティン・トーマス | −14 |
15位 | ルドビグ・オーバーグ | −12 |
20位 | トミー・フリートウッド | −10 |
Text/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images