前回の「ライダーカップ」でメンバーから外されたキーガン・ブラッドリーが来年の米国チームキャプテンに就任!
仲良しチームを作り、惨敗?!
米国チーム敗北の真実
ザック・ジョンソンの皮肉な役回り
「ライダーカップ」ほど人々を熱狂させるものはない。
最近、2025年「ライダーカップ」の米国選抜チームのキャプテンにキーガン・ブラッドリーが選ばれたという驚きの発表で、アメリカでは批判が再燃した。
この任命は、2023年にローマで行なわれた「ライダーカップ」で、欧州チーム16・5ポイント対米国チーム11・5ポイントで、米国が敗北した際に生じた批判の火に、再び油を注いだのだ。
本大会では、米国チームのキャプテンであるザック・ジョンソンは、特にジョーダン・スピース、ジャスティン・トーマス、リッキー・ファウラーを選んだことで厳しい批判を浴びた。
ジョンソンが「全英オープン」で彼らと一緒に同じ家を借りていたこともあって、彼らが「仲良しクラブ」のメンバーであるという風評は、米国が苦戦するにつれてさらに強まったのだった。
今年初めにネットフリックスのドキュメンタリー「フル・スイング」が公開されたが、このドキュメンタリーでは、昨年イギリスでジョンソンがスピースやトーマスとともに楽しんでいる様子だけでなく、ジョンソンがブラッドリーに電話をかけ、代表入りしなかったことを伝える場面もカメラに映し出されていた。
皮肉なことに、今年の6月末にブラッドリーに電話をかけ、キャプテン職をオファーしたのは、「ライダーカップ」委員会の任務の一環を担ったザック・ジョンソンだった。
ランキングで代表入りした米国選手の成績を見ると……
特に「ライダーカップ」でチームが負けた時にはキャプテンが厳しく非難されるものだが、ジョンソンも厳しい批判にさらされた。
米国のほとんどの選手が大会前に長期間の休養を取っていたため、彼のペアリングや準備に疑問を抱くのは当然である。
しかし、全体像を見ることも重要だ。
たとえば、米国チームに自動的に選出された6人の選手の成績は、次の通り。
スコッティ・シェフラー/0勝2敗2引き分け、ウィンダム・クラーク/1勝1敗1引き分け、 ブライアン・ハーマン/2勝2敗、 パトリック・キャントレー/2勝2敗、マックス・ホーマ/3勝1敗1引き分け、ザンダー・シャウフェレ/1勝3敗
これら6人の選手のうち、勝ち越しているのはホーマだけで、全体では9勝11敗4引き分けという成績だった。
これが結局、米国チームが負けた理由だ。もしブラッドリーが選ばれていたら状況は変わっただろうか?
ルーカス・グローバー、キャメロン・ヤング、ブライソン・デシャンボーが出ていたら?
いずれもジョンソンが選んだ選手より優れた選択肢として挙げられており、各選手に長所があるのは確かだが、結果が違ったかどうかはわからない。
自動的に選ばれる枠が6つしかない中で、何か劇的なことが起こらない限り、キャプテンが7位と8位の選手を選ばないことはほとんどあり得ないだろう。
それがブルックス・ケプカとジョーダン・スピースだった。
ケプカは1勝1敗1引き分けで、シェフラーと組んだフォアサムの試合で9&7で敗れた。
スピースは0勝2敗2引き分けで、厳しい1週間だったが、振り返ってみると、彼はもっと試合数を減らすべきだったかもしれない。
しかし、選考時点では彼を選ばないのは難しかっただろう。そして彼を選ぶなら、彼とチーム戦で相性が良かったトーマスも連れて行くのは理にかなっている。
彼らは2022年の「プレジデンツカップ」で4勝0敗、2021年の「ライダーカップ」では1勝1敗、2018年「ライダーカップ」では3勝1敗という成績を残している。
過去数年にわたり、米国チームに対する大きな批判は、チームとしての結束力が欠けていることや、適切なパートナーを見つけられないことに向けられた。
スピースとトーマスは過去に良いコンビだったので、2人を一緒にするのは当然の選択だった。
そしてトーマスに批判が向けられたにもかかわらず、彼はローマでスピースほど悪くはなかったのだ。
彼はスピースと組んで0勝2敗1引き分けだったものの、シングルスでは勝利した。
さて、ここで他のキャプテン推薦の選手を見てみよう。
サム・バーンズは1勝2敗、リッキー・ファウラーは0勝2敗(どうやら病気だったようだ)、コリン・モリカワは1勝3敗だった。
キャプテン推薦の選手には、指名されても問題ない選手も含めて、勝ち越し記録を持っている選手は一人もいなかった。
J・スピース&J・トーマスがブラッドリーのキャプテン選出を後押し
米国チームの改革とLIVゴルフとの関係
10年前、フィル・ミケルソンがスコットランドのグレンイーグルスで行なわれた「ライダーカップ」の米国キャプテンだったトム・ワトソンを厳しく批判したのを受けて、全米プロゴルフ協会は選手たちの発言権を高めるために改革を行なった。
同協会はタスクフォース(特定の課題に取り組むために一時的に結成されるチーム)を結成し、のちに6人の委員会に改編。
そのうちの1人は、前回のキャプテンが務めている。
この目的は、将来のキャプテンを育成し、その継続性を生み出すことだった。
例えば、ジョンソンはキャプテンを務める前に4つの異なるチームで副キャプテンを務めていた。
そして過去のキャプテンも継続性をさらに高めるために、副キャプテンとしてもう一期、務めることになっている。
しかし、アメリカは突然、キャプテンの適任者が不足する事態に陥った。
ミケルソンはLIVゴルフへの参加で、ベスページ(来年の「ライダーカップ」開催地)でのキャプテンの座を逃したのだ。
そして2025年のキャプテン候補と言われていたタイガー・ウッズは、LIVゴルフとPGAツアーの統合問題を解決するため、キャプテンを務める時間がないと決断し、本大会のキャプテンを辞退した。
その過程で、権力者たちがキャプテンを再利用し始めたことも、問題だったかもしれない。
デービス・ラブ3世は、「ライダーカップ」のキャプテンを2度務めた後、2022年の「プレジデンツカップ」のキャプテンも務めた。
またジム・フューリックは2018年の「ライダーカップ」のキャプテンを務め、今年の「プレジデンツカップ」のキャプテンも務めることになっている。
おそらく、若く新しい候補者がこれらの役割を担うべきだったかもしれない。
2人ともローマで副キャプテンを務めており、スティーブ・ストリッカー(過去に両大会のキャプテンを務めた)やフレッド・カプルス(「プレジデンツカップ」で3度キャプテンを務めた)も同様だった。
また、多くの人がスチュワート・シンクがキャプテンに選ばれるのではないかとも考えた。
しかし、委員会は異例の選択をした。ブラッドリーの選出を後押しした人の中には、「ライダーカップ」委員会のメンバーであるスピースとトーマスがおり、トーマスは、ブラッドリーが資格を得てプレーすることも問題ないとしている。
「彼は間違いなくプレーイングキャプテンになれる」とトーマスは語った。「ジョン・ウッド(ベテランキャディで、現在はテレビのレポーターを務めている)が監督になったことで、そういう考えが生まれた。ジョンは、必要であればキーガンや、将来のプレーイングキャプテンが必要な場合に、多くの仕事を引き受ける機会があると思う」
「これは全く新しいチャンスの始まりだと思うし、毎週最高レベルでプレーしている選手以上に、選手や彼らのプレーを理解しているキャプテンはいないと思う。私はこの選出は嬉しいし、最高の方向転換だ」
これまでに、ブラッドリーはウェブ・シンプソンとブラント・スネデカーを副キャプテンに任命している。
どちらも経験豊富というわけではないが、両者ともに「ライダーカップ」と「プレジデンツカップ」でプレーした経験があり、シンプソンは、2022年の「プレジデンツカップ」でデービス・ラブ3世の副キャプテンを務めた。
そしてブラッドリーは、今年の「プレジデンツカップ」でフューリックの副キャプテンを務めることになっている。
2011年「全米プロ」で優勝し、2度「ライダーカップ」に出場したブラッドリーは、就任直後、「まだ返信していないメールがある。全部で400通くらいかな。少し緊張したけど、反応は予想以上に良かったね。この役割を引き受けられて嬉しい」と語った。
Photo/PGA of America
Text/Bob Harig
ボブ・ハリグ(アメリカ)
Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。