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【世界のゴルフ通信】From Latin ラテンゴルフの光と影 LIVゴルフでガルシア&ラームが個人戦で初優勝

LIVゴルフでガルシア&ラームが個人戦初優勝

スペインのバルデラマで開催された「LIVゴルフ・アンダルシア」では、ベテランのセルヒオ・ガルシア(右)と、ジョン・ラームが特に注目を浴びた。©LIV GOLF
LIVゴルフ3シーズン目にして、母国開催の大会で個人戦優勝を果たしたセルヒオ・ガルシア。アニルバン・ラヒリとのプレーオフの末、優勝が決まった瞬間、渾身のガッツポーズを繰り出した。©LIV GOLF
7月末に行なわれた「LIVゴルフ・UK」では、今年メンバー入りしたジョン・ラームが、個人戦初優勝を飾った。現在、個人ポイントランキング1位。©LIV GOLF

スペインでは、ゴルフは主要スポーツではない

セルヒオ・ガルシア(バルデラマ大会)とジョン・ラーム(ロンドン大会)が、7月に行なわれたLIVゴルフで個人戦初優勝をそれぞれ飾った。
しかしラテン勢は「パリ五輪」では、ライバルにメダルを「譲った」のと同じような大きな失望感を味わった。
彼らは、「パリ五輪」でその存在感を示したものの、「東京五輪」よりも好成績を残すことができなかったからである。

ラテンゴルフ界にとって、今夏は、光と影の夏だった。
LIVゴルフは成長を続け、ラテン諸国ではゴルフに対する興味が高まりつつも、大きな大会では期待外れだったからだ。
今年のラテンゴルフ界の夏は、セルヒオ・ガルシアが「LIVゴルフ・アンダルシア」で優勝したことから始まった。
スペインのガルシアは、キャリアベストを思わせるプレーを披露し、エキサイティングなプレーオフの末、スペインにとって初の個人戦と団体戦の優勝を果たした。
しかし残念なことに、彼の勝利はテニスのカルロス・アルカラスがウィンブルドンで勝利し、スペインのサッカーチームが4回目の「欧州選手権」優勝を達成したのと同時期に起こり、スペインの主要メディアではほとんど取り上げられなかった。
ガルシアが最後に勝ったのは2020年であり、彼はバルデラマでの試合に17回出場して、16回のトップ10入りと4回の優勝(2011年、2017年、2018年のDPワールドツアー、2024年のLIVゴルフ)を果たしている。
それでも、ゴルフは依然としてスペインでは二次的なスポーツであることが明らかになった。

数週間後、ジョン・ラームがロンドンで念願のLIV初勝利を達成。
バリカの選手(ラーム)が、アラブリーグの「悪童たち」に加わって以来の呪いを破った。
そして、彼のチーム「リージョンXⅢ」も団体戦優勝を果たした。
「パリ五輪」の翌週には、グリーンブライヤーでブルックス・ケプカとのプレーオフで敗北し2位となったが、その2位によって、LIVゴルフのポイントランキングでチリのホアキン・ニーマンをわずか3ポイント差で上回り、1位に浮上したのだった。

ラームは、これまでに出場したLIVゴルフ11試合全てでトップ10入りしており、ニーマンはシーズン初めに2つのトーナメントで優勝している。
この2人のラテン系選手は、9月13日~15日に、米国で開催されるシーズン最後の「個人戦選手権」で個人タイトルを争うことになる。
今季の彼らの活躍は、メジャーチャンピオンのブルックス・ケプカ、フィル・ミケルソン、ブライソン・デシャンボー、セルヒオ・ガルシア、ダスティン・ジョンソン、パトリック・リードなど、数多くのスターが参加する、革新的なサーキットにおいて、ラテンゴルフの勝利を意味することは間違いない。

金メダルがすり抜けたジョン·ラームの悲劇

五輪・アルゼンチンチームは、PGAツアーのアレハンドロ・トスティ(左)とエミリアーノ・グリジョが出場。
五輪・メキシコチームは、カルロス・オルティス(左)、エイブラハム・アンサーというLIVゴルフの2人が出場。
五輪・スペインチームは、デビッド・プイグ(左)、ジョン・ラームというLIVゴルフの2人が出場。

「パリ五輪」でのラームの自滅

2016年の「リオ五輪」、2021年の「東京五輪」に続く、ゴルフ復活後3回目のゴルフ競技となる今年の「パリ五輪」は、スペイン語圏のゴルフにとって非常に楽しみなものとなると期待されていた。
「東京五輪」よりも多い11名の選手が参加し、チリのホアキン・ニーマン、メキシコのエイブラハム・アンサーとカルロス・オルティス。
そしてもちろんスペインのデビッド・プイグとジョン・ラームのような既に確立された偉大なゴルファーが揃っていたからだ。
中でもジョン・ラームは、メダル(どの色でも)の有力候補であり、64ホールまで金メダルが手中にあるように思われたが、11番ホールでの災難で事態が一変。
パーを逃し、この日の初ボギーとなった瞬間から、信じられないほど崩れてしまった。
これほどまでにラームが崩れたのを見たことがないが、〝LIVゴルフの競争力欠如のせいだ〟と考える人も多いようだ。

スペインゴルフ連盟は、メダル獲得を祝う準備をしていたが、結局わずか8ホールで全てが消え去った。
「これがゴルフだ」とスペイン人は納得しようとしたが、2018年の「ライダーカップ」でタイガー・ウッズを破って栄光を勝ち取った、ル・ゴルフ・ナショナルで何が起こったのか、他に説明がつかなかった。

ラームは4打差のリードを失い、5位タイで終了。
メダルのチャンスも逃がした。
南米の選手たちも「東京五輪」の結果を上回ることができず、唯一ホアキン・ニーマンだけが9位タイにとどまった。
なお、女子五輪ゴルフは、コロンビアのマリアホ・ウリベ(10位タイ)とスペインのアサハラ・ムニョス(13位タイ)が上位に入り、前回を上回る結果となった。

ラテンゴルフ全般において、LIVゴルフは、チリ、アルゼンチン、メキシコ、コロンビアの選手たちを活性化させ、存在感を示し始めている。
これらの国々の選手はこれまで、PGAラテンアメリカの傘下でやや抑圧されていたため、なかなか飛躍することができなかったのだ。
スペインゴルフ界においては、LIVゴルフの影響で、逆にPGAツアーやDPワールドツアーのビッグイベントでスター選手が欠如しているようである。

秋には、スペインでDPワールドツアーの非常に重要な2試合が開催される予定で、スポンサーによる大きな資金投入が見込まれているが、LIVゴルフで活躍中のラーム、ガルシア、プイグのような選手が出場するかどうかはまだ不明だ。
そして、主要サーキット間の合意も未解決のまま、熱い秋が待ち受けている。

Text/Isabel Trillo Amores

イサベル・トリロ・アモーレス(スペイン)

PGA・オブ・スペインのコミュニケーションディレクター。80年代後半からゴルフ取材を始め、その数は世界250試合以上。ゴルフのラジオ番組も手がける。

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