「全英オープン」に出場した3人のそれぞれの想い
3人のアジアンツアープレーヤーの全英オープンまでの道のり
ジョン・キャトリンとアンディ・オグレトリーにとって、第152回「全英オープン」への出場は、世界的なエリートプレーヤーとしての地位を確立するためのものだった。
またマイケル・ヘンドリーにとって、ロイヤルトルーンでティーオフすること自体が、驚異的な偉業だったのだ。
この3人は、スコットランドへの道のりをそれぞれ異なるルートで進んだが、米国人のキャトリンとオグレトリー、そしてニュージーランド人のヘンドリーの共通点は、いずれもアジアンツアーのメンバーであり、「全英オープン」に対して敬意を抱いている点にある。
彼ら3人にとって、ただその場にいること自体が、流した血と汗と涙の証明だった。
特にヘンドリーは、昨年、白血病と診断され、ロイヤルリバプール(昨年の「全英オープン」開催地)でプレーができなかったため、医療免除が与えられたことが大きかった。
キャトリンは、アジアンツアーのシーズン開幕戦「マレーシアオープン」で3位タイに入ったことで、2024年の「全英オープン」出場権を獲得。
一方、オグレトリーは、新たに設けられた「連盟ランキングリスト」の有資格カテゴリーから5名の予選通過者の一人として出場権を獲得した。
オグレトリーは、2023年のアジアンツアー賞金ランキング、インターナショナルシリーズランキングで首位に立ち、今年のLIVゴルフの出場権を手に入れた。
そしてキャトリンも今、彼と同様のルートを歩んでいる。
ヘンドリーの奇跡的な回復と、今後の人生への区切り
一方、ヘンドリーは病気からの驚異的な回復により、ロイヤルトルーンでの登場は、その週の最も心温まる人間ドラマの一つとなった。
考えてみれば、ヘンドリーが白血病と診断されたのは、ほんの17か月前のこと。
彼は数か月間、入院し、体重は14キロも減少した。
また、2023年の「全英オープン」に出場する機会も失ったのだ。
しかし奇跡的にも、彼は昨年11月に競技に復帰し、母国でのトーナメントで優勝。
そして、5月には再び逆境を乗り越え、日本ゴルフツアーの「For The Players by The Players」で優勝し、9年ぶりにJGTO2勝目を手にした。
さらに良いニュースがもたらされた。
R&Aが彼にロイヤルトルーンでの「全英オープン」出場のために医療免除を与えると発表したのだ。
予選2日間のスコアは74と78で、彼が望んでいたような夢のような結末にはならなかったかもしれないが、ヘンドリーが認めているように、「全ては見方次第」である。
スコットランドでの感動的な週を振り返り、彼はこう語った。
「R&Aだけでなく、過去12か月間、私を助けてくれた全ての医師や看護師に、どれだけ感謝しているか言葉では言い尽くせない」
2017年と2018年に「全英オープン」に出場したヘンドリーは、第1ラウンドのティーオフ前にさまざまな激しい感情が湧き上がったことを認めた。
「健康になれば、この試合でプレーできるとわかっていたことが、回復のカギだった。だから、できる限りのことをして、健康を取り戻そうと努力した。今週が私の人生の一部に区切りをつけ、前に進むきっかけになればいい」
さらに、44歳の彼が家族とこの経験を共有できた事実は、彼にさらなる感動を与えた。
「私はもう若くはないし、メジャーに出場する機会はそんなに多くない。これが最後の『全英オープン』になるかもしれない。だから家族と共にここに来て、『全英オープン』という最大で最古、最高のトーナメントを体験することは、彼らが父親が何をしているのかを知る素晴らしい機会になるだろう」
若いキャトリンとオグレトリーの今後とアジアンツアーの魅力
キャトリンとオグレトリーにとっては、「全英オープン」や他のメジャーへの出場が、今後の非常に重要な課題となっている。
「本当に素晴らしい大会だ。毎年ここに戻ってきたい」と16位タイで終え、13人のアジアンツアーの出場選手の中で最高位という名誉を手にしたキャトリン。
さらに彼は「最後のホールを歩いていた時、グリーンサイドのバンカーに入っていたのに、思わず笑ってしまった。
これは『全英オープン』特有のもの。私が常に大切にしたい思い出だ」と付け加えた。
通算2オーバーで大会を終えたキャトリンは、優勝したザンダー・シャウフェレに11打差だった。
大舞台に対する欲求が十分にかき立てられたキャトリンは、今年のアジアンツアーとインターナショナルシリーズの賞金ランキングで首位に立つという目標でも、将来のメジャーでの成功が目標でも、現状に甘んじる危険はない。
過去2回「全英オープン」に出場し、予選通過できなかったキャトリンは、「今週の初めにはあまり期待していなかった。ただ、できる限りいいプレーをしたいと思っていた。自分がメジャーレベルにふさわしいと実感している。もっと多くの機会を掴みたい。子供の頃からメジャーで優勝することが夢だったし、いつかそれが実現するかもしれない」と語っている。
2025年の「マスターズ」を前に、キャトリンには他にも考えるべきことがある。
「アジアンツアーの賞金王になりたい。インターナショナルシリーズの賞金ランキングでも首位になりたい。そして来年のLIV出場権を確保したい」
第2ラウンドで72をマークして予選を通過した後、週末の追い上げを狙っていたオグレトリーは、風の吹き荒れるエアシャーのリンクスで計画が崩れてしまった。
最終日はノーバーディーの6オーバー(77)で、落胆しながら大会を終了した。
しかし、2023年のアジアンツアーでの活躍のおかげで、メジャーの熱気を感じる機会を得られたことは、大きな意味があった。
「アジアンツアーがあったからこそ、今年のような大会や『全米プロ』に出場することができた。メジャーに出場する機会を得られたことは素晴らしく、自分の腕を磨く手助けをしてくれた。プレーする場所を与えてくれたことに心から感謝している」
「メジャーやLIVゴルフへの出場権が得られるので、今後はもっと多くの選手がその道を選ぶと思う。アジアンツアーは素晴らしいツアーだ」
Text/Spencer Robinson
スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)
ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。
アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。