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【プレジデンツカップ】なぜ世界選抜チームは勝てないのか? 2日目の完勝は2003年以来2回目の快挙も勝ちきれない理由

後列左からジェフ・オギルビー、丸山茂樹、トレバー・イメルマン、ミンウー・リー、クリスチアン・ベゾイデンハウト、キム・シウー、イム・ソンジェ、トム・キム、カミロ・ビジェイガス、アーニー・エルス。前列左からアン・ビョンフン、ジェイソン・デイ、マッケンジー・ヒューズ、アダム・スコット、マイク・ウィア、コーリー・コナーズ、テーラー・ペンドリス、松山英樹。©PGA TOUR

世界選抜が唯一優勝したのは、1998年のロイヤル・メルボルン(豪州)でのこと。
今から26年前の話だ。それ以来、1回引き分けとなったことはあったが一度も優勝していない。
なぜ世界選抜は優勝できないのだろうか?

2019年、アーニー・エルスが世界選抜の主将を務めた時に「世界選抜独自の旗を持ち、アイデンティティが必要」とシールド(盾)のロゴを創った。©Eiko Oizumi
パットが外れ、悔しがる松山英樹。©Eiko Oizumi

大会2日目、今まで苦手としてきた「フォーサム」で、5戦全勝を挙げた世界選抜チーム。
過去、1日のセッションで米国に全勝したのは、2003年以来2回目、という快挙に、世界選抜チームも、カナダで応援する観客達も大いに沸いた。
だが、最終的には7ポイント差で敗北したのだった。

世界ランキングの話をすれば、米国選抜は1位のスコッティ・シェフラー、2位のザンダー・シャウフェレ、4位のコリン・モリカワ……とトップランカー揃いのドリームチーム。
最下位でもマックス・ホーマの25位である。
米国選抜の世界ランクの平均が12・42であるのに対し、世界選抜は7位の松山英樹以外は全員2桁台の選手。
最下位のマッケンジー・ヒューズは61位で、世界ランクの平均は34・42位のため、米国との実力差があるのは明白だ。
しかし、前回の2022年の平均は49位で、今年はかなり改善されたと言っていい。
マッチプレー形式の試合では、必ずしも世界ランク上位者が勝つわけでもなく、いわゆるアンダードッグ(劣勢で勝ち目のないチームや人)が勝利する場合も多い。
欧米チームの対決「ライダーカップ」を見てもわかるように、格下の欧州チームが、過去14回の大会では10勝、ホームでは1997年大会以来、負けなしの記録を更新中だ。
となると、世界選抜も欧州のように、強い米国を撃破する可能性は十分あるといっていいはずだ。

過去、選手の実力差や、チームの結束力が原因で優勝ができないと言われてきた。
しかし、ここ最近の世界選抜チームを見ても、ほとんどが英語でコミュニケーションできるメンバーだし、普段からPGAツアーで共に戦っている選手ばかり。
ただ、「プレジデンツカップ」や「ライダーカップ」といったチーム戦が毎年ある米国に比べると、慣れという意味では、不利なのかもしれない。

データを意識しすぎ?
3日目の選手の出し方に、疑問の声

2022年から2回目の出場を果たしたトム・キム(左)は、世界選抜チームにエネルギーをもたらしている。右はキム・シウー。©Eiko Oizumi

今年の場合、接戦で敗れるパターンも多く、ポイント差ほどの実力差はないと思われるが、それでも負けたのは、キャプテンの采配の悪さにあると言われている。

3日目は午前4マッチ、午後4マッチが行なわれたが、クリスチャン・ベゾイデンハウト、ジェイソン・デイ、ミンウー・リー、アン・ビョンフンの4人は、1日中ベンチ入りで、戦う機会がなかった。
その代わり、その他の選手たちは、早朝から夕方遅くまで1日2マッチを戦った。
しかも同日に、全く同じペアリングで繰り返しプレーしたのだ。
これは同大会史上、初の出来事で、メディアや観客達は一瞬「え?本当に?」と目を疑ったものである。
どんなに調子が良い選手でも、「疲労」がたまっていては、最高のパフォーマンスを引き出すことは難しい。
3日目終了後、マイク・ウィア主将は「昨日(2日目のフォーサムで)、5勝0敗の勢いがあったので、ベストな選手を送り出そうと思った」と語っていた。
ベンチ入りの4人の誰かが、午後のセッションに出場していれば、流れが変わったかどうかはわからない。
しかし、今回の経験で、「前日、どんなに調子のいい選手でも翌日もいいとは限らないし、1日2マッチでは疲労がたまる」ということははっきりしただろう。
キャプテン、あるいは副キャプテンが、選手達の調子を見抜き、誰を出すのか、休ませるのかを判断しなければならない。
ここ最近は、データを重視してペアリングや選手出しを検討している世界選抜だが、過去の数値だけを見て判断していたのでは、生身の人間、しかもゴルフという水ものを扱う際はうまくいかない。
今回の苦い経験をもとに、次回のキャプテン達はどのような戦略を立てるのだろうか。

なんだかんだ言っても最後は根性論が大事!―丸山茂樹

副キャプテンの丸山茂樹(右)と、息子でプロゴルファーの丸山奨王(ショーン)。米国生まれのネイティブスピーカーである奨王が、父をサポートした。©Eiko Oizumi
松山の練習ラウンドに付き添う、丸山茂樹(左)とアーニー・エルス(中央)。©Eiko Oizumi

主将のマイク・ウィアが五輪で、英樹が僕と一緒に楽しそうにやっているのを見て、僕が呼ばれたんだと思う。
日本人が1人しかいないし、孤独感を心配していたのもあったと思うんですよね。
僕の役目は、英樹を明るくし、彼の内面をキャプテンたちに伝えること。
トム・キムは英樹と組みたいようだったけど、英樹は静かなメンバーとの方がやりやすい。
コーリー・コナーズやイム・ソンジェも、そういう意味でのペアリングだった。
1週間、選手達の戦いを見ていて技術も持っているし、絶対に負けない選手達なんだけど、もうちょっと伸び伸びやってこい! みたいな言葉が必要な気がしました。
すごくデータを意識していて、細かい。
特に英樹は自分の世界観をどんどん自分ひとりで作っていくタイプだから、もう少し自由奔放にやらせてもいいのかな、という感じはしましたね。
練習からもうちょっと自由にやらせた方がよかったと思う。
チーム、フォーマットにこだわりすぎて、ちょっと考えすぎちゃったんじゃないか、と思います。
マイクが主将なのに、トレバー(イメルマン)が仕切りすぎている部分もあって、もう少しアーニー(エルス)の意見も取り入れた方が良かったかな、と。

こういう試合は、基本的には根性論が大事。
思い切りやって、ぶっ潰してやる! という気概でいかないといけない。
僕が98年に5戦全勝を挙げて、世界選抜が優勝した時、ボギーを叩かず、いかなる状況でも拾いまくって、相手の隙を突く、ということをテーマにやっていた。
球が曲がっていても、しつこく拾って、手加減せずに1ホールでも早く叩き込むように終わらせる。
それがカギでした。当時の世界選抜チームのメンバーは、グレッグ・ノーマンやスティーブ・エルキントンなど。若い頃に苦労していたけれど、自分たちの力で一気に汚名を晴らしたい、敵をやっつけたい、というところで一致団結していた時代。
今の選手たちにはそういう意識はないのかもしれませんがね……。

Photo/Eiko Oizumi、Getty Images

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