ISPS HANDA オーストラリアオープン
2024年11月28日~12月1日/キングストンヒースGC&ビクトリアGC
プロ入り半年のリッグス・ジョンストンと36歳のベテラン、申ジエが優勝!

オーストラリアオールアビリティ選手権
優勝 サイモン・リー(韓国)
2022~2023年「全米アダプティブオープン」の男子障害者部門で優勝。韓国PGAツアーでもプロとして活躍中。自閉症を患う27歳。(左)
ISPS HANDAオーストラリアオープン
優勝 リッグス・ジョンストン(米国)
2000年5月21日生まれ。身長191センチ、体重75キロ。リッグスという名前は、映画『リーサルウェポン』で、メル・ギブソンが演じた主人公マーティン・リッグスにちなんでつけられた。(中央)
ISPS HANDAオーストラリア女子オープン
優勝 申ジエ(韓国)
1988年4月28日生まれ。155センチ。JLPGA28勝、米LPGA11勝、韓国LPGA20勝。海外メジャー2勝(「全英女子オープン」2勝)。世界ランク最高位1位。昨年は「全英女子オープン」2位タイなど。(右)
男子、女子、障害者が同週・同コースで戦うという、「ISPS HANDAオーストラリアオープン」。
世界で唯一のユニークな形式で行なわれているが、今回はメルボルンの名門、キングストンヒースGC とビクトリアGCで開催。
新人男子とベテラン女子が優勝する結果となった。
「4ラウンドの試合にあまり出たことがなかった」
ジョンストンが、豪州のメジャーを制覇



プロ入り半年で、レジェンドの名前が並ぶトロフィーに名を刻んだジョンストン
男女共催で、同一コースを使用し、同額賞金を争うという、世界唯一のユニークな形式で争われる「ISPS HANDAオーストラリアオープン(以下、豪州オープン)」。
今回で3年目を迎え、名門コースが集まるメルボルン郊外にあるキングストンヒースGCとビクトリアGCの2コースで開催された。
男子ゴルフは、今年の5月にプロ転向したばかりのリッグス・ジョンストン(米国)、女子ゴルフは、今回が10回目の出場で、2013年以来の2勝目を目指した申ジエ(韓国)、障害者ゴルフは、サイモン・リー(韓国)が優勝した。
前週の「オーストラリアPGA」で初優勝を果たしたエルビス・スマイリーは、父がエルビス・プレスリー好きで、その名前にちなんでいるが、リッグス・ジョンストンは、『リーサルウェポン』でメル・ギブソンが演じるキャプテン・リッグスにちなんで名前がつけられた。
今年の5月にプロ転向したばかりで、4ラウンドで行なわれる試合に出場したのは過去にたったの約20回。
高校時代以来の優勝だった。
本大会は、DPワールドツアーとの共催試合でもあるが、同ツアーの出場は、前週の「オーストラリアPGA」に続き、2試合目。
今回の優勝で、レース・トゥ・ドバイランキング(DPワールドツアーのポイントランキング)で1位に浮上し、世界ランキングも954位から316位と、一気にランクアップしている。
「僕は、4ラウンドの試合をあまりプレーしたことがないんです」
過去、「豪州オープン」に優勝した米国人には、ジーン・サラゼン、アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラス、トム・ワトソン、ジョーダン・スピースらがいるが、「素晴らしい選手たちと同じグループに入れるのは、本当に最高なことですし、自分の名前をこのトロフィーに刻むことができたことを非常に光栄に思います。この瞬間は一生忘れません」と語った。
最終日の朝は快晴だったが、徐々に厚い雲が垂れ込めるようになり、ちょうど男子の最終組がスタートした昼過ぎからは、時折強い風雨に見舞われた。
メルボルンは1日の中に四季があるという、スコットランドのような天候。
そんな中でもアメリカの24歳は、1イーグル、5バーディ、3ボギーの68をマークし、4つスコアを伸ばして、2位のカーティス・ラック(豪州)に3打差で優勝した。
なお、本大会は「全英オープン」予選も兼ねており、有資格者以外の上位3名が来年の「全英オープン」に出場できることになっているが、優勝したジョンストンの他、2位のカーティス・ラック、3位タイのマーク・リーシュマンがその権利を獲得した。
リーシュマンは、今大会に入る前は世界ランキングで575位だったが、2022年「全英オープン」以来のメジャー出場を果たす。
“第3のホーム”で、2度目の「全豪女子オープン」優勝を達成した申ジエ

女子はメジャーチャンピオン3人で熾烈な争いを展開
また女子は、今回で10回目の「全豪女子オープン」出場を果たした申ジエが、2013年にロイヤル・キャンベラで開催された同大会以来の2勝目を挙げた。
申は豪州で過去4勝しており、「豪州に来ると気分がいい。友達も多いし、ファンも応援してくれるから、この国が好きですね。このコースは、豪州で初めて回った所で、カリー・ウェブさんとのプレーオフで負けたんですよ。豪州でよく合宿しているので、コースのこともよくわかっています」と語る。
今大会での優勝で、通算65勝目を飾った。
メルボルンのサンドベルト地帯にあるコースは、地面が固く、グリーンでボールが止まりにくい傾向があるが、今年は雨が降ったこともあり、通常よりも柔らかく、ボールが止まりやすいセッティングになっていた。
申は「いつもよりは柔らかく、ランも出にくいので、距離が長く感じられる。全クラブを駆使してプレーしないといけない。去年は3位で一昨年は2位だったので、今年こそ優勝したいし、今年は日本でも優勝していなかったので、今年最後の試合で優勝したいですね」と語っていた。
最終日は、3連覇を狙うアシュリー・ブハイと、豪州のトッププロで母国のメジャー優勝を狙うハナ・グリーン、申の3人で、パトリシア・ブリッジズボウル(女子の優勝トロフィー)をかけての熱戦が繰り広げられた。
申ジエは、2イーグル、4バーディ、3ボギー、1ダブルボギーと出入りの激しいゴルフながらもスコアを3つ伸ばした。
一方、ブハイは6バーディ、1ボギーと安定感のあるプレーで68をマークしたが、あと2打足りず。申をとらえることはできなかった。
「このトロフィーを持つことができて、本当に嬉しい。簡単なことではないですが、とても幸せですね。今週は本当にショットが安定した1週間で、悪い日が一度もなかった。最後の数ホールは少し緊張しましたが、その緊張感がないと少し寂しいくらいです」
ホールアウト後は、優勝トロフィーを抱えながら、豪州の国民食でもある大好きなミートパイをかじり、嬉しそうな表情を浮かべていた。
男子の部 最終成績
1 | リッグス·ジョンストン | −18 |
2 | カーティス·ラック | −15 |
3 | マーク·リーシュマン ジャスパー·スタッブス | −14 |
5 | キラデク·アフィバーンラト ハリソン·クロウ ホアキン·ニーマン エルビス·スマイル ウェンイー·ディン ルーカス·ハーバート | −12 |
27 | ミンウー·リー | −5 |
39 | キャメロン·スミス | −3 |
65 | 中野麟太朗 | +15 |
予選落ち : キャメロン・デービス、ビクトル・ペレス、ジェフ・オギルビー、ラファ・カブレラ・ベロ、ニコラス・コルサーツ
女子の部 最終成績
1 | 申ジエ | −17 |
2 | アシュリー·ブハイ | −15 |
3 | ヤン·ヒョジン(アマ) | −7 |
4 | グレース·キム ハナ·グリーン | −6 |
6 | サラ·ジェーン·スミス | −5 |
7 | ケルシー·ベネット ミンジー·リー ステファニー·キリアコウ | −3 |
10 | ハニー·ソン | −2 |
20 | 杉原彩花 | +5 |
27 | 金澤志奈 | +9 |
31 | ダニエル・カン | +11 |
予選落ち : 新地真美夏(アマ)、深谷琴乃
障害者の部 最終成績
1 | サイモン·リー | −4 |
2 | ウェイン·パースキー キップ·ポパート(アマ) | +10 |
4 | マイク·ブラウン | +15 |
5 | カーティス·バークレー | +18 |
6 | ブレンダン·ローラー | +20 |
予選落ち : ヨハン・カメルスタッド(アマ)、キャメロン・ポラード(アマ)、スティーブン・アルダーソン(アマ)、ジェフ・ニコラス、ライアン・ジャクソン(アマ)
棄権 : ホアン・ポスティーゴ
Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/Golf Australia
O嬢レポート
in Melbourne
初夏のメルボルンから現地情報をO嬢がレポート!
推しは、キャメロン・スミス!
杉原彩花・金澤志奈


豪州女子ツアーを主戦場に、日豪を往復する杉原彩花と、日本を主戦場にし、オフには豪州を申ジエと訪れ、合宿するという金澤志奈が、最終日に同組でプレーし、杉原は5オーバーの20位タイ、金澤は9オーバーの27位タイで終えた。
杉原は、ここ1年ほど食事による体質改善とスイング改造に取り組んでおり、そのおかげで飛距離もアップし、ラウンド終盤でも疲れが出ず、集中力を切らさずにプレーできたという。
「レベルアップしている感じが自分でもわかりますね。前は、バーディパットを入れるレベルまで行ってなかったけど、今週はバーディを狙えるところまで来ていた。成長を感じます。いったん日本に帰りますが、1~4月はまた豪州の試合に出る予定です」
一方、金澤は国内女子ツアーの「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」を終えて、強行スケジュールで豪州へ。
「風の読みやマネージメントの仕方など、日本では経験できない難しさを体験し、いい勉強になった」と語った。
そんな2人の共通点は、「キャメロン・スミス推し」。
金澤は、スミスとの2ショット写真を撮らせてもらったのだという。
「超嬉しかったです! めちゃ大好きで、PGAツアーに出ていた頃は、よくテレビで観てました。同じ試合に出られて嬉しいです」と喜んでいた。
「僕にはやることがたくさんある。このままでは終わりたくない」中野麟太朗



今大会で、唯一の日本人男子選手だった、アマチュアの中野麟太朗。
以前は手に痛みや違和感があったというが、昨年10月の「アジア太平洋アマチュア選手権」に出場したあとは、手に負担のかからないスイングに変更し、手の治療と休養に充てた。
そして大会1週間前になって、やっと地面の上にあるボールが打てるようになった中野は、初日に8バーディ、1ボギーの65と好スコアをマークし、優勝したリッグス・ジョンストンと並び、2位タイ発進。
「今日は出来過ぎです」と語っていた。
2日目以降はアンダーパーを記録することはなく、最終日は90を叩き、一気に65位(最下位)に沈んだ。
だが、予選通過を果たした男子アマは、中野以外はおらず、ローアマに輝いた。
「ティーショットは曲がっていなかったが、風に持って行かれてしまった。(同組でプレーしていた)ミンウー・リーさんは『まだこれはイージーな方だ』と言っていた。正直、まさか90を打つとは思っておらず、いつ以来かも覚えていない。パットする時も緊張からか、足元がフワフワしていた。こういうところでは、アンダーパーを出さないと戦えないことがわかった」
「僕はまだ、やることがたくさんあるし、その再確認ができた。もっとスケールのデカいゴルフができるようになって、必ず戻って来ます。このままでは終わりたくない」
最終日は豪州のスター、ミンウー・リーと同組で周り、今までの10倍以上のギャラリーに圧倒された。
ただ、予選通過を果たさなければ、最終日のようなタフな経験もできなかったという意味で、4日間、プレーができたことを非常に前向きにとらえ、「やる気が湧いて来ました」と語っていた。
今年の年末にはプロ転向する予定だというが、それまでの間、ナショナルチームメンバーのアマチュアとして、試行錯誤を繰り返しながら経験を積み、より強く、スケールの大きな選手に成長していく。
「いい経験では終わらせたくなかった」新地真美夏


年末には、プロテストを受験予定の新地真美夏。
現在は、日本の女子アマを代表する、ナショナルチームメンバーとして、海外遠征だけでなく、国内のプロの試合にも出場し、大忙しの日々を送っている。
今回、「全豪女子オープン」に出場し、予選通過を果たしたいところだったが、惜しくも1打差で予選落ちを喫した。
「ヘッドコーチの(ガレス)ジョーンズさんとも話してたんですが、この試合はプロの試合だから遠慮する必要はないし、いい経験だったね、では終わらせたくないと思っている。せっかくなら4日間、アンダーパーで回って、ミンジー・リーさんやアシュリー・ブハイさんと一緒に回れたらいいな」と大会前に語っていた新地。
今年も世界のアマチュアの大会や国内のプロ・アマの試合に出場し、経験を積みながら、プロ入りの準備を進めていく。
Photo/Eiko Oizumi