世界にはゴルフ文化のない国、あるいは最近ゴルフ場ができたばかりという国がいくつもある。
ここでは、「ゴルフ発展途上国」の歴史と文化、“ゴルフの夜明け”との関係性などを紐解いていく。
第22回はマカオ特別行政区を紹介する。
マカオ特別行政区

珠江河口を挟んで、香港の対岸にある中国本土の南海岸に位置する特別行政区。コロアン島とタイパ島を埋め立てて連結したコタイ地区には、巨大なカジノやショッピングモールがある。
成田・関空からマカオ航空の直行便あり。
ポルトガル統治時代の面影と、エネルギッシュなアジアの雰囲気を併せ持つ「東洋のラスベガス」

©Macao Government Tourism Office

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世界で最も人口密度が高く豊かなマカオ

©Macao Government Tourism Office

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香港の西、広東省に隣接し、珠江デルタの南側に位置するマカオは、25年にわたり中華人民共和国の特別行政区として、独自の行政的地位を維持しているが、かつてはポルトガルの海外領土であり、アジア最後のヨーロッパ植民地として知られていた。
1550年代にポルトガル商人が交易港として定住を開始し、「明のポルトガル」と名付けられたことに始まったマカオの歴史。
ポルトガル帝国は、中国王朝の権力を行政的に利用しつつ交易を続け、1877年にはマカオを植民地化。
また16世紀半ば、ポルトガル人が定住を始める少し前には、フランシスコ・ザビエルら宣教師たちが、マカオを拠点に東南アジア各地で、キリスト教の布教活動を行なっていた。
日本とは、鎖国するまでは長崎との貿易で繁栄を極め、1842年にイギリスが香港を植民地とするまで、マカオは唯一のヨーロッパの飛び地だった。
その後香港の台頭によりマカオの港の優位性は後退するが、1999年12月20日に中国へ返還されるまで、400年以上にわたってポルトガルの支配は続いた。
現在では「東洋のラスベガス」として知られ、ギャンブルと観光がマカオ経済の中心。花火商品も重要な輸出品目となっている。
また、一人当たりのGDPは、ほとんどの国を上回っており、マカオは世界で最も豊かな地域の一つとなっている。
なお、2024年9月時点で、世界で最も人口密度の高い国(1平方キロメートルあたり、2万1892人)でもある。
中国人の増加がギャンブルの需要と発展を加速

©Macao Government Tourism Office

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マカオには、香港からの観光客が多数訪れ、ギャンブルを楽しんでいるが、中国本土からも観光客が増加。
中国本土ではカジノ(ギャンブル)が違法のため、マカオにやってきてギャンブルを楽しむ中国人が増えているのだ。
中国の膨大な人口と世界第2位の経済が、マカオのギャンブル需要と発展をさらに加速させている。
また、ポルトガルがもたらした独自の歴史的遺産や、観光名所も観光業にとって重要な役割を果たしている。
1602年に建てられた聖ポール天主堂(ユネスコ世界遺産)や世界で19番目に高いマカオタワー、要塞内にあるマカオ博物館、世界遺産登録されているモンテ砦などは、観光地として人気だ。
また、500年以上の歴史を持つマカオ最古の寺院「媽閣廟」も忘れてはならない。
ラスベガスを超え世界最大のカジノ都市へ

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以前はマカオ旅遊娯楽有限公司が独占していたカジノ産業を、香港系のギャラクシー・マカオ社と米国のウィン・リゾーツ社にも開放したことで、海外からの投資が急増。
ホテル・リスボア、サンズ・マカオ、ウィン・マカオ、ザ・ベネチアン・マカオなど、20を超える大規模なカジノが運営され、これに伴い、観光客も2000年の800万人から2018年の3580万人と4倍以上に増加。
それまで、カジノ売り上げで世界最大だったラスベガスの推計65億ドルを超え、2006年には69億5000万ドルに達し、世界最大のカジノ都市として、世界1位に躍り出た。
人気のスポーツはサッカーとモータースポーツ

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マカオではサッカーが人気で、1939年にはマカオサッカー協会を設立。
また、1954年から行なわれているモータースポーツの祭典「マカオグランプリ」が世界的に有名で、アイルトン・セナやミハエル・シューマッハら多くのレーシングドライバーがここで勝利を挙げている。
なおゴルフは、過去数十年にわたり盛んに行なわれており、2022年にマカオゴルフ連盟を設立。
マカオには2つのコースがあり、マカオゴルフ&カントリークラブでは、アジアンツアー「マカオオープン」が開催されている。
マカオゴルフ&カントリークラブ
Macau Golf & Country Club
中国南部で最古のゴルフクラブの一つ
南シナ海の景色が美しい、アジアンツアー「マカオオープン」開催コース

©Macau Golf & Country Club

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©Asian Tour

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バック9で見える南シナ海の絶景が、大きな魅力
1993年にコロアン島に設立された「マカオゴルフ&CC」は、中国南部でも最古のゴルフクラブの一つで、全長6635ヤード、パー71の本格的チャンピオンシップコースだ。
アジアンツアー「マカオオープン」を20年以上にわたり開催し、リー・ウエストウッド、ニック・ファルド、アーニー ・エルス、イアン・ポールター、ジョン ・デーリー、ミゲル・アンヘル・ヒメネスら、世界のトッププロたちがプレーしてきた美しいコースである。
このクラブは、ゴルフコースのメンテナンスだけでなく、クラブハウス内のサービスや料理、アメニティ(プールやテニスコートも完備)が素晴らしいことでも定評があり、ゴルファーだけでなく、その家族も一緒に楽しめる施設となっている。
また名門コースならではの、厳しいルールもあるので、ラウンドする場合は事前にウェブサイトでガイドラインを読んでおいた方がいい。
特にドレスコードやプレースピード(時間)も細かく定められているので要注意だ(18ホールで4時間10分、1ホールで13分以内)。
台風ポリシーもあり、マカオ観測所の指示に従ってプレーの続行の可不可が決まるのも、ここならではの規則である。
マカオ・インターナショナルゴルフ
Macau International Golf
マカオ国際空港から、車で10分。アクセスの良さが魅力!
海岸沿いにある、美しく戦略的なモダンリンクス

©Macau International Golf Website

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あらゆるレベルのゴルファーが挑戦できる
「マカオ・インターナショナルゴルフ」は、タイパ・フェリーターミナルとマカオ国際空港から車でわずか10分、マカオ半島の中心部から20分に位置する2004年にオープンした海岸沿いの美しいリンクスコース。
多くの5つ星・高級ホテルが周囲に立ち並び、2万室もの客室があるので、前日に宿泊してプレーするのもいい。
また、空港が近いので、到着時や出発前にラウンドを楽しみたい人にはうってつけだ。
7183ヤード・パー71のウォーターフロントのチャンピオンシップコースで、クラブハウスを中心に2つの9ホールレイアウトが広がっている。
池やバンカーが戦略的に配置され、あらゆるレベルのゴルファーに挑戦を与えている。
なお、ジャンボ尾崎もデザインを手がけた世界最大のゴルフリゾート、ミッションヒルズゴルフ(中国)とも提携契約が結ばれている。
Photo/Macao Government Tourism Office, Macau Golf & Country Club, Macau International Golf
Text/Susanne Kemper

スザンヌ・ケンパー(スイス)
オーストリア国籍、スイス在住。20年以上にわたって米国、欧州を中心に世界中を旅しながら、ゴルフ誌やライフスタイル誌に寄稿。5ヶ国語を操る。