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【世界のゴルフ通信】From Asia アジアの眠れるゴルフ大国がインドが覚醒し黄金時代に入る?!

インドのアマチュアゴルフ界で旋風を巻き起こしている、15歳のカーティック・シン。©Asian Tour

アジアのゴルフ界におけるインドの存在

過去数十年にわたり、インドはゴルフ界の眠れる巨人と広く見なされてきた。
2008年の「ジョニー・ウォーカークラシック」の開催や、2014年のタイガー・ウッズの訪問が、クリケットに熱狂するこの国において、ゴルフの認知度を高める一助となったことは間違いない。
しかし2025年、DLF主催の「インターナショナルシリーズ・インド」開催こそが、インドにおけるR&Aのゲームの黄金時代の幕開けとして注目されている。

R&Aが、「世界ゴルフ参加状況レポート」を2023年に発表した。
これは、世界各国のR&A加盟ゴルフ連盟を対象に、ゴルファーの数やゴルフコースの現状を分析したものだ。
この調査によると、2022年末時点でインドには296のゴルフコースと、35万人のゴルファー(うち公式登録者数は17万5000人)がいた。
人口14億人を超える国としては、かなり控えめな数字だ。

そして、今年発表される予定の「世界ゴルフ参加状況レポート」の最新版では、その数値がどのように変化しているのか興味深いところだ。
インドの既存のゴルフコミュニティでは、ゴルフの人気と普及が進んでいるという実感があるのは確かで、実際、話題を集めた「インターナショナルシリーズ・インド」の初開催と、驚異的な才能を持つ15歳の天才少年の登場によって、インドのゴルフ界は急成長の兆しを見せている。

デシャンボーのインド上陸とゴルフにおける使命

アジアンツアーの「インターナショナルシリーズ・インド」に出場し、大勢のギャラリーを集めたブライソン・デシャンボー。©Asian Tour
日頃から、「自分のゴルフにおける使命は、人々にインスピレーションを与えること、楽しませること、そしてさりげなく教育すること」と語るデシャンボー。YouTubeなどでも、ゴルフの裾野を広げるべく、いろいろな活動をしている。©Asian Tour

この大会の成功を象徴するように、2月2日に閉幕した「インターナショナルシリーズ・インド」で2位に入ったブライソン・デシャンボーが、大会後に語ったコメントが注目を集めた。

観客動員数は1万6000人を超え、過去最高を記録。
一部の新聞報道では「観客の熱狂がこれまでにない新たなレベルに達した」と伝えられている。
LIVゴルフリーグで「クラッシャーズGC」のチームメイトのアニルバン・ラヒリのススメもあり、同チームのキャプテンのデシャンボーは、インドでの初出場を決意。
彼の信条である「教育し、楽しませ、感動を与える」を実践し、大会を大いに盛り上げた。

「インドはゴルフが爆発的に普及する準備ができている、ということをこの目で見たし、信じている。今、それが現実となり、願わくば、私が若い世代に刺激を与える手助けができれば、と思う」

2度のメジャー優勝を誇るデシャンボーは、試合の合間にタージ・マハル観光にも時間を割いた。
そして、インドの歓迎に感謝の気持ちを述べた。

「インドの皆さんに心から感謝したい。私を温かく迎え入れてくれたこと、そしてDLFやアジアンツアーにも感謝している。本当に素晴らしい体験だった。ホスピタリティも最高だった。最初にインド行きについて話し始めたのは、去年だったと思う。インドの若者たちと過ごすことで、どんな可能性があるのかを考えていたんだ」

「ゴルフは昔から年配の人のスポーツというイメージがあったが、若者のスポーツに変えていくこともできる。そのためには、ゴルフが未来の世代にとって何を意味するのかを示すことが重要だ。それこそが、私を突き動かすものなんだ。私のゴルフにおける使命はまず第一に、人々に刺激を与え、楽しませることだが、教育することも多少含まれている」

アマチュアゴルフ界に新星登場!

デシャンボーが楽しませ、刺激を与えることに成功した人物の一人が、インドのアマチュアゴルフ界で旋風を巻き起こしている。
カーティック・シンだ。彼はすでに、インド人初のメジャー制覇を期待される逸材として注目を浴びている。
シンは、DLF主催の「インターナショナルシリーズ・インド」に出場し、デシャンボーと同組でプレー。
初日に77を叩いたものの、2日目には71をマークし、通算4オーバーで36ホールを終えた。
この結果、シンはアジアンツアーで予選通過を果たした最年少の南アジア出身選手となった。

「ブライソンとプレーするなんて現実とは思えません。普段はテレビで観ているのに、今は同じ大会で戦っているんですから。本当に素晴らしい経験でした」

そう語るシンは、オールインディアジュニア・チャンピオンであり、今年1月にアラブ首長国連邦で開催された「ボナラックトロフィー」で欧州チームを破ったAPGCチームのメンバーでもある。
さらに、昨年の「ジュニア・プレジデンツカップ」ではインターナショナルチームの一員としても活躍した。

現時点ではプロ転向を急ぐつもりはないというが、シンがアマチュア資格を手放す頃には、インドで数々の世界的なゴルフ大会が開催されていることは間違いないだろう。
実際、ローリー・マキロイが10月にインドで開催される賞金総額400万ドルのDPワールドツアーの大会に出場するという噂が飛び交っている。
また、インドでLIVゴルフの大会が開催されるのは「もし」ではなく「いつ」かの問題だと言われている。

アジアンツアー、LIVゴルフの大会開催が多く見込まれるインド

「インターナショナルシリーズ・インド」で優勝したオリー・シュナイダージャンズ(中央)。左はアジアンツアーCEO兼コミッショナーのチョ・ミンタン氏。©Asian Tour

LIVゴルフ開催も時間の問題

インドのゴルフ史において重要な1週間を振り返りながら、アジアンツアーのコミッショナーであるチョ・ミンタン氏は次のように語った。

「おそらく、これまでインドで開催された中で最大規模のトーナメントだったと言っても過言ではない。ここ数年間インドでの試合がなかったが、これほど強力な形で復帰できたのは素晴らしいことだ。『インターナショナルシリーズ』とDLFを通じて、LIVゴルフとのパートナーシップを強化できたのも大きな成果だ」

「この大会が多くの関心を呼び、新たなスポンサーが投資に意欲を示してくれることを期待している。インドは常に、アジアンツアーにとって巨大な市場だった。我々のツアーメンバーの中にも多くのインド人選手がいる。インドがツアースケジュールに戻ってきたのは素晴らしいことであり、今後もインドで多くの大会を開催できるよう願っている」

Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)

ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。

アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。

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