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【世界のゴルフ通信】From Japan 女子ツアーに衝撃!「フジサンケイレディスクラシック」開催中止に

2024年の第42回「フジサンケイレディスクラシック」で優勝した竹田麗央。©GettyImages
フジ・メディア・ホールディングスと、その子会社のフジテレビの本社ビル。©GettyImages

開幕2か月で、2週間空き週のある女子ツアー

日本女子(以下JLPGA)ツアーは、昨年の年間女王・竹田麗央、2022~2023年の女王・山下美夢有や岩井ツインズなど大量のトッププレーヤーが米ツアーに〝流出〟。
そのスキに誰が活躍するか、に注目が集まっている。

一方で、毎年恒例のシーズン展望以上に、ショッキングな出来事がJLPGAを見舞った。
開幕前週の金曜日に正式発表された「フジサンケイレディス」の開催中止がそれだ。
「諸般の事情を総合的に勘案した結果」と、大会オフィシャルサイトでは書かれているが、開催辞退について具体的な理由に触れていない。
それでも、大会主催者のフジテレビ(グループ会社の産経新聞、文化放送、ニッポン放送、BSフジも主催者に名を連ねている)が抱えるトラブルの余波であることは誰の目にも明らかだ。
タレントの不祥事を発端に、会社の体質までが問われることになった騒動の余波は大きく、いまだに続いている。
民放の収入源の要であるCM差し止めが続き、主催イベントが次々に中止になった。
「フジサンケイレディス」もそれに巻き込まれた格好だ。

2025年のJLPGAは、これまで開幕2戦目だった「明治安田レディスヨコハマタイヤ」がなくなり、開幕直後に1週空き週ができていた(明治安田はJLPGA主催という新しいスキームの、別の大会『明治安田レディス』の特別協賛になっている)。
「フジサンケイレディス」中止で、開幕から2か月で試合のない週が2回あることになった。

中止の理由は、ゴルフとは全く関係のないところにあるのだが、それで試合があっさりと中止になったことを、重く受け止める必要があるのではないか。
スポンサー依存の度合いが大きいことが改めて明白になったからだ。
「フジサンケイレディス」主催者の開催辞退発表直後に、JLPGAから出されたリリースは『主催者から開催辞退の申し出があり、中止が決定したのでお知らせいたします』というもの。
現状では、JLPGAは試合をツアー競技として公認する立場にすぎないため、こうなるわけだ。

2027年からは、全試合で自分達が主催者となり、現在の主催者である企業には、特別協賛として残ってもらうことを求めており、そうなるともっと違う形になるだろう。
もっとも、JLPGAの全試合主催化も、2025年からの予定がうまく調整できず、2年延期した経緯があるのだが……。

この新しいスキームなら、スポンサーが何かの事情で試合ができなくなった時に、主催者権限で違うスポンサーを探して試合をなくさないことも不可能ではない(ただ今回はそうであったとしても、時間的に難しかっただろうが)。

スポンサー依存型のトーナメント開催は、経済的なことを始めとする企業の事情に大きく左右される。
60年近い歴史の中で、JLPGAはそれを痛いほどわかっているはずだ。
だからこそ、自らツアーを主催する方向に舵を切った。
その選択は正しい。
しかし、現実として主催者の役割ができるのか、という部分に疑問が残る。
営業も運営もすべて〝丸投げ〟してきた状況から、今のところ大きな変化が感じられない。

たかが1試合、されど1試合。
「フジサンケイレディス」中止は、決してJLPGAのせいではない。
ただ、今回のことを今後に生かさなければ、理由はどうあれ似たようなことは起こりうる。

男女とも、海外ツアーへ人材流出
ツアーを盛り上げるのは誰か?

昨年は公式戦「JLPGAツアー選手権リコーカップ」など、3勝を挙げ、メルセデス・ランキング、賞金ランキングともに6位だった桑木志帆。©GettyImages
昨年は「ヤマハレディースオープン葛城」など、2勝を挙げ、メルセデス・ランキング4位、賞金ランキング2位の小祝さくら。©GettyImages

2025年の女子ツアーを盛り上げるのは誰か?

話を戻そう。
大量の選手流出後、頭角を現すのは誰か。
昨年合計16勝した竹田や山下、岩井姉妹の抜けた穴を埋める候補の筆頭は、小祝さくらとなるだろう。
2019年以降、毎年勝ち星を挙げ、メルセデス・ランキング(以下MR)も4位。
2018年以来ずっとトップ10入りという安定度を誇っている。
MR6位の桑木志帆も、昨年3勝して一気にブレイク。
武器であるドライバーショットが安定し、底力をさらに出せれば、一層の飛躍が期待できそうだ。
この雑誌が発売される頃にはすでにシーズンは開幕しているが、序盤戦を見て活躍する選手を予想するのも楽しい。

賞金総額4億円の「前澤杯」が賞金王タイトルの行方を左右する

PGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」を立ち上げた実業家の前澤友作氏が、4月14日~27日まで、千葉県・MZ GOLF CLUBで、賞金総額4億円の「前澤杯」を開催する。©GettyImages

男子(JGTO)ツアーはどうか。開幕はさらに遅く、「マスターズ」と同週開催の、「東建ホームメイトカップ」が開幕戦となる。
2週間後の新規大会「前澤杯MAEZAWA CUP」は、賞金総額最大4億円という高額賞金で、結果はまちがいなく賞金王タイトルの行方を左右することになる。

ツアーの試合数そのものは4増4減の合計24試合で発表されているが、引き続き他ツアーとの共催などを探っており、増える可能性がある。
2年目となった諸星裕会長体制が、ツアーを立て直せるかどうか、正念場を迎える。

選手に関して言えば、賞金王となり、PGAツアーの予選会を3位で突破した金谷拓実、下部のコーンフェリーツアーからステップアップした大西魁斗は、PGAツアーへ。
最後まで賞金王争いを繰り広げた平田憲聖もコーンフェリーに挑戦中だ。
昨年、DPワールド(欧州)ツアーで優勝した中島啓太を始め、欧州ツアーへの海外〝流出〟も止まらない。
日本ツアーの低迷が、逆に選手たちの背中を押す状況は今年も続く。

男子だけでなく、女子も含めて今後の日本ツアーがどうなっていくのか。
当たり前の話だが明確なビジョンと実行力が、いよいよ今、求められている。

Text/Junko Ogawa

小川 淳子

東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。

現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。

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