世界のゴルフフォトグラファーの第一人者として今も第一線で活躍するデビッド・キャノン。
彼のファインダーを通して切り取られた世界のゴルフコースの数々は、まるで宝石箱のジュエリーのように一つ一つが個性豊かに輝いている。
私の愛したゴルフコース第32回はエノドックゴルフクラブ チャーチコース(イングランド)を紹介する。
St Enodoc Golf Club The ChurchCourse


セント・エノドックゴルフクラブ・チャーチコース
●設計:ジェイムス・ブレイド
●コース:6557ヤード・パー69
●備考:コーン・ウォール空港・ニューキー(ロンドン国際空港から、空路1時間20分)から、車で約30分。メンバーコースだが、ビジターもプレー可能。オンラインで予約できる。セント・エノドックホテルが隣接。1890年設立。
●https://www.st-enodoc.co.uk
イングランド南西部の美しいリンクス
セント・エノドックGCは、ロンドンから車で約5時間、イングランド南西端にある北コーンウォールのカメル河口近く、ロックやパドストウの村のそばに位置している。
コーンウォール全体が海の影響を受けているが、この素晴らしい丘陵のリンクスほど、その影響を強く受けている場所はない。
そびえ立つ砂丘や、風に揺れる野草の茂みの中に広がるこのコースは、まさに自然と一体となったゴルフ体験を提供している。
クラブの設立は1890年に遡るが、現在のリンクスの主なレイアウトは、1907年にジェームズ・ブレイドの監修のもとで整えられた。
1930年代には自動車の普及に伴い、交通アクセスの確保や新しいクラブハウスの建設が必要となり、トム・シンプソンの指導のもとで小規模な改修が行なわれた。
現在、2つのコース、「チャーチコース」と「ホリウェルコース」があるが、チャーチコースはチャンピオンシップ・リンクスであり、本格的な挑戦を求めるゴルファーにとって魅力的なコースである。
クラブハウスでは、温かいコーンウォール流のおもてなしを受けながらリラックスできる。
2階のバルコニーやダイニングルームからは、18番ホールのグリーン越しにカメルの河口、そして海まで見渡せる美しい景色を楽しめる。
2017年には、アメリカの設計家、トム・ドークによってチャーチコースの改修が行なわれ、特に10番ホールの左側に広がる低木地帯が整備された。
セント・エノドックは、素晴らしいゴルフチャレンジを提供するだけでなく、歴史的にも有名な場所。
コース名の由来となった18世紀の教会が、10番ホールのグリーン右手に佇んでおり、これはまた、詩人ジョン・ベチェマン卿の墓がある場所としても知られている。
彼は1966年に、13番ホール(パー4)で滅多に出ないバーディを達成し、それについて美しい詩を綴った。
この詩は、セント・エノドックでのゴルフの喜び、そしてゴルフというスポーツそのものの魅力を見事に表現している。
「海辺のゴルフ」―ジョン・ベチェマン
どこまでも真っすぐに、
どこまでも遠くへ、
轍のついた道を軽やかに越え、
高く舞い上がり、
視界から消えた
バンカーの向こうへと ──
なんと見事な、滑るように舞う、
跳ねるようなショット!
それは生きている喜びを
私に与えてくれた。
フェアウェイをずっと先へと進むと、
それは白く輝いていた。
確かな手応えでアイアンを振ると、
ボールは美しく飛び、
再び視界から消えた。
草の土手が行く手を阻もうとも、
私は確信していた。
それがグリーンにあることを。
そして、確かにそこに ──
ピンまでたった2歩の位置に
ボールは満足げに横たわっていた。
慎重にパターを構え、確実に打ち出すと、
それは間違いなくカップへと吸い込まれていった。
芝さえも喜びに震えているようだった。
この前代未聞の〝3〟を祝うかのように。
ああ! 砂の洞窟から香る海藻の匂い、
風に乗るタイムの香りと霧の気配、押し寄せる潮、
大西洋の波が陽光を浴びた崖を打つ音、空にはヒバリのさえずり、
そして、どこを見ても ──
輝きが溢れている。
王室の帆船の街・ロックに位置する風光明媚なコース
16th Par5/560yards



Where Golf Meets the Atlantic
ゴルフと大西洋が出会う場所

比較的短い風光明媚なコースだが、難しいチャーチコース
6557ヤード(パー69)のチャーチコースは、現代の基準では決して長いコースではないが、コースレコードがわずか4アンダー(65)であることは、このコースの難しさを十分に伝えている。
このコースは、砂質の土壌を持つ素晴らしい天然のリンクス地形と、湾流の影響を受けた比較的温暖な海水によって、ゴルフに理想的な風景を作り出している。
1番ホールはグリーンに到達すると、初めてカメル河口の素晴らしい景色と、その先に広がる海を目にすることができる。
河口とその向こうにそびえる崖、そして大西洋へと続く景色は、私のお気に入りの光景だ。
最も難易度が高いとされるのが、10番ホール。ティーショットは高台から細長いフェアウェイに向かって打ち下ろすが、右側には急な土手、左側には深いラフが広がり、どちらに落としても厳しい状況になる。
グリーンは小さく、教会の墓地のすぐ下にひっそりと佇んでいるが、このホールは、数えきれないほどのゴルファーのスコアカードを打ち砕いてきた〝墓場〟とも言えるだろう。
セント・エノドックでたとえ思うようなスコアで回れなかったとしても、クラブハウスでの温かい歓迎、美味しい食事、そして息を呑むような景色が、そんな悔しさを全て忘れさせてくれるはずだ。
Text & Photo/David Cannon(Getty Images)
David Cannon デビッド・キャノン(イギリス)
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海外メジャー100大会以上を取材し、現在も第一線で活躍中のゴルフフォトグラファー界の巨匠。自身もシングルハンデの腕前で、息子はプロゴルファー。アメリカ、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、アジアと世界各国を股にかけて撮影している。2022年、PGAオブ・アメリカ生涯功労賞を受賞。Getty Images所属。
Text & Photo/ David Cannon (Getty Images)