
アジアの男女プロアマの世界における位置付け
アジアの男子トップゴルファーたちが、プロゴルフ界の最前線で継続的に活躍するのに苦戦している一方で、女子ゴルファーたちは今なお世界の舞台で輝きを放ち続けている。
そのことは、男子の「公式世界ゴルフランキング(以下OWGR)」と、女子の「ロレックス女子世界ゴルフランキング」の数値が如実に物語っている。
2025年3月末時点で、OWGRトップ20に入っているアジア太平洋エリアの選手は、日本の松山英樹(6位)のみ。
次いで韓国のイム・ソンジェ(24位)、キム・ジュヒョン(トム・キム/31位)、アン・ビョンフン(34位)、豪州のアダム・スコット(32位)、ジェイソン・デイ(36位)らがトップ50に名を連ねている。
一方、女子の世界ゴルフランキングでは、アジア太平洋エリアの選手がトップ10のうち7人を占めている。
タイのジーノ(アタヤ)・ティティクル(2位)、ニュージーランドのリディア・コー(3位)、豪州のハナ・グリーン(5位)、中国のイン・ルオニン(6位)など、錚々たる顔ぶれが並ぶ。
さらに、女子のランキング全体を見ても、トップ50中31人がアジア・太平洋出身。その厚みと勢いは明らかだ。
もちろん、ランキングの評価基準や算出方法そのものに異論があるのも事実だ。
特に男子のOWGRに関しては、「不完全で、根本的に欠陥がある」との声も多い。
LIVゴルフが依然として評価対象外とされているため、その信頼性には大きな疑問符がついている。
一方、女子のランキングは、世界のトップ選手たちが比較的頻繁にLPGAツアーで直接対決を重ねていることもあり、一定の信頼性が保たれている。
プロアマ問わず、目覚ましいアジア女子の活躍

ランキングの妥当性はさておき、男女を比較したとき、アジア太平洋地域が真の世界レベルの女子プレーヤーを数多く輩出していることは、間違いない。
この傾向はアマチュアの世界にも反映されている。
男子の「世界アマチュアゴルフランキング(以下WAGR)」では、アジア出身の選手でトップ50入りしているのはわずか3人。
タイのピチャクサン・マイチョン(23位)、中国のチャン・シーファン(39位)、そして2024年の「NCAA選手権」で優勝し、シンガポール人として初めて「マスターズ」出場を果たしたヒロシ・タイ(44位)だ。
一方、女子のWAGRでは、トップ7にアジアの選手が3人ランクイン。
マレーシアのミラベル・ティン(3位)、フィリピンのリアン・マリクシ(4位)、韓国のオ・スミン(7位)だ。
トップ50には計11人が名を連ねており、その存在感は圧倒的だ。
そして2025年の第1四半期を終えた時点で、アジアの女子選手の活躍が、今後も長期的に続くとの見方が強い。
アジア太平洋ゴルフ連盟(APGC)会長のタイムール・ハッサン・アミン氏は、各地での個人・団体による華々しい活躍を振り返る。
「私たちは本当に多くの才能ある選手に恵まれている。10代前半の若手から、米国の大学ゴルフ部でプレーしている選手たちまで、皆が卓越した献身の精神と強い意志を持っており、まさに〝成功を目指す力〟に突き動かされている」
その活躍の中心にいたのが、マレーシアのジェニース・ウォン、フィリピンのマリクシ、韓国のオ・スミン、中国のリュウ・ユージエ、そしてタイのエイラ・ガリツキーといった面々だ。
「彼女たちは、このまま順調に成長すれば、間もなくプロの舞台で名を馳せることになるだろう」とアミン氏は太鼓判を押す。
その中でもマリクシは、すでにプロとの対戦を経験している。昨年、「全米女子アマ」と「全米女子ジュニアアマ」の両タイトルを獲得した彼女は、今年1月、男子のアジアンツアー「フィリピンオープン」に出場。
ミッシェル・ウィーに続き、史上2人目の女子選手として男子ツアーに挑戦した。
惜しくも予選通過は逃したが、その果敢な挑戦と健闘は高く評価された。
アジアの2大スター不在で注目を浴びたウォン


ティンとガリツキーは、1月にUAEのアル・ハムラGCで開催された2年に一度の「パッツィ・ハンキンス・トロフィー(PHT)」において、APGC代表チームの主力として際立った活躍を見せた。
この大会は、「ソルハイムカップ」形式で、欧州ゴルフ協会(EGA)選抜とのチーム戦として行なわれている。
二人はWAGR1位のイングランドのロッティ・ウォードを破るという大金星を挙げ、それ以来、アメリカの大学ゴルフで目覚ましい活躍を続けている。
唯一残念な点は、学業の都合で3月初旬にベトナムのホイアナショアーズGCで開催された「第7回アジア太平洋女子アマチュア選手権(以下WAAP)」に参加できなかったことだ。
彼女たちの不在中、注目を集めたのは、マレーシアのジェニース・ウォンだった。
小柄ながらも冷静沈着なプレーで堂々の優勝を果たし、WAAPの頂点に立った。
彼女はこの勝利により、2025年のメジャー3試合(「AIG全英女子オープン」、「アムンディ・エビアン選手権」、「シェブロン選手権」)への出場権を獲得。
さらに、4月の「オーガスタナショナル女子アマ(以下ANWA)」をはじめとする多数のエリート大会にも招待されている。
今年のANWAには、APGC加盟43か国中10か国から16人の選手が出場しており、地域全体の成長を裏付けている。
こうした女子選手たちの目覚ましい活躍を受け、アジア太平洋地域ではゴルフを始める少女たちが急増している。
4月には「ANWA」、「ザ・ロイヤルジュニア」、「ファルド・シリーズ・アジアグランドファイナル」といった大会が行なわれ、5月中旬には宮崎・フェニックス・シーガイア・リゾート内のトム・ワトソンコースにて「第45回アジア太平洋女子ゴルフチーム選手権・クイーンシリキットカップ(以下QSC)」が開催される。
このQSCは、カリー・ウェブ、ハナ・グリーン、ミンジー・リー、フォン・シャンシャン、ヤニ・ツェン・宮里藍と笹生優花、朴セリ、申ジエ、キム・ヒョージュ、タイのティティクルとパティ・タバタナキット、リディア・コーといった世界の名選手を数多く輩出してきた登竜門である。
今年の宮崎大会からも、きっと未来のスターたちが続々と現れるに違いない。
Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)
ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。
アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。