
2013年「マスターズ」で悲願のメジャー優勝を果たした豪州のアダム・スコット。
12年経った今年、メジャー2勝目を挙げる最大のチャンスが巡ってきた。
しかし、最終日はそれまでの3日間のプレーとは大きく異なり、9つスコアを落として脱落。
一体何が起きたのだろうか?



「マスターズ」チャンピオンのアダム・スコットが、メジャー2勝目をかけて「全米オープン」の最終日、最終組で戦った。
会場はメジャー開催コースの中でも最難関の一つ、オークモントCC 。
ただでさえコースセッティングが難しい上に、スコットによれば「今週で一番の強風」と、中断を余儀なくされるほどの豪雨という悪条件が重なり、さらに過酷なコンディションに。
深くてからみつくような粘りの強いラフは、水分を含んでより一層難易度が増し、ショットメーカーのスコットをしても、1バーディ、8ボギー、1ダブルボギーの79(パー70)と苦戦を強いられた。
「今週はずっとフェアウェイキープできていたのに、今日は外してしまい、その度に大きな代償を支払った。リカバリーもできなかったよ。とにかく厳しいコンディションだったね。最初から風が強くて、今週で一番の強風だった」
ちょうど「全米オープン」史上最長のパー3、8番ホール(301ヤード)のティーグラウンドに立った時だった。
豪雨のため、96分の中断が入り、選手たちはいったんクラブハウスに戻って再開を待ったが、この中断がスコットに悪影響を及ぼした。
「雨の中断前の方が、いい感触だった。再開後、ティーショットが全て右に出てしまって、ほとんどリカバリー不能だった」
「序盤はコンディションが厳しかったけど、自分としてはいい感触だったし、コントロールできている感じがあった。ただ6番ですごく弱いパットを打ってしまい、“ああ、これは1つ逃したな。もっと気持ちを引き締めないと”、と思ったんだ。でもその後は、とにかくプレーが雑になってしまった。サム(バーンズ)と2人、かなりひどいプレーをしているように見えたと思うけど、こういう試合では少しでも調子を崩すと、大きな代償を払わされるものだ」
再開直後の8番ホールではボギーを叩き、バック9に入ってもスコアを落とす一方だった(ハーフ41)。
スタート時点は3アンダーだったスコアが、終わってみれば6オーバー。
12位タイと大幅に順位を下げた。
44歳(当時)のスコットがもし優勝していれば、1990年にヘイル・アーウィンが45歳0ヶ月15日で達成した最年長優勝記録に次ぐ記録となるはずだった。
そして、豪州勢ではデビッド・グラハム(1981年)、ジェフ・オギルビー(2006年)に次いで、3人目の「全米オープン」チャンピオンになっていたはずだった。
「こういうポジションで戦えているのは、5~6年ぶり。今は調子がいいから、前向きでいられる。無理せずに堅実なプレーができているよ」
3日目を終えてそう語っていたスコットだが、メジャーの優勝争いの重圧や、過酷な条件下でのプレーで、前日までのようなプレーができなかったようだ。
メジャー96試合連続出場という、ジャック・ニクラスの記録(146試合連続出場)に続く、歴代2位の記録を持っているが、メジャー優勝回数はニクラスの記録(18勝)には遠く及ばない。
44歳の彼に、メジャーでの優勝争いのチャンスが今後どのくらい訪れるかは不明だが、いまだに健在の長打力とショット力を武器に、メジャー2勝目に挑み続けてほしい。
Text & Photo/Eiko Oizumi