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【世界のゴルフ通信】From Asia 開催の場を世界に広げる新登竜門インターナショナルシリーズの成長と開催国の発展

今年、日本で初開催した「インターナショナルシリーズ・ジャパン」で優勝したルーカス・ハーバート。©Asian Tour
「インターナショナルシリーズ」は、今やアジアの領域を超えてイングランドでも開催。写真は昨年のイングランド大会で優勝したピーター・ユーライン。©Asian Tour

アジアンツアーの昇格試合の誕生とこれまで

「インターナショナルシリーズ」は、「ゴルフ界で最も価値ある登竜門」と自らを称することを躊躇しない。
その評価が誇張でないと目される時が、ついにやってきた。

アジアンツアー公認の10試合で構成される昇格イベント群である「インターナショナルシリーズ」は、世界中のゴルファーに対して、LIVゴルフという高額賞金を誇る舞台への道を開くとともに、賞金総額の増加、そして世界クラスかつ魅力的な地でのエリート選手たちとの競争の機会を提供している。
「インターナショナルシリーズ」は、LIVゴルフとアジアンツアーによる戦略的パートナーシップと、3億ドル(約435億円)という歴史的な投資により設立された。

当時のLIVゴルフCEO、グレッグ・ノーマンが「眠れる巨人」と表現したアジアンツアーにとって、この支援は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより将来が不安視されていた時期にあって、まさに起死回生の一手だった。
最低でも1試合200万ドル(約2億9000万円)の賞金総額を誇るこれら10試合の追加により、アジアンツアーは強化され、ツアーメンバーは、世界各地でのプレーの機会を得たのだ。
現在、シリーズは4シーズン目の折り返しを迎えようとしており、地元出身の予選通過者やトップアマチュア、メジャー優勝者や「ライダーカップ」のレジェンドまで、幅広い才能が参加できる枠組みを提供するという、当初の約束を着実に実現している。

アジアにとどまらない世界への拡大と欧州ツアーによる侵略

また、アジアンツアーは地理的な範囲を広げるという公約も着実に果たしている。

伝統的なアジアのゴルフ強国であるシンガポール、インドネシア、香港、中国、タイ、韓国での開催に加え、北アフリカ、中東、そしてイギリスにまで開催地を拡大。
特にイングランドおよびスコットランド(セントアンドリュース)での開催は、特別な意味を持つものとなったはずだ。

長年、DPワールドツアー(旧ヨーロピアンツアー)は、元アジアンツアー・コミッショナーの言葉を借りれば、アジアに「侵略」してきた。
アジアで大会を開催し、暗黙の了解とされていた地理的な境界線を無視してきたのだ。
1999年に始まった共同主管契約では、当初こそ善意と敬意、そして相互利益への期待があった。
アジアンツアーの選手にもプレー機会が提供されていた。

しかし、商業的な理由を中心に状況は一変。
信頼関係は崩れ、敵対関係にまで進展した。アジアンツアーへの配慮はほとんどなく、DPワールドツアーはアジアをなぎ倒すように進出を続け、今でもシーズン序盤には「アジアスイング」と称して、シンガポール、インド、中国で大会を開催している。

一方、アジアンツアーには「インターナショナルシリーズ」が登場するまで、対抗手段がなかった。
アジアンツアー関係者は「報復」とは表現しないだろうが、自分たちの大会をヨーロッパで開催するという行為には、ある種の満足感を覚えたに違いない。

「インターナショナルシリーズ」の地元への高い貢献度

今年、インドでも初めて開催された。左から、アジアンツアーCEOのチョ・ミンタン氏、優勝したオリー・シュナイダージャンズ、インターナショナルシリーズ責任者のラフル・シン氏。©Asian Tour
今年の10月に初開催される「インターナショナルシリーズ・カンボジア」は、プノンペンのチュンオン・ゴルフリゾートが舞台となる。©Asian Tour

そして、それ以上に重要なのは、賞金額の魅力だけでなく、「インターナショナルシリーズ」は開催地の地域社会やチャリティに対する貢献度という面でも、他のグローバルツアーがアジアでの活動で示してきた姿勢とは一線を画していることだ。

2025年5月末時点で、「インターナショナルシリーズ」は39か月間で30試合を開催。
その舞台は17の国または地域に及んでいる。
開催数最多は、タイの4試合。次いでイングランドとインドネシアが3試合ずつ。
香港、マカオ、モロッコ、オマーン、カタール、シンガポールではそれぞれ2回開催されており、中国、エジプト、インド、日本、韓国、サウジアラビア、スコットランド、ベトナムでは各1回の開催がある。

今年に入ってからも、インドと日本で初めて「インターナショナルシリーズ」が開催され、新たな歴史を刻んでいる。
2025年の残り7試合のうち、カンボジアとフィリピンでも初開催が予定されている。

カンボジア・プノンペンのチュンオン・ゴルフリゾートでは10月9日~12日に「インターナショナルシリーズ・カンボジア」が開催され、2週間後にはマニラのスタ・エレナ・ゴルフクラブで「インターナショナルシリーズ・フィリピン」が行なわれる。
同シリーズ責任者のラフル・シン氏と、アジアンツアーのコミッショナー兼CEOであるチョ・ミンタン氏は、いずれも期待を寄せている。

「カンボジアとは長年にわたり多方面で強固な関係を築いており、フィリピンも、我々がこの地域での価値を高め続けるうえで極めて重要な市場だ」とチョ氏は語る。

注目すべきは、両大会とも現地の企業が大会を支援している点だ。
カンボジア大会は「ロイヤルグループ」の協賛、フィリピン大会は「ビンゴプラス」がプレゼンティング・スポンサーを務める。

「第7期政権のもと、フン・マネット首相の指導により、こうしたスポーツ観光イベントが全面的に支援・歓迎されているが、『インターナショナルシリーズ』をカンボジアで開催することで、我々の美しい国を世界に向けて発信すると同時に、若者や地域社会がスポーツに触れるきっかけを創出できる。この大会は、観光業やホスピタリティ業界にとって起爆剤となり、我が国の文化やおもてなし、そして素晴らしいゴルフコースと施設の水準を世界に示す機会になるだろう」(ロイヤルグループのキット・メン会長)

同様に、フィリピンの大手デジタルエンタメ企業「ビンゴプラス」の広報担当者は、「LIVゴルフやアジアンツアーのスター選手たちが参戦する『インターナショナルシリーズ』との提携により、国内市場の重要な観客層にアクセスできるようになる。
また、スポーツおよびエンターテイメント界の有力ブランドと提携し、成長と共に新たな市場での認知度向上を目指すというビジョンにも合致している」と語った。

このような言葉は、チョー氏とシン氏にとってまさに朗報だ。

Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)

ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。

アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。

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