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【世界のゴルフ通信】From USA PGAツアーに新時代到来!NFLの元幹部がPGAツアー入り LIVゴルフとの関係改善はあるのか?

今年の「トラベラーズ選手権」開催週に新CEOを発表。左からプレーヤーディレクターのアダム・スコット、PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏、新CEOのブライアン・ローラップ氏、プレーヤーディレクターのタイガー・ウッズ、 マイケル・コーバット氏、取締役のアーサー・M・ブランク氏、ジョー・ゴーダー氏。©GettyImages
PGAツアーのCEOに任命された、ブライアン・ローラップ氏。©GettyImages

PGAツアーCEOにローラップ氏就任

ブライアン・ローラップ氏が、7月下旬、PGAツアーエンタープライズの初代CEOに正式に就任。
PGAツアーの新時代を切り開いていく。
元NFL幹部のローラップ氏は、6月中旬に新役職に就任することが発表され、「トラベラーズ選手権」でメディア対応を行なった。
PGAツアーが従来の運営方法とは大きく異なる方向に進もうとしているのは、もはや明白だ。

また過去2年間、その言動がさまざまな議論を呼んだジェイ・モナハン氏は契約満了となる2026年をもってコミッショナーを退任することになった。

モナハン氏退任後もコミッショナー職が存続するのか、それとも形を変えるのかは未定だが、20年以上にわたりNFLで上級幹部を務めたローラップ氏が実権を握ることになるのは間違いない。
PGAツアーポリシーボードおよびエンタープライズボードのメンバーで、14年間、ツアーで戦ったジョー・オギルビーはこう語る。

「非営利団体(501c−6)から営利企業を兼ねる形に進化するのは自然な流れだ。SSG(ストラテジック・スポーツ・グループ)からの資本投下、そして将来的にさらなる資金調達がある以上、求められるスキルセットは異なるし、チーム構成も変わってくる」

「これまではスポンサーや大会主導の色が濃かった。今でもその要素はあるが、SSGから15億ドルの投資を受けたことで、発想自体が大きく変わる」

NFLは巨大な組織で、卓越した基準を持っている。
ローラップ氏は、その世界最高のリーグで学び、20年間の経験を積んだ。
そのこと自体がPGAツアーにとって大きな財産になる。
モナハン氏は今後15か月間、移行期間のサポート役を担う予定だ。

1968年に設立されたPGAツアー史上、ゴルフ界以外からトップに立つ人物が現れるのは今回が初めて。
昨年発足した営利部門「PGAツアー・エンタープライズ」と、SSGからの15億ドルの出資により、新たな幹部の登用は当初から計画されていた。
6か月にわたる選考プロセスでは、モナハン氏自身もサーチ委員会の一員として関わり、両理事会にも所属していた。
2年前にはタイガー・ウッズが理事会メンバーとなり、選手代表は6名に。
オギルビーもビジネス側との橋渡し役として加わっている。

バレロ社の重役、ジョー・ゴーダー氏が、両理事会の議長を務めており、非営利法人PGAツアー社の理事は、ウッズ、パトリック・キャントレー、ウェブ・シンプソン、ピーター・マルナティ、アダム・スコット、カミロ・ビジェイガスら選手と、ビジネス幹部で構成されている。
一方、営利法人PGAツアー・エンタープライズの理事は選手に加え、SSGの幹部も参加しており、アトランタ・ファルコンズのオーナーであるアーサー・ブランク氏もローラップ氏の選考に関与した。

PGAツアーとLIVゴルフの関係は改善されるのか?

ローラップ氏とLIVゴルフの新CEOのスコット・オニール氏との関係が、男子ゴルフ界の分裂状況にどう影響するのかにも注目が集まっている。

LIV側は、新たな視点を持つローラップ氏との関係性に前向きだろう。
彼はこれまでの対立の歴史を知らず、オニール氏も就任8か月目とまだ新しい最高経営責任者である。
今後は対立よりも協調の可能性もあり、LIVの選手たちがPGAツアーに復帰する道を探るのもローラップ氏の任務のひとつになるだろう。

PGAツアー、DPワールドツアー、そしてLIVを支援するサウジアラビアの政府系ファンド(PIF)との間で模索されてきた合意について、実現は遠い。
オギルビーは年初に比べて交渉は大きく後退していると認めた。
ローラップ氏は次のように語る。

「フットボールの世界でうまくいったことが、ゴルフでも通用するとは限らない。特にLIVとの関係においては、複雑な状況であり、もっと理解を深めてから語るべきだと思う。ただし私の焦点は、ツアーを成長させ、改善し、強固な立場からさらに前進させることにある。タイガーの影響力は、非常に大きい。彼は努力家で、頭も良く、献身的だ。他のプレーヤー代表や理事たちも真剣に取り組んでいて、その姿勢には感銘を受けた」

オギルビーは、ローラップ氏について、次のように述べている。

「ゴルフ業界外から来た人物には、アドバンテージがある。新たな視点で『このリーグはどうなっているのか? 強みは? 弱点は?』と見直すことができる。我々の選手たちの多くはツアーが関与しないイベントに出場し、我々のテレビパッケージにも含まれていない露出の恩恵を受けている。だが、それは従来のビジネスモデルとは違う」

PGAツアーが4大メジャーを所有しておらず、「ライダーカップ」でも放映権収入の20%しか得ていない現状は、以前から課題となっていた。
この構造からもっと恩恵を得るべきではないか? と。

「伝統だからといって、それが本当にビジネスとして理にかなっているのか? と彼は考えるかもしれない。彼はゴルフの伝統を尊重するが、それに縛られるべきではないと思っている」(オギルビー)

収益性の名のもとに、今後さらなる改革が進むのは間違いない。
すでにPGAツアーでは、各大会が賞金総額に対して50万ドル以上の負担と収益の一定割合の拠出を求められる制度が導入されている。

また、他でも取り組むべき課題は山積。「ツアー選手権」は大幅な見直しが予定され、来年以降のフォーマット変更が見込まれている。
フェデックスカップ資金の再配分、シグネチャーイベントの位置づけ、DPワールドツアーとの提携関係なども議論の的。
課題は多いが、新しいビジョンと共に動き出している。

Text/Bob Harig

ボブ・ハリグ(アメリカ)

Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

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