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【世界のゴルフ通信】From Latin 34年ぶりに「ライダーカップ」がスペインに帰ってくる!

2031年に「ライダーカップ」を開催する、スペインのカミラルリゾート・スタジアムコース。©GettyImages
1997年、スペインのバルデラマGCで開催された「ライダーカップ」で、欧州チームのキャプテンを務めたセベ・バレステロス。チームを勝利に導いた。©GettyImages
2031年「ライダーカップ」が開催されるコスタ・ブラバは、風光明媚なリゾート地。バルセロナから、車で約2時間、ジローナ・コスタ・ブラバ空港から約40分の場所にある。©GettyImages

バルセロナ近郊のカミラルリゾートが舞台

ゴルフ界で最も名誉ある団体戦、すなわち12人の欧州選抜と12人の米国選抜が戦う「ライダーカップ」が、マドリッドやバスク地方の招致が実らなかった幾多の挑戦を経て、ついにスペインに戻ってくる。
2031年、コスタ・ブラバ地域にあるカミラルリゾート・スタジアムコースで開催されることが決定したのだ。
スペインでの「ライダーカップ」開催は、セベ・バレステロスが欧州チームを率いてバルデラマで勝利して以来、34年ぶりのこと。
大陸ヨーロッパ諸国で「ライダーカップ」開催が2度目となるのはスペインが初めて。
2031年大会の開催地であるカミラルリゾートは、ニューヨークのベスページ・ブラック(2025年)、アイルランドのアデア・マナー(2027年)、ミネソタ州のヘーゼルティン・ナショナル(2029年)に続き、世界最高峰の団体戦の舞台となる。

待望のニュースだった。
五輪、サッカー「ワールドカップ」に次ぐ、世界第3のスポーツイベントである「ライダーカップ」が、34年の時を経てスペインに戻ってくることにゴルフ関係者は大いに沸いた。
コスタ・ブラバとバルセロナは、1992年「バルセロナ五輪」、「F1スペイングランプリ」、「カタルンGP」、そしてFCバルセロナの本拠地カンプ・ノウでの「チャンピオンズリーグ」や「ラ・リーガ」の定期開催など、国際的なスポーツイベントの実績を数多く持つ。
今回の開催契約の一環として、1876年創業のバルセロナの醸造会社、エストレージャ  ・ダムが、2031年「ライダーカップ」のオフィシャルビールとなる。
また、同社は2026年から5年間にわたって開催されるDPワールドツアー「エストレージャ  ・ダム・カタルーニャ選手権」のメインスポンサーとなり、うち2028年、2029年、2030年の大会はカミラルリゾートで行なわれる予定だ。

1997年、英国以外で初めて開催された「ライダーカップ」

スペインでの「ライダーカップ」といえば、初の英国以外での開催となった1997年大会。
セベ・バレステロスが欧州チームを率いてソトグランデのバルデラマGCで優勝トロフィーを保持した。
また2012年には、前年に亡くなったセベの魂とともに、ホセ・マリア・オラサバルがキャプテンとして米国シカゴ郊外のメダイナCCで劇的な逆転勝利を演出し、〝メダイナの奇跡〟として今なお語り継がれている。
スペインゴルフ界全体、そしてスペインゴルフ連盟は、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、ローマ、そしてもちろんイングランドでの開催が続く中、スペインでの再びの「ライダーカップ」開催を長年求めてきた。
確かに多額の投資を要する大会ではあるが、カタルーニャ自治州政府は、カミラル・ゴルフ&ウェルネス内のPGAカルデス・デ・マラベリャ(ジローナ)の施設整備に向けて、1億2000万ユーロの予算を確保している。

当初の、新たな3つ目のコース建設を伴う計画は、自治体や環境団体の反発により幾度も中断されたが、現在は既存の2コースの施設改修という形で再始動しているようだ。

「ライダーカップ」がもたらす経済効果は大きい。
2023年のローマ大会では、経済波及効果は約2億6200万ユーロで、2018年のパリ大会に比べて11%増加。
2021年に米国で開催された大会では、収益総額は3億3500万ドルに達し、そのうち2900万ドルが直接収入だったと言われている。
こうした中、スペイン政府、カタルーニャ自治州政府、ジローナ県議会、バルセロナ観光局などの公的機関と、メインスポンサーであるエストレージャ・ダムをはじめとする民間投資家との間で、期限ぎりぎりの交渉の末、2031年に同大会をスペインに招致することで合意に至った。

「ライダーカップ」にスペイン人選手は不可欠な存在

LIVゴルフを主戦場とするジョン・ラーム。今年出場すれば、4回目。©GettyImages

ライダーカップにおけるスペイン勢の活躍

1979年以降、スペイン人選手は「ライダーカップ」欧州チームで数々の成功を収めてきた。
セルヒオ・ガルシアは10回の出場で、両チーム合わせて最多の28.5ポイントを記録している。
また、バレステロスとオラサバルのペアは大会史上最強コンビとして知られ、2人で12ポイントを獲得した。
バレステロスは1997年大会でキャプテンとして欧州チームを勝利に導き、オラサバルも2012年の〝メダイナの奇跡〟でキャプテンとして輝かしい勝利を収めている。

1979年大会(米国・グリーンブライヤー)では、バレステロスとアントニオ・ガリードが欧州大陸初の代表選手として出場。
その後、ホセ・マリア・カニザレス、マヌエル・ピニェロ、ホセ・リベロらが続いた。
18年後のバルデラマ大会では、オラサバルやアントニオの息子のイグナシオがバレステロス率いる勝利チームの一員となり、副キャプテンにはミゲル・アンヘル・ヒメネス(自身も4大会出場)が加わった。

その後、ラファ・カブレラ・ベロが2016年大会に出場し、ジョン・ラームは直近3大会全て(2018年パリ、2021年米国、2023年ローマ)に出場している。
両選手とも、それぞれ2016年と2021年にガルシアと強力なペアを組み、チームの勝利に貢献した。

1979年に欧州大陸の選手が参戦して以来、スペイン人選手が一人もいなかった欧州チームは存在しない。

Text/Isabel Trillo Amores

イサベル・トリロ・アモーレス(スペイン)

PGA・オブ・スペインのコミュニケーションディレクター。80年代後半からゴルフ取材を始め、その数は世界250試合以上。ゴルフのラジオ番組も手がける。

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