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【ライダーカップ】2年に一度の世界最大のゴルフの祭典!世界一騒がしく、手厳しい欧米激闘物語 in NEW YORK

【ライダーカップ】2025年9月26日~28日ベスページ・ブラックコース(米国)7352ヤード・パー70

©Eiko Oizumi

メジャー以上に、異様な盛り上がりを見せる、欧州と米国の2年に一度の対決「ライダーカップ」。
国の威信をかけて戦う男のプライドと、意地のぶつかり合いに世界のゴルフファンが一喜一憂するイベントだ。
今年は、どこの観客よりも騒がしく、手厳しいヤジが飛ぶことで知られるニューヨークで開催。
熱き男たちの激闘を振り返る。

トランプ大統領もやってきた!

初日に、エアフォースワンでワシントンD.C.からやってきた、ドナルド・トランプ大統領。©PGA of America

セレブ妻&ガールフレンドも集結!

↑米国チームの妻&ガールフレンドたち。左から2番目のニッキ・キャントレー夫人が持っているのは、第一子を出産したばかりで自宅での応援となった、マヤ・シャウフェレ夫人の顔写真。©PGA of America
ニューヨークのシンボル「自由の女神」。
マンハッタンの摩天楼。エンパイアステートビル、ワン・ワールドトレードセンターも見える。
夜のニューヨークの、タイムズスクエアの光景。

最難関と言われていた、ニューヨークでの奇跡!
キャプテン ルーク・ドナルド、ホーム&アウェイで欧州チーム2連続優勝へ

アウェイで欧州チーム、5度目の勝利!

今年の「ライダーカップ」で優勝した欧州チームメンバー。後列左から時計回りに、シェーン・ローリー、ラスムス・ホイガード、ジャスティン・ローズ、ルーク・ドナルド(キャプテン)、ジョン・ラーム、セップ・ストラーカ、ルドビグ・オーバーグ、ローリー・マキロイ、ビクトル・ホブラン、マシュー・フィッツパトリック、ティレル・ハットン、ロバート・マッキンタイヤー、トミー・フリートウッド。©PGA of America

2023年「ローマ大会」では、ホームで優勝を遂げた欧州チーム。
米国開催、特に今年のニューヨークはヤジも飛び交い、厳しい洗礼を受ける土地柄、アウェイで優勝するのは、奇跡とさえ言われていた。
そんな中、ルーク・ドナルド主将は、冷静にチームを優勝へと導いた。
その戦いぶりを振り返る。

表彰式後、大勢の欧州系ギャラリーの中に飛び込み、共に優勝を祝ったローリー・マキロイ(右)と、マシュー・フィッツパトリック(中央)。©PGA of America
シングルス戦8マッチ目の、シェーン・ローリー対ラッセル・ヘンリーの対戦が、引き分けに終わったことで、欧州チームの敗戦はなくなり、10マッチ目のティレル・ハットンが欧州チームの優勝を決めた。©Eiko Oizumi
米国・ニューヨークでの開催だったが、最終日の18番グリーン周りのスタンドには、まるで欧州開催ように大勢の欧州系ギャラリーが集結。アウェイで、ホームのような応援を受けたことも勝因だ、と欧州チームメンバーは語った。©Eiko Oizumi

欧州チームの快挙と米国ファンのヤジ

選手たちのガッツと観客の熱い応援は、メジャー以上という、2年に一度行なわれる世界最大のゴルフの祭典「ライダーカップ」。
今年は米国・ニューヨークで開催され、欧州チームがアウェイで米国チームに2ポイント差で優勝した。
欧州チームが米国で勝利したのは、1987年、1995年、2004年、2012年以来、5回目のこと。
また、前回のローマ大会以来、欧州チームのキャプテンは、ルーク・ドナルドが2大会連続で務めているが、欧州チームのキャプテンで2連覇を果たしたのは、1985年、1987年に優勝したトニー・ジャクリン以来、2人目。
なお、2連覇を達成しているキャプテンは、この欧州の2人の他、米国のウォルター・へーゲン(1935年、1937年)とベン・ホーガン(1947年、1949年)の2人しかいない。

今年のニューヨーク開催の「ライダーカップ」で欧州チームが優勝するのは、奇跡に近いと言われていた。
開催地のベスページ・ブラックコースで過去行なわれた「全米オープン」や「全米プロ」での状況から想像がつくのだが、とにかく観客の飛ばすヤジは手厳しく(家族のことを悪く言うなどの、悪質なものもある)、メンタル面でやられてしまう恐れもあった。
愛国心むき出しの観客、ビールを朝から飲み続け、酔った勢いで浴びせる罵声、さらに大会の公式MCまでもがヨーロッパ勢を標的にした。

だが、ドナルドはそんな状況も想定して今年の1月、「ライダーカップ」の準備として開催された「チームカップ」で、ニューヨークで受けるであろうヤジや、喧噪に対応できるよう、VRを配布するなど入念に準備を進めた。
その甲斐あってか、選手たちは会場で何を言われても毅然とした態度でプレーし、集中力を欠かないよう、目の前のポイント獲得に注力したのだった。
ただ、マキロイに対して、米国贔屓のファンたちはFワードを連発。
昨年の「全米オープン」で、勝利目前にして3パットした失敗まで蒸し返された。
さらにエリカ夫人には、ビールの入った缶のような物が投げつけられる騒ぎもあり、シェーン・ローリーは「驚くほどひどい」と米国ファンを酷評。
マキロイは多くのヤジを無視したが、時には睨み返し、黙れ!と叫んだ。
そして最終日にはついに、観客を退場させる事態にまで発展したのである。

マキロイは勝利後の記者会見で、以下のように語っている。

「ゴルフはもっと高い基準を持つべき。ゴルフは人々を結びつけ、礼儀やルール、リスペクトを教えてくれるスポーツだが、今週の一部にはそれが見られなかった。アイルランド開催の2027年では、こうした振る舞いは受け入れられないと、必ず伝えるつもりだ。米国のファンも、自国の選手をもっと応援すべき。今日(最終日)は、スコッティ(シェフラー)への声援は少なく、僕への罵声ばかりが聞こえていた。僕らは罵声をパフォーマンスで黙らせるしかなかった」

シングルス戦で、史上最多の8.5ポイントを挙げた米国の奮闘も虚しく、欧州チームが2ポイント差で勝利した

最終日は、ティレル・ハットン(上)がコリン・モリカワと対戦し、引き分けにしたことで、14.5ポイントに到達し、優勝した。シェーン・ローリーと歓喜するハットン。©PGA of America
米国チームのキャプテン、キーガン・ブラッドリーをしてその巧みな采配から「史上最高のライダーカップキャプテンだ」と言わしめたルーク・ドナルド。©PGA of America
ローリー・マキロイに、シャンパンを吹きかけるシェーン・ローリー(右)。©PGA of America

4セッションを終えてあと3ポイントで優勝

3日間開催の「ライダーカップ」は、フォーボール方式(同チームの2人が、それぞれのボールを打ち、いい方のスコアを採用)のセッションが2回、フォーサム方式(同チームの2人が、1つのボールを交互に打つ)のセッションが2回と、最終日のシングルス戦の全28マッチで構成されている。
全セッション28ポイント中、14.5ポイントを獲得すれば優勝が決まるが、欧州チームはシングルス戦を前に、4セッションで常にリードし、あと3ポイント獲得すれば優勝、という展開となった。
今回もまた、キャプテンのルーク・ドナルドと、副キャプテンでデータ分析担当のエドアルド・モリナリの采配が、非常にうまく機能し、成功していたのだ。

だが、最終日はまさかの展開が待っていた。
12マッチ中、せいぜい5~6マッチで欧州の勝利が決まるのでは、という予想を覆し、米国の大反撃が始まったのだ。

序盤は、欧州のリードが目立ち、「これは欧州にとってイージーな展開だ」と誰もが思った。
だが、後半に入ると世界のトップランカー揃いの米国が息を吹き返し、1組目のキャメロン・ヤングから、2組目のジャスティン・トーマス、3組目のブライソン・デシャンボー、4組目のスコッティ・シェフラーまで、最終ホールまでもつれ込み、引き分け、あるいは逆転勝利を決めたのだ。
この日、欧州チームの勝者が12試合中、ルドビグ・オーバーグただ一人だったことは、予想外の展開だった(シングルスが12試合制になってからは最低記録)。
それでも、2日目までの大きな貯金がものをいい、8組目のシェーン・ローリーが引き分けて、「ライダーカップ」を保持する0.5ポイントを獲得した時点で、欧州の負けはなくなった。
そして10組目のティレル・ハットンが引き分けたことで、2ポイント差で2連勝を達成した。
米国の逆転を阻止したシェーン・ローリーは、涙を流しながらホールアウト直後に語った。

「正直言って、最後の数時間は人生で一番辛いものだった。18番を歩きながらダレン(キャディ)に『ここで、人生で最も最高なことをやるチャンスがある』と言ったんだ。『ライダーカップ』は僕の全て。アイルランドで『全英オープン』に勝った以上のものなんだ」

予想通り、観客からの暴言やひどいヤジはあったものの、チームの歴史と伝統を意識しながら、賞金ではなく、プライドをかけて戦い勝利した欧州。
一方、今回から全米ゴルフ協会は米国人選手に50万ドルを支給(30万ドルを事前寄付用に、20万ドルは自由使用できる手当)。
主に慈善事業に使用される金とはいえ、純粋に国の威信と男のプライドのために戦うわけではなくなった米国チームと、「金をもらう週じゃない」という欧州チームとは対照的だった。

2025 ライダーカップ全成績

ヨーロッパ 15-13 アメリカ

●1日目  フォーサム

(1チーム2人で、1つのボールを交互にプレー)

欧州3勝:米国1勝

J・ラーム&T・ハットン 4&3 B・デシャンボー&J・トーマス
L・オーバーグ&M・フィッツパトリック 5&3 S・シェフラー&R・ヘンリー
R・マキロイ&T・フリートウッド 5&4 C・モリカワ&H・イングリッシュ
R・マッキンタイヤー&V・ホブラン 2&1 X・シャウフェレ&P・キャントレー

●1日目  フォーボール

(1チーム2人で、それぞれ自分のボールでプレーし、いい方のスコアを採用)

欧州2勝:米国1勝1引き分け

J・ラーム&S・ストラーカ 3&2 S・シェフラー&J・スポーン
T・フリートウッド&J・ローズ 1UP B・グリフィン&B・デシャンボー
L・オーバーグ&R・ホイガード 6&5 C・ヤング&J・トーマス
R・マキロイ&S・ローリー 引き分け S・バーンズ&P・キャントレー

●2日目  フォーサム

欧州3勝:米国1勝

M・フィッツパトリック&L・オーバーグ 4&2 B・デシャンボー&C・ヤング
R・マキロイ&T・フリートウッド 3&2 H・イングリッシュ&C・モリカワ
J・ラーム&T・ハットン 3&2 X・シャウフェレ&P・キャントレー
R・マッキンタイヤー&V・ホブラン 1UP R・ヘンリー&S・シェフラー

●2日目  フォーボール

欧州3勝:米国1勝

R・マキロイ&S・ローリー 2UP J・トーマス&C・ヤング
T・フリートウッド&J・ローズ 3&2 S・シェフラー&B・デシャンボー
J・ラーム&S・ストラーカ 1UP J・スポーン&X・シャウフェレ
T・ハットン&M・フィッツパトリック 1UP S・バーンズ&P・キャントレー

●最終日シングルス

欧州1勝:米国6勝5引き分け

J・ローズ 1UP C・ヤング
T・フリートウッド 1UP J・トーマス
M・フィッツパトリック 引き分け B・デシャンボー
R・マキロイ 1UP S・シェフラー
L・オーバーグ 2&1 P・キャントレー
J・ラーム 4&3 X・シャウフェレ
S・ストラーカ 2&1 J・スポーン
S・ローリー 引き分け R・ヘンリー
R・ホイガード 1UP B・グリフィン
T・ハットン  引き分け C・モリカワ
R・マッキンタイヤー 引き分け S・バーンズ
V・ホブラン 引き分け H・イングリッシュ

◉なんでもデータ

❶平均年齢米国31.99歳/欧州32.50歳
❷世界ランキング平均(カッコ内はトップの選手)
米国11.2位(1位スコッティ・シェフラー)/欧州23.7位(2位ローリー・マキロイ)
❸ルーキー数米国4人 : 欧州1人
❹米国は3回連続で40代の選手なし。
❺スコッティ・シェフラーが、「ライダーカップ」に初出場したのは、4年前の2021年大会。
その当時、ツアー未勝利だったが、現在は19勝(メジャー4勝)。
6欧州チームが、米国で優勝したのは5回目。
ルーク・ドナルドは、欧州チームで2大会連続で優勝した2人目のキャプテン。

◉ライダーカップヒストリー

米国27勝 : 欧州16勝

1927年 米国9.5 : 英国2.5 ウースターCC(米)
1929年 米国5 : 英国7 ムーアタウンGC(英)
1931年 米国9 : 英国3 サイオトCC(米)
1933年 米国5.5 : 英国6.5 サウスポート&アインズデールGC(英)
1935年 米国9 : 英国3 リッジウッドCC(米)
1937年 米国8 : 英国4 サウスポート&アインズデールGC(英)
1947年 米国11 : 英国1 ポートランドGC(米)
1949年 米国7 : 英国5 ガントンGC(英)
1951年 米国9.5 : 英国2.5 パインハーストリゾート(米)
1953年 米国6.5 : 英国5.5 ウェントワースGC(英)
1955年 米国8 : 英国4 サンダーバードランチ&CC(米)
1957年 米国4.5 : 英国7.5 リンドリックGC(英)
1959年 米国8.5 : 英国3.5 エルドラドCC(米)
1961年 米国14.5 : 英国9.5 ロイヤルリザム&セントアンズ(英)
1963年 米国23 : 英国9 イーストレイクGC(米)
1965年 米国19.5 : 英国12.5 ロイヤルバークデールGC(英)
1967年 米国23.5 : 英国8.5 チャンピオンズGC(米)
1969年 米国16 : 英国16 ロイヤルバークデールGC(英)
1971年 米国18.5 : 英国13.5 オールドワーソンCC(米)
1973年 米国19 : 英国アイルランド連合13 ミュアフィールドGC(英)
1975年 米国21 : 英国アイルランド連合11 ローレルバレーGC(米)
1977年 米国12.5 : 英国アイルランド連合7.5 ロイヤルリザム&セントアンズ(英)
1979年 米国17 : 欧州11 グリーンブライヤー(米)
1981年 米国18.5 : 欧州9.5 ウォルトンヒースGC(英)
1983年 米国14.5 : 欧州13.5 PGAナショナル(米)
1985年 米国11.5 : 欧州16.5 ベルフライ(英)
1987年 米国13 : 欧州15 ミュアフィールドビレッジGC(米)
1989年 米国14 : 欧州14 ベルフライ(英)
1991年 米国14.5 : 欧州13.5 キアワアイランドGR(米)
1993年 米国15 : 欧州13 ベルフライ(英)
1995年 米国13.5 : 欧州14.5 オークヒルCC(米)
1997年 米国13.5 : 欧州14.5 バルデラマGC(スペイン)
1999年 米国14.5 : 欧州13.5 ザ・カントリークラブ(米)
2002年 米国12.5 : 欧州15.5 ベルフライ(英)
2004年 米国9.5 : 欧州18.5 オークランドヒルズCC(米)
2006年 米国9.5 : 欧州18.5 ザ・Kクラブ(アイルランド)
2008年 米国16.5 : 欧州11.5 バルハラGC(米)
2010年 米国13.5 : 欧州14.5 ケルティックマナーリゾート(英)
2012年 米国13.5 : 欧州14.5 メダイナCC(米)
2014年 米国11.5 : 欧州16.5 グレンイーグルスリゾート(英)
2016年 米国17 : 欧州11 ヘーゼルティンナショナルGC(米)
2018年 米国10.5: 欧州17.5 ル・ゴルフナショナル(フランス)
2021年 米国19 : 欧州9 ウィスリングストレーツ(米)
2023年 米国11.5 : 欧州16.5 マルコシモーネG&CC(イタリア)
2025年 米国13 : 欧州15 ベスページ・ブラックコース(米)

Photo/Eiko Oizumi、PGA of America、Getty Images

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